[東京 22日 ロイター] - 亀田制作・前日銀調査統計局長は22日、ロイターのインタビューで、2022年度の経済成長率は日銀の予測を下振れする可能性があるとの見方を示した。クレジットカードの利用状況など高頻度データを見る限り、7月以降は消費回復の動きが「止まっているように見える」という。
亀田氏は今年5月に日銀を退職し、SOMPOインスティチュート・プラスのエグゼクティブ・エコノミストに就いた。
<7―9月期、景気回復は小幅か>
日本経済は4─6月期の実質国内総生産(GDP)が1次速報で前期比年率2.2%増となるなど、新型コロナウイルス禍から順調に回復してきたが、亀田氏は7─8月の人出やクレジットカードの利用状況といった高頻度データの動きを踏まえ「消費は落ち込んでいないが、回復の動きが止まってきているように見える」と語った。コロナの感染再拡大で高齢者を中心に消費を抑制している可能性があるという。
7―9月期の個人消費は「良くて小幅の伸び、悪ければ横ばい圏内」とし、22年度の実質GDPは日銀が7月に示した前年度比2.4%増に対して1%台後半―2%程度の増加にとどまる可能性があると予想。23年度は日銀予測の2.0%増に対し、世界経済の後退色が深まれば1%台の増加になる可能性があると述べた。
亀田氏は上昇圧力が強まる消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)について、携帯電話通信料の大幅値下げの剥落(はくらく)や食料品、耐久消費財の値上がりで「年内に3%に届く確率はかなり高い」と指摘。エネルギー価格の下落で来年の年明け以降は伸び率が縮小するものの、原材料高や円安の転嫁によるインフレは来年度半ばくらいまで続くとの見方を示した。
一方で、夏の消費の弱さ、原油安、政府の物価抑制策を踏まえると、22年度のコアCPIは2.3%という7月時点の日銀予測と「あまり変わらない着地になるのではないか」と語った。
<政策修正>
亀田氏は日銀の金融政策について、日本経済には引き続き大幅な緩和が必要とする一方、黒田東彦総裁の下での大規模緩和には「極端だ」との批判が出ていることから、より柔軟な政策運営を模索する動きが出てくる可能性があると指摘した。日銀が景気や円安に反応して政策修正することは考えにくいものの、新総裁が就任する来年4月以降は可能性があるとの見方を示した。
具体的な修正内容については、「少しだけ金利を動かしたところで景気にプラスにもマイナスにも大きな影響があるということではないと思う」とし、「フォワードガイダンスやコミットメントは再検討の余地がある」と述べた。ただ、修正の条件として米国経済、特に米連邦準備理事会(FRB)の金融政策の行く末がもう少しはっきり見えてくることが必要だとした。
(和田崇彦、木原麗花 編集:久保信博)