[ワシントン 9日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は9日、中国経済に関する年次報告書を発表した。人民元相場について、同国の経済ファンダメンタルズにおおむね一致する水準との見解を変えていないことを明らかにした。
IMFの中国部門ディレクター、ジェームズ・ダニエル氏は電話会見で、中国の経済政策を分析したところ、2018年の元相場は「大幅な過大評価も過小評価もされていない」ことが判明したと述べた。
米トランプ政権は5日、中国を「為替操作国」に認定したと発表した。ムニューシン財務長官は中国による不公平な競争を排除するため、IMFに働き掛ける方針を示した。[nL4N2514WH]
ダニエル氏は米国の要請に対するIMFの対応についてはコメントを控え「米財務省と広範な問題について協議を行っている」と述べるにとどめた。
IMFは年次報告書で、米国との貿易摩擦が悪化した場合、中国に一段の財政刺激策が必要になる可能性があるとの認識を示した。
関税の引き上げがないことを想定すれば、中国政府がこれまでに発表している政策措置は今年の成長を安定させるのに十分と指摘。しかし、「貿易摩擦がさらにエスカレートし、経済や金融の安定がリスクにさらされることになれば、財政刺激策を中心とする追加的な刺激策の実施が正当化される」とした。
米国が残り3000億ドル相当の中国製品に25%の関税を課せば需要が急減し金融状況が逼迫(ひっぱく)するため、中国の成長率はその後1年間で約0.8%ポイント押し下げられるとの試算を示した。世界全体への悪影響は極めて大きいとしている。
ダニエル氏は関税が10%にとどまった場合、成長率が0.3ポイント低下すると述べた。
為替相場をより柔軟にすることで金融政策の自由度が増し内需の状況に対応しやすくなるとして、こうした外部からの圧力を和らげることが可能になると指摘した。
外国企業に対する一段の市場開放、特定の産業に対する当局による介入の制限など、経済の構造改革についてもIMFが働き掛けていることを明らかにした。
「中国が引き続き不均衡の是正や(市場の)開放、為替相場の柔軟性拡大に取り組めば同国自身の利益になり、世界経済にも恩恵をもたらす」と述べた。
IMFはまた中国の為替政策には柔軟性と透明性で一段の向上が必要との認識も示し、為替市場介入の詳細を公表するよう促した。
*内容を追加しました。 OLJPBUS Reuters Japan Online Report Business News 20190809T214808+0000