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アングル:次期FRB議長が直面する5つの大きな課題

発行済 2021-09-10 16:58
更新済 2021-09-10 17:00

[7日 ロイター] - バイデン米大統領は、来年2月で任期満了となる米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長を続投させるか、それとも別の人物を次期議長に指名するかを近く決断する。折しもFRBが重大な岐路に立っている局面で、議長人事が発表されることになるだろう。

民主党左派は、雇用拡大の取り組み強化や気候変動リスク抑制、格差是正といった面を通じてFRBが経済においてもっと積極的な役割を果たすことを求めている。一方、保守派はFRBが金融政策の分を守って物価安定により注意を払いつつ、金融市場や金融監督でその存在感を小さくするのが望ましいという考えだ。

バイデン氏が誰を選ぶにしても、次期議長は金融政策や通貨の本質にまつわる大きな問題と格闘しなければならない。向こう4年間で予想されるのは、以下の5つだ。

(1)政策運営適正化

新型コロナウイルスのパンデミック発生以後、FRBは政策金利をゼロ近辺に引き下げ、米国債と住宅ローン担保債(MBS)の大規模な買い入れに踏み切った。そして経済が急回復している以上、年内には債券買い入れの縮小を開始する公算が大きい。

ただ昨年8月に採用した新戦略の下では、労働市場が完全雇用水準に達し、物価上昇率が2%まで高まった上にある程度2%を超えて推移してからでないと、利上げには動けない。

この約束は、次期議長が守るのに苦労するかもしれない。FRBの政策担当者のほとんどは、現在2%を上回っている物価上昇は一時的だと考えている。だが物価高騰により持続性があると分かった場合、次期議長は結局、完全雇用の実現前に利上げを実施せざるを得なくなるのではないか。

8月時点で、米国の雇用者数はパンデミック前よりなお530万人少ない。

クリーブランド地区連銀のメスター総裁は8月のインタビューで「さまざまな方向に進もうとしている多くの要素が経済の構造的部分に内在しており、われわれの政策を経済に応じて適切に調整する態勢を確保するためには、多大な注意を払っていく必要があると思う」と語っている。

(2)金融監督

FRBが新戦略に基づいて、雇用改善のために緩和的な政策をより長期間続けていくとすれば、危機を引き起こしかねないようなリスクの高い行動を避けるには金融規制を厳格化するしかないだろう、というのが専門家の見方だ。

かつてFRBのエコノミストだったピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー、デービッド・ウィルコックス氏は「わたしの考えでは、金融規制が2番目の課題だ。特に歴史的な低金利環境における金融リスク抑制という問題に対処し続けることにおいて」と述べた。

ウィルコックス氏によると、次期議長はより幅広い形で金融安定に目を向ける必要も出てくる。昨年3月、パンデミックに絡む経済活動停止の中で金融市場が崩壊寸前に陥ったことで露呈したのは、米国債市場と短期金融市場が抱えるシステム上のもろさだった。

(3)デジタル通貨

ドルなどの法定通貨と価格が連動する暗号資産(仮想通貨)「ステーブルコイン」は人気が高まりつつあるが、まだほとんど規制対象に含まれていない。ボストン地区連銀のローゼングレン総裁は、これが金融安定に対する脅威になりかけていると主張している。

主な疑問の1つは、FRBが独自のデジタル通貨発行を決めるかどうかになる。パウエル氏は今のところ方針を明示していない。パウエル氏以外の次期議長有力候補の1人となっているブレイナード理事は、発行しない展開は想定しづらくなると発言している。FRBは今月中に、デジタル通貨問題のディスカッションペーパーを公表する予定だ。

推進派は、うまく設計されたデジタル通貨は取引コストを引き下げ、社会的・経済的に不利な立場に置かれている人々が銀行システム利用しやすくなると強調。一方で各世帯や企業が通常の当座預金口座を使わず、直接FRBと取引するようになれば、銀行は決済システムから疎外されるとの懸念も聞かれる。

中国など一部の国は既に自前のデジタル通貨を発行しており、アマゾン・ドット・コムのような民間企業にもそうした動きは広がっている。これらのさまざまな「トークン」が普及すると、決済システムが細分化され、FRBの金利コントロール能力が脅かされるだけでなく、ドルの国際的な決済通貨としての優位性も危うくなるだろう。

ダートマス大学のアンドリュー・レビン教授(経済学)は「FRBはかなり素早く、この問題の解を見つけ出す必要がある。これは来年中か2年以内には事態が決着してしまう分野で突きつけられた課題と言える」と話した。

(4)気候変動リスク

次期議長は、制御不能な森林火災や超巨大ハリケーンなど気候変動がもたらす破滅的な災害が経済と金融市場に及ぼす影響を理解し、対応することも迫られる。

パウエル氏とブレイナード氏はともに、例えば自然災害や政府の温室効果ガス排出規制に起因する資産価格下落といった事態に対して、銀行に耐性を確保させるのはFRBの任務だとの認識を示している。

ただFRBの使命には、気候変動に直接立ち向かう権限は一切含まれていない。

FRBは昨年、気候変動について個々の銀行にもたらすリスクと金融システム全体にもたらすリスクを検討する専門パネルをそれぞれ設置。また主要中銀として最後に、「気候変動リスク等に係わる金融当局ネットワーク(NGFS)」に正式加盟を果たした。

いずれも次期議長にとって気候変動問題で行動範囲を広げてくれるとみられるが、別途新たな法整備をしない限り、他の幾つかの中銀ほど積極的な対応をするのは難しいかもしれない。

(5)人種・ジェンダー格差

FRB当局者は以前に比べて、人種やジェンダーの格差が経済成長の足を引っ張る可能性に関して声高に情報発信をするようになった。

共和党のトゥーミー上院議員は、FRBがこの問題に手を出しても「終わりは見えない」と言い切る。しかし左派系政治家の多くは、FRBの踏み込みが不十分で、債券買い入れに至っては株価を押し上げて富裕層の懐を潤していると批判している。

元FRBエコノミストでマクロポリシー・パースペクティブス社長のジュリア・コロナド氏は「それが昨今の大きな問題を解決するためにFRBが行っていることに対する数多くの不安を生み出している。この中には労働所得や富の再配分を巡る不平等や格差が含まれる」と述べた。

コロナド氏によると、次期議長は零細企業向け融資促進プログラムや、銀行がローン返済で苦戦する消費者を積極的に支援するのを促すようにする形への監督方法変更などを通じて、格差縮小に向けた政策手段の微調整が可能だという。

(Ann Saphir記者、Jonnelle Marte記者)

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