良好な雇用統計にもかかわらず、米国の金利軌道には依然として不透明感が強い。
米連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン前議長が経済動向を見極める上で重要視していた非農業部門労働生産性は、FRBが懸念していた以上に悪化の兆しが見られる。
イエレンFRB議長は6月の連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、インフレや雇用は目標に向けて順調に進展しているとの見解を示した一方で、唯一労働生産性の弱さに懸念を表明していた。
米労働省が発表した4-6月期非農業部門労働生産性速報値は前期比年率-0.5%と、予想外に3四半期連続のマイナスに落ち込んだ。
市場のエコノミストは+0.4%とプラスに改善を予想していた。
単位労働コスト速報値は前期比年率+2.0%と、1-3月期の-0.2%からプラスに改善し、予想の+1.8%も上回った。
しかし、1-3月期が-0.2%と+4.5%からマイナスへ大幅に下方修正されており、4−6月期の改善はこの反動と見られている。
前年比でも+2.1%と、1−3月期の2.5%、昨年10−12月期の2.7%から鈍化傾向にある。
米国の2014年の労働生産性は+0.8%、2015年は+0.9%だった。
これに比べて、現時点で過去12か月の生産性は‐0.4%と、マイナスの領域に落ち込んだ。
2009年6月に景気後退が終了したのち、3度目のマイナスとなる。
1990年代後半の生産性は3%超えを記録していた。
労働生産性は、生活基準の向上や賃金の上昇に重要と考えられている。
生産性が低迷している原因としては、投資の鈍化、規制の強化などが挙げられている。
労働生産性の低迷は連邦公開市場委員会(FOMC)が追加利上げに慎重になる十分な根拠となる。