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アングル:QTはいつか、FOMCの注目点に急浮上

発行済 2021-12-13 17:18
更新済 2021-12-13 17:27
© Reuters.  12月14─15日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、「QT(Quantitative Tighting、資産縮小」への言及があるかに市場の関心が高まっている。ワシントンのFRB本部で11月撮影(2

伊賀大記

[東京 13日 ロイター] - 14─15日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、「QT(Quantitative Tighting、資産縮小」への言及があるかに市場の関心が高まっている。インフレが止まらない中、利上げを待たずにバランスシート縮小に動くのではないかとの警戒感が強くなってきたためだ。過剰流動性による株高に変化が生じるのか、今後のマーケットの最大の注目点になる。

<2018年末の株急落>

2018年末、世界的に株価が大きく下落した。米S&P500でみて3カ月弱で約2割の急落となったが、その要因として米中貿易摩擦とともに挙げられたのが、FRB(米連邦準備理事会)のQTだ。

FRBは17年9月にQT、つまり総資産の圧縮を決定、10月から実施した。量的緩和第3弾(QE3)のテーパリング(量的緩和の縮小)を開始した14年1月から約3年半、利上げを開始した15年12月から約1年半強をかけて実施された。

テーパリング、利上げ、そしてQT。金融正常化の最後の手段とされただけでなく、QTは償還期が来た国債や住宅ローン担保証券(MBS)を再投資しない金額の上限を決めて、それから上限を徐々に引き上げるという非常に慎重な方法で実施された。

「過剰流動性相場を支えるのがFRBの資産買い入れだ。最近の中央銀行は、株高による資産効果も景気や物価の要素に組み込んでいるとみられ、不測の株安を起こしかねないQTは極めて慎重に扱われた」と、三井住友銀行のチーフ・マーケット・エコノミスト、森谷亨氏は指摘する。

事前のコミュニケーションでマーケットに十分織り込まれたことから、QT開始後も、米株は当初、上昇を続けていた。米長期金利は17年9月末の2.3%から18年10月には3.2%まで上昇したが、S&P500は約1年で約15%上昇した。しかし、18年末にかけて株価は急激に下落する。

<投資家心理に影響>

米中間の緊張が高まり、貿易摩擦などが懸念される中で、過去最高値にあった米株が一気に調整したとみられているが、弱気相場入りとされる2割の大幅株安となった背景には、FRBのQTもあったとの見方が多い。

当時のQTは、バランスシートの縮小が3カ月ごとにペースを加速するよう設計されていた。18年10月以降、縮小規模が3カ月で500億ドルに拡大したことも一因とみられているが、ペースの加速自体は事前にアナウンスされていた。

QTが株安要因となる波及経路としては、FRBが保有国債の規模を縮小して国債需給が悪化、長期金利の上昇で株価が下押しされることが考えられるが、投資家の心理も大きいとグローバルマーケットエコノミストの鈴木敏之氏は指摘する。

「FRBの準備預金に資金がジャブジャブにある状態であれば、金融機関など投資家には買い安心感がある。株が急落すればすぐチャンスと見てすぐに買いに来るのはそのためだ。その準備預金が減りだしたとき、その安心感は揺らぎ始め、ネガティブ材料への抵抗力が弱くなる」(鈴木氏)という。

マーケットが大きく動揺した結果をみて、FRBはQTを早めに終了。18年9月末に終了する予定だったが、7月のFOMCで2カ月前倒しを決めた。結果的に、資産を十分圧縮できないまま、新型コロナウイルスによるパンデミックが到来する。

<QE終了直後のQT予想も>

FRBは新型コロナによる景気(雇用)の悪化を防ぐため、20年3月から米国債とMBSを月1200億ドル規模で購入を開始。現在、バランスシートは4兆4000億ドルから8兆6000億ドルに膨らんでいる。

FRBは今年11月からテーパリングを始めたが、買う量を少し減らしただけで、買うことは止めていない。FRBの総資産は、このままのペースであれば来年6月までに9兆ドル強になる。

前回通りのスケジュールであれば、テーパリング終了からしばらく経って利上げを開始、何回か利上げした後でようやくQTに至る。

しかし、今回はインフレの高進という前回と違う状況に直面している。当時の米消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は2%前後で、その後も3%を超えることはなかったが、今回は11月で前年同月比6.8%上昇と約39年ぶりの伸びだ。

市場では、今週のFOMCでテーパリングの加速が決定され、テーパリング終了直後の来年半ばに利上げとQTが始まるとの予想も浮上してきた。供給制約などのインフレ要因をQTが解消できるわけではないが、過熱気味な一部の商品価格の上昇を抑える効果は期待できるためだ。景気後退のシグナルとされる逆イールドカーブの予防にもなる。

みずほ証券のシニア債券ストラテジスト、上家秀裕氏は「市場への事前のコミュニケーションがない中で、いきなりQTに言及することなないだろう。記者の質問に答える形で今後の課題という程度の発言はあるかもしれないが、もし具体的な言及があれば、長期金利の上昇要因になる」と話している。

前回はFRBの流動性供給を銀行の準備需要が上回った結果、短期金利が急上昇する場面も見られた。マーケットへの影響が大きいQTであり、そのハンドリングを間違えば、再び波乱が起きかねない。

(伊賀大記 編集:石田仁志)

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