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アングル:債券市場が予告するスタグフレーション、懐疑の目も

発行済 2021-08-06 16:37
更新済 2021-08-06 16:46
© Reuters.  8月5日、債券市場の値動きを素直に受け止めれば、新型コロナウイルスのパンデミック後の世界はインフレと低成長が同居する「スタグフレーション」だと定義されよう。だがこうした

[5日 ロイター] - 債券市場の値動きを素直に受け止めれば、新型コロナウイルスのパンデミック後の世界はインフレと低成長が同居する「スタグフレーション」だと定義されよう。だがこうした忌まわしいシナリオは、堅調な経済データや、最高値圏で推移する株価が示唆する景気回復と矛盾する。

一体なぜスタグフレーション到来を債券市場が予告しているのかは謎だらけで、多くの投資家は信用していない。むしろ彼らの見方では、中央銀行の債券市場に対する「統制」がいかに強力で、市場のシグナル発信機能を歪めているかを物語る。

米国とユーロ圏の債券利回りは名目ベースと物価調整後の実質ベースの双方で急低下し、経済成長が弱いためにあと何年も超緩和的な金融政策が必要だというメッセージを送っている。

そして確かに10年物米物価連動国債(TIPS)の実質利回りは3月終盤以降で半減し、マイナス1.20%未満と過去最低水準に沈んだ。しかし市場の予想物価を示す「ブレークイーブンインフレ率(BEI)」は今年の最高水準からそれほど大きく下がっていない。通常の10年国債と10年物TIPSの利回り差で見たBEIは、今も2.35%になる計算だ。

ロイヤル・ロンドン・アセット・マネジメント(RLAM)の金利・キャッシュ責任者クレイグ・インチーズ氏は「債券市場が、ある種のスタグフレーションを織り込みつつあることをほのめかしているのはほぼ間違いない」と指摘。物価上昇率が高止まりし、名目利回りが低下し続けると債券市場が想定しているように見えると述べた。

実際、物価データは予想外に上振れしており、中銀が考えているほどインフレが一過性に終わらないリスクは出てきている。直近のミシガン大調査では、米国の消費者が予想する向こう5年の物価上昇率は2.8%だった。

しかし、こうした利回り動向がもたらすメッセージは、一方で基本的に力強くて国際通貨基金(IMF)も最近上方修正したような成長見通しとは一致しない。

インチーズ氏は、スタグフレーションという想定に行き着くとすれば、新型コロナウイルスのワクチンが機能しないと信じるケースに限られるとの見方を示した。

<データの読み方>

もっとも投資家が今後、経済成長を巡る期待を弱めるかもしれない理由も幾つかある。まず挙げられるのは新型コロナウイルスの変異株だ。ドイツ銀行の調査によると、これは市場にとって最大の懸念要素になっている。

経済の勢い自体が鈍ってきたのも事実だ。シティが算出しているエコノミック・サプライズ指数からは、米経済指標が予想対比で下振れに転じていることが分かる。

それでもMFSインベストメント・マネジメントの債券調査アナリスト、アナリサ・ピアッツァ氏は、債券市場がどの程度データを読み込んでいるのかには疑問を抱いている。「われわれが景気後退に向かっていないのは明らかだ」と主張するピアッツァ氏は、センチメント系の指標がピークアウトした公算は大きく、成長は緩やかになるだろうと認めつつも、世界中のデータは成長ペースが非常に強いという点で足並みがそろっていると強調した。

債券市場は、米連邦準備理事会(FRB)の拙速な引き締めが景気回復の妨げになるのではないかと懸念しているもようで、長期的な利上げ予想を巻き戻すことさえ始めている。

INGバンクの分析に基づくと、利上げサイクルの最終到達点(ターミナルレート)の代理変数となる、金利スワップが織り込む5年後のFRBの政策金利は現在1.14%。今年3月には、これより70bp前後高い想定だった。

FRBの連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーが見込む長期的な政策金利の2.5%と比べても半分未満にとどまっており、実質的に経済成長はFRBの見通しに届かないと債券市場が示唆していることになる。

ただRLAMのインチーズ氏によると、純粋な成長不安なのであれば、利回りとBEIが整合性のないシグナルを送ることは考えにくい。投資家によれば、本来なら利回り低下にはBEIと株価、社債価格の急落が付随するもので、そうした動きは昨年の新型コロナウイルスを巡る市場混乱時に起きた。

<需給がかく乱>

中銀がきっちりと手綱を握る債券市場から出されるメッセージは、大きく受け止め過ぎるのは危険でもある。

ロイターがFRBと米証券業金融市場協会(SIFMA)のデータを用いて計算したところでは、FRBの買い入れ後、投資家に残された米国債は純発行額の3カ月移動平均で見て、今年に入ってからじりじりと減少し、7月はついにマイナスとなった。

もう1つの問題は、TIPS市場の流動性縮小だ。FRBのTIPS保有比率は昨年初めの10%弱から20%超に高まったことが、FRBとSIFMAのデータで確認できる。さらにインフレをヘッジしようとする投資家の資金が大量に流れ込み、TIPS市場の需給は一段と引き締まった。

アリアンツのシニアエコノミスト、パトリック・クリザン氏は、通常の米国債より流動性が乏しくなったことによるプレミアムをTIPS投資家は払わされていると説明。この流動性プレミアムを取り除くと、先週の10年物TIPS利回りはマイナス0.52%だったはずで、過去最低水準どころか、これよりずっと高くなると見積もっている。

このようにTIPS利回りが人為的に低く表示されることで、BEIの物価予想は過大になってしまう。

INGのシニア金利ストラテジスト、アントワーヌ・ブベ氏は「金利市場は単に経済情勢だけでなく、需給バランスまで反映している」と分析する。

だからこそ多くの投資家は、今後も景気回復が途切れないとみなし、米10年国債利回りは年末までに2%付近まで上昇するとの予想を維持しているのだ。

FRBのパウエル議長でさえ、債券市場のメッセージを解読するのは難しいと認めた。最近では、テクニカル要因というのは「全く説明がつかないことをとりあえず収めておく場所」だと発言している。

(Yoruk Bahceli記者)

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