[2日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は2日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、インフレ圧力が高まり、企業は引き続き人手不足に苦闘しているものの、米経済は1月から2月中旬にかけて「控えめから緩やか(modest to moderate)」なペースで拡大したという見解を示した。
報告書は「企業は投入コストの転嫁が続く中、物価が今後数カ月にかけさらに上昇すると予想している」とした。
報告書で示されたまちまちの状況は、雇用市場の活況や経済活動の回復を示す広範な経済データを反映している。1月は、新型コロナウイルス感染者数が急増する反面、インフレが約40年ぶりの高水準を記録したほか、労働者の獲得競争により賃金がここ数年で最も速いペースで上昇した。
さまざまな産業で投入コストが上昇し、物価上昇圧力がすぐに緩和される兆候はほとんど見られなかった。
報告書は12地区連銀が2月18日までに全米の調査先企業から受けた報告に基づいてまとめている。
報告書は「顧客への請求価格は全国的に堅調なペースで上昇し、企業は投入コスト上昇分の転嫁を続けるため今後数カ月さらなる価格上昇を見込んでいると報告した」と指摘した。
FRBは3月15─16日に開く次回の連邦公開市場委員会(FOMC)で、インフレ抑制のために金融引き締めを開始し、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)後に維持してきた事実上のゼロ金利政策を解除する方針だ。
2日の報告書発表に先立ってFRBのパウエル議長は「(次回のFOMCで)25ベーシスポイントの利上げを提案し支持する方向に傾いている」と表明したが、インフレが想定通りに緩和しない場合、その後の会合でより積極的に対応する用意があると言明した。
パウエル氏は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて米国経済の見通しは極めて不確実になっており、FRBは慎重に進めていくとも表明した。
報告書には、インフレ期待の高まりが賃金上昇を加速させるという賃金・価格スパイラルが間近に迫っている可能性を示す兆候が含まれている。ただし、いくつかの地区では賃金上昇の緩やかさを示す兆候も見られた。
報告書は「成果はまちまちなものの、企業は引き続き報酬を増加させた。企業は逼迫した労働市場とそれに由来する堅調な賃金の伸びが続くと予想していると報告した」とした。
サンフランシスコ地区連銀は、アラスカとユタにある企業で面接を欠席した応募者が複数いたことや、初日から職場に現れなかった新規採用者が複数いたと指摘。クリーブランド地区連銀は、多くの企業で従業員の離職率が高く、その理由は「リモートワーク(遠隔勤務)や転職、より良い賃金や労働条件を求めるなどさまざまだ」とした。
アトランタ地区連銀は、ある高級レストランで従業員が個人の予定に合わせて複数のレストランで「シフト・サーフ」してより多くの収入を得られるようにする新システムを採用したところ「一部の店で人手不足に陥った」と報告した。
報告地区では、今後6カ月間の全体的な経済見通しは引き続き安定し、おおむね楽観的だったが、企業は不確実性の高まりを強調した。