■業績の動向
1. 2019年3月期第2四半期決算の概要
ワコム (T:6727)の2019年3月期第2四半期決算は、売上高46,263百万円(前年同期比13.7%増)、営業利益2,734百万円(同82.1%増)、経常利益2,912百万円(同77.4%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益1,975百万円(同18.0%増)と2ケタ増収・大幅増益で着地した。
期初予想との比較では、売上高は11.9%の上振れとなったほか、営業利益は約3.3倍、経常利益は4.3倍、親会社株主に帰属する四半期純利益は約3.0倍と、利益が非常に大きく上振れた。
売上高の前年同期比13.7%増収はテクノロジーソリューション事業によってもたらされた。
スマートフォン向け及びタブレット・ノートPC向けの両分野で需要の早期化(予想に対して前倒しで受注)と受注規模拡大が起こったことで同43.0%増と大幅増収となった。
それに対してブランド製品事業は競争環境の変化や供給力の不足などの理由から売上高を期待ほど伸ばせず同7.9%の減収となった。
利益においても売上高同様、テクノロジーソリューション事業がけん引した。
大幅増収に伴い利益も拡大し、セグメント営業利益は前年同期比40.4%増となった。
一方ブランド製品事業は製品ミックスの悪化による利益率の低下や、供給問題に対する緊急対応のための一時的なコストアップなどにより、セグメント営業利益は同26.3%減となった。
営業利益の大幅増益には販管費のコントロールも大きく寄与した。
この点は後述するように新中期経営計画の重要取組事項でもある。
2019年3月期第2四半期の販管費は前年同期比8.5%減少し、12,993百万円となった。
売上高販管費率は28.1%で、前年同期の34.9%から6.8ポイント低下した。
内訳を見ると全項目が減少している。
研究開発費と販促・広告宣伝費は、一部を下期に先送りした要因も含まれるため、注意が必要だ。
外注費の減少は前中期経営計画において導入を進めたグローバル基幹業務システムに関連した費用の減少による。
また、その他の減少は前年同期の貸倒引当金繰入(約2.3億円)の反動減や全社的な経費節減策の効果による。
以上の点を踏まえて営業利益増減要因をまとめると以下のようになる。
事業セグメント別ではテクノロジーソリューション事業の増益効果がブランド製品事業の減益影響を完全に吸収した形だ。
なお為替については、米ドル/円は前年同期比で1.35円ほど円高に振れたが営業利益への影響はなかった(売上高では減収要因)。
しかしユーロが3.25円ほど円安に振れたことで営業利益が0.6億円押し上げられ、さらにアジア通貨の変動で営業利益が0.2億円押し上げられた結果、為替影響額全体では0.8億円のプラス影響となった。
同社の2019年3月期第2四半期決算に対する市場の受け止め方は好意的で、決算数値に照らせば当然の反応と言える。
それでも弊社では、2019年3月期第2四半期の決算について100点満点という評価は留保したいと考えている。
理由は2019年3月期第2四半期決算の内容が当初、同社が目指したところとは異なるものだったためだ。
ポイントはV字回復を果たした2018年3月期だ。
2018年3月期のV字回復は下半期においてテクノロジーソリューション事業が需要の早期化によって収益が大きく上振れたことが大きい。
その一方でブランド製品事業は計画に対して未達となった。
2018年3月期の決算については、同社自身がブランド製品事業の未達を深刻な問題と考え、2019年3月期に臨むに当たってはブランド製品事業の本格的回復の実現を最重点課題と位置付けた。
しかしながら2019年3月期第2四半期の構図は2018年3月期下期とまったく同じ構図となってしまった。
課題として認識していた事項を改善・達成できなかったことで、同社自身は2019年3月期第2四半期決算に決して満足はしていない。
投資家を含む市場参加者もまた、結果だけに満足するのではなく、この点をきちんとフォローしていくべきだと弊社では考えている。
一方で、2019年3月期第2四半期決算において、同社の製品、技術力が有する高い競争力やブランド力、そしてそれらがもたらす高い収益力を確認できたことは素直にポジティブと評価して良いと考えている。
ブランド製品事業の計画比で未達となった部分も、裏を返せば同社の飛躍につながる可能性があるという見方が可能だ。
また、2019年3月期からスタートした新中期経営計画『Wacom Chapter 2』が最初の半年において着実に進捗しており、その中にはブランド製品事業の本格回復につながる事項も含まれている。
今後、中期経営計画がさらに進捗するに従い、ブランド製品事業の回復とテクノロジーソリューション事業の一段の発展という両輪がそろった形で収益の成長が期待される状況だ。
結局のところ、2019年3月期第2四半期は良くも悪くも1つの(しかも初期の)通過点に過ぎず、同社の真価の見極めには最低でも2019年3月期通期決算を待つ必要があるというのが弊社の考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
1. 2019年3月期第2四半期決算の概要
ワコム (T:6727)の2019年3月期第2四半期決算は、売上高46,263百万円(前年同期比13.7%増)、営業利益2,734百万円(同82.1%増)、経常利益2,912百万円(同77.4%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益1,975百万円(同18.0%増)と2ケタ増収・大幅増益で着地した。
期初予想との比較では、売上高は11.9%の上振れとなったほか、営業利益は約3.3倍、経常利益は4.3倍、親会社株主に帰属する四半期純利益は約3.0倍と、利益が非常に大きく上振れた。
売上高の前年同期比13.7%増収はテクノロジーソリューション事業によってもたらされた。
スマートフォン向け及びタブレット・ノートPC向けの両分野で需要の早期化(予想に対して前倒しで受注)と受注規模拡大が起こったことで同43.0%増と大幅増収となった。
それに対してブランド製品事業は競争環境の変化や供給力の不足などの理由から売上高を期待ほど伸ばせず同7.9%の減収となった。
利益においても売上高同様、テクノロジーソリューション事業がけん引した。
大幅増収に伴い利益も拡大し、セグメント営業利益は前年同期比40.4%増となった。
一方ブランド製品事業は製品ミックスの悪化による利益率の低下や、供給問題に対する緊急対応のための一時的なコストアップなどにより、セグメント営業利益は同26.3%減となった。
営業利益の大幅増益には販管費のコントロールも大きく寄与した。
この点は後述するように新中期経営計画の重要取組事項でもある。
2019年3月期第2四半期の販管費は前年同期比8.5%減少し、12,993百万円となった。
売上高販管費率は28.1%で、前年同期の34.9%から6.8ポイント低下した。
内訳を見ると全項目が減少している。
研究開発費と販促・広告宣伝費は、一部を下期に先送りした要因も含まれるため、注意が必要だ。
外注費の減少は前中期経営計画において導入を進めたグローバル基幹業務システムに関連した費用の減少による。
また、その他の減少は前年同期の貸倒引当金繰入(約2.3億円)の反動減や全社的な経費節減策の効果による。
以上の点を踏まえて営業利益増減要因をまとめると以下のようになる。
事業セグメント別ではテクノロジーソリューション事業の増益効果がブランド製品事業の減益影響を完全に吸収した形だ。
なお為替については、米ドル/円は前年同期比で1.35円ほど円高に振れたが営業利益への影響はなかった(売上高では減収要因)。
しかしユーロが3.25円ほど円安に振れたことで営業利益が0.6億円押し上げられ、さらにアジア通貨の変動で営業利益が0.2億円押し上げられた結果、為替影響額全体では0.8億円のプラス影響となった。
同社の2019年3月期第2四半期決算に対する市場の受け止め方は好意的で、決算数値に照らせば当然の反応と言える。
それでも弊社では、2019年3月期第2四半期の決算について100点満点という評価は留保したいと考えている。
理由は2019年3月期第2四半期決算の内容が当初、同社が目指したところとは異なるものだったためだ。
ポイントはV字回復を果たした2018年3月期だ。
2018年3月期のV字回復は下半期においてテクノロジーソリューション事業が需要の早期化によって収益が大きく上振れたことが大きい。
その一方でブランド製品事業は計画に対して未達となった。
2018年3月期の決算については、同社自身がブランド製品事業の未達を深刻な問題と考え、2019年3月期に臨むに当たってはブランド製品事業の本格的回復の実現を最重点課題と位置付けた。
しかしながら2019年3月期第2四半期の構図は2018年3月期下期とまったく同じ構図となってしまった。
課題として認識していた事項を改善・達成できなかったことで、同社自身は2019年3月期第2四半期決算に決して満足はしていない。
投資家を含む市場参加者もまた、結果だけに満足するのではなく、この点をきちんとフォローしていくべきだと弊社では考えている。
一方で、2019年3月期第2四半期決算において、同社の製品、技術力が有する高い競争力やブランド力、そしてそれらがもたらす高い収益力を確認できたことは素直にポジティブと評価して良いと考えている。
ブランド製品事業の計画比で未達となった部分も、裏を返せば同社の飛躍につながる可能性があるという見方が可能だ。
また、2019年3月期からスタートした新中期経営計画『Wacom Chapter 2』が最初の半年において着実に進捗しており、その中にはブランド製品事業の本格回復につながる事項も含まれている。
今後、中期経営計画がさらに進捗するに従い、ブランド製品事業の回復とテクノロジーソリューション事業の一段の発展という両輪がそろった形で収益の成長が期待される状況だ。
結局のところ、2019年3月期第2四半期は良くも悪くも1つの(しかも初期の)通過点に過ぎず、同社の真価の見極めには最低でも2019年3月期通期決算を待つ必要があるというのが弊社の考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)