[4日 ロイター] - 米日用品・医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、自社のベビーパウダーががんを引き起こしたとされる訴訟を巡りロイターが先に報じた記事について、法的手段に関する会社の機密文書に基づくものだとして配信差し止めを求める訴えを起こした。
同社は3日遅くにニュージャージー州の破産裁判所に提出した資料の中で「(言論の自由を保証する)憲法修正第1条は故意に法律に違反するためのライセンスではない」と訴えた。同裁判所ではJ&Jの子会社がベビーパウダー訴訟を争うとともに破産保護を申請した。
ロイターは4日、J&Jが昨年、係争中の約3万8000件のベビーパウダー・タルク(滑石)訴訟の責任を新設子会社に移転するために「プロジェクト・プラトン」を秘密裏に立ち上げ、その子会社を破産させる予定だったと報道。そうすることで、J&Jは訴訟に対する財務面のエクスポージャーを抑えることができる可能性があった。
記事の配信後、ロイターは破産判事に対し、J&Jの申し立ては無意味として却下するよう求めた。ロイターが書簡を提出してから1時間も経たないうちに、J&Jは提出資料の中で、この問題に関する即時審理の要求を取り下げるとしつつ、機密文書に関する申し立てが無意味であることに「同意する用意はない」とした。
J&Jは、記事配信後に提出した資料の中で、ロイターとの協議を継続する意向を示した。
トムソン・ロイター傘下のロイターの弁護士は4日、裁判所への提出資料で、J&Jに関する報道の差し止め請求は「法律の下で訴訟当事者が要求できる最も特別な救済措置の一つ」と指摘。「公共の関心事に関する言論の事前抑制」だとした。
J&Jは、破産判事の命令により公開が禁止されている文書をロイターが入手したとしている。ロイターに対し、文書返却と文書から得られた情報の公開を控えるよう要求した。
J&Jの広報担当者は4日の発表文の中で、「これは複雑な問題で、メディアを通じて議論するのではなく、適切な環境の中で双方がそれぞれの主張を発表する場である裁判所によって審理されるべき」とした。
ロイターは機密情報の保有を否定し、裁判資料で1つの文書の機密性は1月に解除されており、2つ目の文書は保有していないとしている。
J&JのLTL部門は、J&Jのタルクを原料に含むベビーパウダーへの発がん性物質アスベストの混入で中皮腫や卵巣がんが引き起こされたとする訴訟を解決するため、10月に破産を申請した。
J&Jは、自社の消費者向けタルク製品は安全であり、アスベストが含まれていないことが確認されたと主張している。
同社はこれまで、LTLを破産させたのはこれらの訴えと個別に争うのではなく、和解するためだとしている。連邦破産法11条によって訴えを解決することは、再建プロセスの正当な活用だとしている。
タルク原告委員会は、タルク訴訟を解決するために破産を利用することをJ&Jに認めるべきではなく、そうすることで原告が法廷に立つ機会を奪うと主張している。