[ダブリン 4日 ロイター] - アイルランドでは法人税収が急増しているが、この半額以上が多国籍企業わずか10社からという構図は、経済が「信じられないほどの脆弱性」を抱えていることの表れだ――。同国財務省チーフエコノミストのジョン・マッカーシー氏が4日、記者団に懸念を表明した。
多国籍企業は近年、法人税率の低いアイルランドに相次いで拠点を設置。その結果、今年前半の同国税収全体に占める法人税収の比率は約25%に達している。財務省によると、全税収の8分の1を「極めて少数の企業」から徴収している形で、多国籍企業に関係する何らかのショックが起きた場合、財政に深刻な影響を及ぼしかねない。
マッカーシー氏は、これほどわずかな企業からの納付分に税収が集中している事例は他国で見たことがないとし、「そうした点をわれわれはまさに懸念している」と語った。
こうした企業は例えばフェイスブックやグーグル、ファイザー。少数の多国籍企業が全体でアイルランド労働者の約9分1を雇用している形で、しかも高い給与を支払うケースが多い。マッカーシー氏によると、こうした所得税も含めれば、少数の企業からの税収集中度はさらに高くなる。こうした企業に税収を過度に依存する状況の方が、企業課税体系の国際的な見直しの影響よりもずっと心配だと強調した。
同国のドナフー財務相もマッカーシー氏が提示した問題について、ずっと前から懸念を共有していると発言。法人税収を恒久的支出の財源に使わないというコロナ禍前の方針に戻ることが、ぜい弱性のリスクを抑制する最善の方法だとの考えを示した。
4日公表の財務省見通しでは今年の財政収支は小幅の黒字とみられている。ただこれは法人税収が異例の高水準という面が大きく、税収がコロナ禍前と同じとすると国内総生産(GDP)比では1.5%の財政赤字が見込まれるという。