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コラム【アナリスト夜話】:香港の『ミスディレクション』に警戒(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)

発行済 2019-09-04 09:04
更新済 2019-09-04 09:20
© Reuters.  コラム【アナリスト夜話】:香港の『ミスディレクション』に警戒(マネックス証券チーフ・アナリスト大槻奈那)

少し前のテレビ番組で、私の父親が“マインドリーダー”に、自分のiPadのパスワードを当てられ、ものすごく悔しがっていました。

種明かしは不明ですが、どうやら、裏返した紙に書かれたパスワードを盗み見し、出演者同士で手をつなぐことで、何かを吸い取っていると想像させるというマジックだったようです。

こうした「ミスディレクション」、つまり、人々の注意をそらしたり、思い込みを利用したりする手法はマジックの基本です。

我々の腦は、細部を捨てて重要だと思われることだけを使ってラクに理解しようとします。

なので、例えば動いているものや大きな音がする方に目を奪われ、そこから安易な解釈を導いてしまいます。

11年前の今月、リーマン・ブラザーズが破綻しました。

あの時も、半年前のベア・スターンズの救済がミスディレクションとなり、市場は「リーマンも、最後には政府が何とかするだろう」という安易な推論に支配されてしまいました。

最近、ミスディレクションされていると感じるのは香港情勢です。

今週末も再び空港が占拠されるなど混乱が続いています。

デモの原因について、メディアは「逃亡犯条例改正」と報じます。

しかし、根底には中国との政治問題だけではなく、富の偏在といった金融問題があります。

香港では、40m2弱の部屋でも家賃が月収を上回ってしまうため、「兎小屋」ならぬ「棺の家」などと揶揄される窮屈な場所に寝起きしています。

新学期には落ち着くかとも言われていましたが、日常への絶望による捨て身の抗議は、さらに長期化する可能性も排除できないでしょう。

ネット情報が発達し、ニュース1つ1つの吟味に時間をかけられなくなった結果、我々はミスディレクションされ易くなっている気がします。

現在の複雑怪奇な世界情勢は、執念深く、その金融的な背景まで見なければと、ラクをしようとする自分の脳に日々言い聞かせています。

マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那(出所:9/2配信のマネックス証券「メールマガジン新潮流」より、抜粋)

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