[東京 15日 ロイター] - 日銀は15日、地域経済報告(さくらリポート)を公表し、北海道の景気判断を「緩やかに回復している」から「緩やかに拡大している」に引き上げた。北海道の景気判断を「拡大」と表現したのは今回が初めて。昨年9月に発生した北海道胆振東部地震の復旧・復興需要で、公共投資が増加していることなどが背景にある。
会見した小高咲札幌支店長は「6年近い長期にわたって道内の経済活動の水準が徐々に切り上がってきた中で、足元で公共投資の増加が経済活動をさらに引き上げる要素になっている」と指摘。その上で、道内はマクロ的に需要が供給を上回っている可能性が高いとの見方を示し、「この状況の下で経済活動が右肩上がりである場合には、回復という言葉は当てはまらず、拡大という表現のほうがなじむ」と説明した。
残る8地域の判断は据え置いた。北海道のほか北陸、関東甲信越など7地域が「拡大」、東北と四国は「回復」と判断した。全地域が「回復」または「拡大」となった背景について、日銀は「輸出・生産や企業マインド面に海外経済の減速の影響がみられるものの、企業・家計両部門で所得から支出への前向きな循環が働く下で、国内需要の増加基調が続いている」と説明した。
消費税増税の影響が懸念されている個人消費は、全地域で「増加」や「持ち直し」などの判断を維持した。
日銀は海外経済減速の日本経済への影響を警戒しているが、さくらリポートをみる限りでは、その動きは大きくなっていない。
<消費増税の駆け込み需要・反動減は限定的>
企業などからは、海外需要に対する見方や設備投資スタンス、消費税率引き上げに関する声が多く聞かれたという。
海外需要については「中国の自動車市場は低迷しており、今後の回復イメージも持てない。むしろ米中貿易摩擦が長期化する中、さらなる落ち込みを懸念している」(広島・自動車関連)と悲観の声があった一方、「一部海外メーカーから5G関連の需要増加を受けて前倒し発注がみられるなど、回復の兆しがうかがわれる」(熊本・生産用機械)とポジティブな見方もあった。
消費税率引き上げ関連では「前回の増税時と比べて駆け込みの動きが小さかったため、増税後の反動減も前回ほど長期化・深刻化しないとみている」(熊本・小売)、「前回よりも駆け込みの動きは限定的だったが、増税後はマインドの落ち込みによる消費への悪影響は確実にある」(松江・スーパー)などの声があり、見方が割れていた。
山田泰弘大阪支店長(理事)は増税の影響について「各種の需要平準化策の実施などもあり、前回増税時に比べると小さいものにとどまるとの声が多かった」と説明。宮下俊郎福岡支店も「増税後の反動は想定の範囲内で推移しており、関係者は懸念を持ちながらも、反動は前回増税時よりも小規模かつ短期間にとどまる見通しは変わらないという評価が多い」と口をそろえた。
清水季子名古屋支店長は「駆け込みの規模は、政府の需要平準化策により前回税率引き上げ時に比べて小幅にとどまったとみられる」とした上で、「駆け込みがならされた分、その反動の出方も今のところまちまちだ」と語った。
一方、山田大阪支店長は関西の輸出・生産動向について「IT関連財の調整の進捗などを背景に海外需要が年度後半から来年にかけて増加基調に復していく」との見通しを基本シナリオとしつつ、「米中貿易摩擦の影響など海外経済を巡る不確実性が大きいので、輸出・生産に与える影響を注視したい」と警戒感も示した。
*内容を追加しました。
(志田義寧 編集:佐々木美和、田中志保)