[13日 ロイター] - 新型コロナウイルス危機への経済対策として米連邦準備理事会(FRB)は計3兆ドルもの支援金を投入、米債券・株式市場のあちこちで「行き過ぎ」をあおる結果になった。
FRBはこれまでに、市場の流動性維持のためには無制限で金融資産の買い入れをすると約束。同行のバランスシートは2月の4兆2000億ドルから足元では7兆ドルに増大した。買い入れの大半は米国債と住宅ローン担保証券(MBS)に限定されている。しかし米企業の社債の市場を押し上げて見せるとFRBが約束したことは、債券と株式の投資家を熱狂させるのに十分だった。
ナットアライアンスの国際債券責任者、アンドルー・ブレナー氏は「今では新型コロナと市場が逆相関になっている。新型コロナの状況が悪化するほど市場は好調になる。FRBが刺激策をもたらしてくれるだろうというのが理由だ。これが市場を突き動かしている」と述べた。
投資家がFRBの介入のおかげだとみている市場バブルについて、まとめた。
<株式市場はたなぼた>
経済対策でFRBは、株式は買っていない。しかし、金利水準がゼロ近辺で、米企業を幅広く支える信用面の支援とあいまって、利回りに飢えた投資家を株式市場に回帰させる結果になった。
S&P500種株価指数とダウ工業株30種平均 (DJI)はいずれも3月23日に底値をつけた。それ以降、両者とも40%超値上がりし、ナスダック総合指数 (IXIC)は60%近く上昇している。S&P500種構成銘柄の予想利益に基づく株価収益率は現在21.5倍。これは20年前のドットコムバブル時並みの水準だ。
<IPO熱>
株式市場の熱狂は新規株式公開(IPO)などに波及した。リフィニティブIFRのデータによると、第2・四半期の米株での資本調達は過去最高の1840億ドル。ディーロジックによると、同四半期のIPOで公開価格が目標レンジを上回ったのは合計で89億ドルを超え、2014年第3・四半期以来の高水準になった。
リチャード・バーンスタイン・アドバイザーズの最高投資責任者、リチャード・バーンスタイン氏は「だれもがなぜあたかも日産車をベントレー車の価格で買うような動きをするのかは皆目見当がつかない。でも、それがおおむね実際に最新のIPO市場で起きていることだ。確かにいわば日産車は四輪車だし良い移動手段だが、ベントレーの値打ちが一体あるのか」と語る。
<浮かれた債券市場>
FRBの債券購入プログラムは企業の社債発行を促し、第2・四半期の起債市場はかつてない繁忙になった。
米証券業金融市場協会(SIFMA)によると、上半期の投資適格級債の起債は約1兆2000億ドルに上り、過去最高を記録した。FRBは投資不適格(ジャンク)級債のほとんどでは購入を控えたが、それにもかかわらずジャンク債起債も上半期で2000億ドルと、前年の2倍以上になった。
シチズンズ・コマーシャル・バンキングの資本市場責任者、テッド・スイマー氏は「投資適格級債にとっても高利回り債にとっても、起債状況、値動きいずれの点でびっくりするような四半期になった。ただただ、資金が市場に流れ込んでくるのを見ているばかりだった」と振り返る。「ただ、第2・四半期に新規の発行がこれほどまでに多かった分、第3・四半期はそれほど大量起債にはならない懸念がある」とも述べた。
安全な米国債に対し、よりリスク度の高い社債に投資家が求める上乗せ金利(スプレッド)は第2・四半期、急激に縮小した。ICE/バンク・オブ・アメリカ高利回り指数 (MERH0A0)によると、3月23日時点でジャンク級のスプレッドは11年ぶりの高水準に拡大していたが、6月末にはほぼ半減した。投資適格級社債<.MERC0A0>のスプレッドは3月23日の401ベーシスポイント(bp)から、現在は152bpとほぼ完全に回復している。