David Ljunggren
[オタワ 22日 ロイター] - ウクライナのゼレンスキー大統領は22日、訪問先のカナダで首都オタワの議会で演説し、ロシアと戦う中でカナダの支援が数千人の命を救うのに役立ったと語り、カナダの援助に謝意を表明した。
カナダ政府は2022年2月のロシアによる全面侵攻開始以降、ウクライナの防衛を力強く支持。22年初め以降、カナダはウクライナに約18億カナダドルの軍事援助を含む80億カナダドル(約59億ドル)を超える支援を確約している。
ゼレンスキー氏がカナダを訪問するのは全面侵攻開始以降で初めて。議会で「カナダがウクライナに兵器や装備を供与したおかげで、何千人もの命が救われた」とし、「ロシアに対する制裁でカナダがリーダーシップを発揮したことで、世界の他の国々がカナダに続いた」と語った。
その上で「ロシアがウクライナにジェノサイド(民族大量虐殺)を再び持ち込むことがないよう、また、そのようなことを再び試みることが決してしないよう、ロシアを決定的に敗北させなければならない。そしてロシアは敗北する」と述べた。
ゼレンスキー氏が登壇する直前、カナダのトルドー首相はウクライナに装甲車50台を供与するため、3年間で6億5000万カナダドルの追加軍事支援を実施すると発表。このほか、西側諸国の戦闘機「F16」でウクライナ軍のパイロットを訓練するためにトレーナーを派遣することも明らかにした。
トルドー首相は「揺るぎない支援を提供し続けるため、カナダは北大西洋条約機構(NATO)を含むパートナーとの協力を続ける。そして、ウクライナが強く、ダイナミックで、豊かな民主主義国家であり続けられるよう、来年もウクライナに対する経済支援を継続する」と述べた。
その後、両首脳は共同記者会見に臨み、トルドー首相は「カナダによるウクライナへの支援は揺るぎなく、今後も変わることはない」と改めて表明。「ウクライナはわれわれ全てを守るルールに基づく秩序のために立ち上がり、戦い、命を落としている。ウクライナがこの戦争に勝利することはカナダ国民の利益になる」と述べた。
トルドー首相はまた、ウクライナ戦争に関与している疑いのある63のロシアの個人と団体を制裁対象に新たに加えると表明。ウクライナと共同で、中央銀行資産を含むロシアの資産の差し押さえと没収について、政策決定者に助言を行う専門家チームの設立を支援することも明らかにした。
カナダ訪問に先立ち、ゼレンスキー氏は19日に米国のニューヨークで国連総会に出席した後、21日にワシントンでバイデン米大統領と会談。国防総省や連邦議会も訪問した。
米国では野党・共和党内ではウクライナへの追加支援に懐疑的な見方も出ているが、カナダではそうした分断はない。ただ、カナダには米国やドイツなどの主要支援国のような財政力や軍事的な蓄えはない。
ゼレンスキー氏はこの後、カナダ最大都市トロントに移動し、カナダのビジネスリーダーとの会合などに参加する。
カナダには140万人のウクライナ系住民がおり、ウクライナ、ロシアに次いで世界で3番目に多い。