[上海 15日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大による株式市場の乱高下を嫌気した中国の個人投資家が、このところ転換社債への投資を急拡大させている。多くの銘柄で割高感が高まり、当局が警戒する動きも出てきているという。
3月の中国本土の転換社債売買高は前月比4倍近い1兆元(1419億ドル)超に拡大した。これは、中国市場で流通している220銘柄の額面価額の合計の2.5倍に相当する。
かつて転換社債市場はプロのファンドマネージャーの独壇場だったが、今では個人投資家の存在感が増している。転換社債市場には、同一営業日内における反対売買の禁止や、値幅制限などの規制がないため、個人投資家に好まれているという。
「超短期トレーダー」を自称するある個人投資家は「株式投資で利益を上げるのは困難になった。転換社債取引のほうがはるかに魅力的だ」と指摘。この投資家は転換社債で3月に10%を超えるリターンを得た。
証券取引所のデータによると、2019年に中国企業が発行した転換社債は2682億元で、過去最高を記録。2018年の3倍以上に上った。 MSCIによると、昨年、転換社債の発行では中国が米国を上回ったという。
しかし、ウェルキン・アセットマネジメントの幹部は、新規投資家の流入により、価格が合理的に説明できないほどの水準に高騰した銘柄もあると指摘する。相当数の銘柄で、価格が現在の水準から50%以上上昇しない限り利益が出なくなっているという。
そうした例の一つが、特許医薬品の製造・販売を手掛ける貴陽新天薬業 (SZ:002873)が発行した2025年12月償還の転換社債
特に規模が小さく低格付けの企業が発行する転換社債の売買高が増加していることに、規制当局も警戒感を示している。
上海・深センの各証券取引所は、出来高が極めて多い複数の銘柄について「異常な取引」がないか監視に乗り出し、投資家に対し数回にわたって「もはや安全な取引とは見なされない」と警告する文書を出した。
こうした警告がなされたことで、個人投資家の間で規制が強化されるとの警戒感が浮上している。
個人投資家の1人は「最も懸念するのは、当局が個人投資家の参入条件を引き上げるなど、強烈な方針を発表するのではないかということだ。そうなれば市場が死んでしまう」と話した。