[ワシントン 11日 ロイター] - 世界銀行は11日、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)の影響で、低所得国の債務負担が2020年に12%増加し、過去最高の8600億ドルに達したと報告書で明らかにし、債務削減の取り組み加速を呼び掛けた。
マルパス世銀総裁は記者団に、世銀が公表した22年版の国際債務統計(IDS)について、低中所得国の債務脆弱性が劇的に高まったことを示していると説明。
また、各国の債務をより持続可能な水準まで削減するための包括的な取り組みの必要性を訴えた。報告書とともに出した文書で、包括的アプローチには債務の削減や再編加速、透明性の向上が含まれるとした。
総裁によると、世界の最貧国の半数が対外債務の返済に支障を来しているか、そのリスクが高いという。持続可能な債務水準は景気回復や貧困削減を実現するのに必要だと指摘した。
報告書によると、低中所得国のストックベースの対外債務は20年に合計で5.3%増の8兆7000億ドルとなった。全ての地域で増加したという。
対外債務は国民総所得(GNI)と輸出を上回るペースで増加し、中国を除く対外債務の対GNI比率は5%ポイント増の42%となった。債務の対輸出比率は19年の126%から154%に急上昇した。
マルパス氏は20カ国・地域(G20)の「債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)」の期限が今年末に切れるのを踏まえ、債務再編の取り組みが急務だと強調した。
報告書によると、多国間機関から低中所得国に流入した資金は差し引き1170億ドルとなり、10年ぶりの高水準を記録した。
低所得国向け融資は差し引きで25%増の710億ドルと、こちらも10年ぶりの高水準だった。国際通貨基金(IMF)など多国籍機関が420億ドルを提供し、2国間融資は100億ドルに上った。
世銀のチーフエコノミスト、カーメン・ラインハート氏は、金利の上昇に伴い重債務国の直面する課題が悪化する可能性があると警告した。
同氏はまた、成長の欠如が途上国が直面している最大の経済的課題と述べた。
経済成長は貧困削減に不可欠であるほか、歳入を増加させ、財政的余裕や社会的セーフティーネット、公共財の提供につながると指摘。「パンデミックが発生する前から多くの新興国市場や途上国は課題を抱えており、2015年ごろから成長が鈍化し始めている」とした。