[北京 10日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)が10日発表した8月の新規人民元建て融資は1兆2200億元(1895億1000万ドル)と前月から増加したが、市場予想には届かなかった。
ロイターがまとめたアナリスト予想は1兆3000億元。7月は9カ月ぶり低水準の1兆0800億元、前年同月は1兆2800億元だった。
コメルツ銀行(シンガポール)のエコノミスト、周浩氏は「融資に関する指標はあまり良いものではなかった」と述べた。
信用の伸びが鈍化について一部のアナリストは、景気減速に伴い企業の資金需要が弱まったことを示すと指摘している。
住宅ローンを中心とする個人向け融資は5755億元と前月(4059億元)から増加した。企業向け融資は6963億元でこちらも前月(4334億元)から拡大した。
複数の関係筋によると、中国の一部の大手銀行は8月末にかけて融資を拡大し、承認済みの不動産融資の実行を急いだ。人民銀行から8月の融資の割り当てを増やすよう通告があったという。
ただ、今週発表の8月の貿易統計が予想以上に強い内容となったことや、人民銀行高官の最近のコメントを受けて、市場では、積極的な金融緩和が近いとの観測が後退している。
マネーサプライM2の前年比伸び率は8.2%と市場予想の8.4%を下回った。前月は8.3%だった。
8月末時点の元建て融資残高は前年比12.1%増と2020年初めのロックダウン(都市封鎖)の初期以来の弱い伸びとなった。前月は12.3%増加した。市場予想は12.3%増。
8月末時点の社会融資総量残高は前年比10.3%増と、2018年12月以来の低い伸び。7月は10.7%増だった。
8月の社会融資総量は2兆9600億元。7月は1兆0600億元、ロイターがまとめた市場予想は2兆7500億元だった。
社会融資総量には、通常の銀行融資以外の新規株式公開、信託会社の融資、債券発行などが含まれる。
<一段の金融緩和も>
キャピタル・エコノミクスはリポートで「人民銀が緩和的なスタンスをやや強めたことにより、信用の伸びは今後数四半期で横ばいとなる可能性がある。しかし(効果が表れるまでに)遅れがあるため、当面は厳しい信用状況が引き続き経済活動に向かい風となる」と分析した。
「人民銀は借り入れコストの低下を目指し、預金準備率と政策金利をさらに引き下げると予想する」と指摘。「こうした緩和バイアスにより信用の伸びはやがて横ばいになるとみられるが、急激な反発は想定していない」との見方を示した。
コメルツ銀行の周浩氏は、銀行の貸出金利の指標となる最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)が引き下げられる可能性が高いと述べたが、時期については言及しなかった。