Farah Master
[香港 9日 ロイター] - 中国が17日発表する2023年末の総人口は2年連続の減少となりそうだ。新型コロナウイルス感染流行を徹底的に防ぐ「ゼロコロナ」政策を22年12月に突然撤廃した後にコロナ関連死が急増したことが要因。景気の先行きに明るい展望を抱けないことで出生率の低迷が続いていることも背景にある。
人口減少は労働者と消費者が減ることを意味し、世界第2位の経済大国の成長見通しへの懸念が一段と深まる可能性がある。重い債務を抱える地方政府にとっては、高齢者介護や退職金の負担が増すことになる。
中国の出生率は16年から低下続きだ。人口学者の間では23年の出生数が前年の956万人を下回るとみられている。男女間の不平等や子育て費用が高いことなど長年の懸案がほぼ放置されていることが要因という。
また、出産意欲の低下や若者の失業率が記録的に高いことに加え、公務員とホワイトカラーの多くが直面する賃金減少や、家計の富の3分の1以上が集積する不動産の市況が危機的状況にあることも、人口減少の背景として挙げられている。
少子化の要因について豪メルボルンにあるビクトリア大の政策研究センターのシュージャン・ペン上級研究員は、ゼロコロナ解除によるどんなプラス効果よりも「景気回復のペースが予想を下回っていることと、将来への不透明感が大きく作用している」と述べた。
<信ぴょう性が薄いデータ>
中国が世界保健機関(WHO)に報告したコロナ感染死は計12万1889人。大半が突然のゼロコロナ政策撤廃後の死亡だったとみられる。WHOはコロナ死者数が過少報告されていると批判したが、中国当局は繰り返し否定した。
ただ、火葬場は混雑していた。患者の死亡判断を下した医師はコロナ関連死と分類しないよう圧力を受けていた。こうしたことから、中国当局のデータへの信ぴょう性は一段と薄れた。
米ワシントン州シアトルに本拠を置くフレッド・ハッチンソンがんセンターの推計によると、22年12月から23年1月までの間、30歳以上の中国人の死者数が通常のあらゆる死因から予想される死者数よりも187万人も多かったという。
米ミシガン大学の人口学者ジョウ・ヤン氏は、中国当局が来週発表する人口データは新型コロナの影響の大きさを隠すため人口減少について過少報告し、楽観的な見通しを打ち出すかもしれないと指摘。「中国の場合、人口統計は政治的な意味も持つ」と述べた。
習近平国家主席は23年、女性は「家族の良き伝統の物語」を伝えるべきだとし、「結婚と出産に関する新しい文化を積極的にはぐくむ」必要があると述べた上で、それを国家の発展に結び付けた。地方政府は出産促進のため、減税や産休期間延長、住宅補助金など各種措置を発表した。
<出生数は18世紀以来で最低か>
23年の出生率低下は22年の婚姻率が1979年以来の最低水準だったことも一因だ。シングルマザーの場合、中国では児童扶養手当を受給できないことが大半で、婚姻率が出生率の先行指標とみなされている。
国営メディアによると、コロナ禍で見送られていた婚姻が実現されたことから23年の婚姻数は前年比増加の見込みだが、人口学者らは人口減少と高齢化に対する長期的な懸念を和らげるには不十分と話した。
米ウィスコンシン大マディソン校の人口学者フクシアン・イー氏は出生数を約800万人と予想する。イー氏によると中国の総人口が2億人を下回っていた18世紀半ば以来の最低水準で、以前の「一人っ子政策」の影響と経済的要因が考えられるという。
ビクトリア大のペン上級研究員も出生数は900万人を下回るとみているが、800万人割れも「十分あり得る」と話している。