執筆:Daniel Shvartsman
Investing.com -- 堅調な米国雇用統計により、FRBをはじめとする各国中央銀行が金融市場を犠牲にしてでも金融引き締め政策を継続できることが明らかになり、6月第1週の株式市場は下落基調で終了した。
今週は米国で消費者物価指数の発表があるが、インフレがFRBや他の中央銀行の最大の懸念事項であることに変わりはない。欧州中央銀行は今週、政策の正常化が期待される中で会合を開く。また、先週は原油価格が高値圏で推移し、先行き不透明感が漂う企業も多いことから、消費者心理がいかに強くても、景気の軟着陸は困難であることを示唆している。
今後1週間の市場の注目点は以下の通りだ。
1. 米国:消費者物価指数
今週金曜日に発表される5月の米消費者物価指数(CPI)は、次のFOMC会合の数日前に発表され、FRBが利上げ幅を決定する前の最後の材料として注目されている。インフレ率は前年比8.3%と予想され、コア・インフレ率(エネルギーと燃料価格を除く)は前年比5.9%みられている。後者の数値は3ヶ月連続の低下となり、コア・インフレ率がピークに達した可能性を示唆するもので、先週の雇用統計における賃金の伸びの鈍化に呼応するものと思われる。一方で、全体のインフレ率は8.3%とピークに近く、燃料や食料品価格の上昇を考えると、消費者はコア数値がピークアウトしたと知ってもあまり慰めにはならないかもしれない。
2. 欧州中央銀行:会合
世界中の中央銀行が利上げサイクルを開始する中、欧州中央銀行(ECB)は利上げから一歩も二歩も遠ざかっているとみられている。しかし、ユーロ圏のインフレ率が歴史的な高水準にあることから利上げに関する議論の必要性が増しており、今回の会合で2022年第3四半期に利上げが行われることを明らかにするとアナリストは予想している。
ECBのラガルド総裁はブログ記事2週間前に利上げに関して述べており、ECB声明とその後の記者会見を通じて、ラガルド総裁がゼロ金利からの脱却への道を示し、今後の見通しに関する信頼性を再確認する機会となるだろう。EUR/USDは4月末から1.67%、5月中旬の安値から3.55%それぞれ上昇しており、ECBが市場からの信頼を少なくとも少しは取り戻したことを示唆している。
3. 原油価格の行方
OPEC+が発表した50%の増産は、原油価格の上昇をほとんど抑えることができず、WTI先物とブレント原油はともに1バレル120ドルをわずかに下回って先週の取引を終えた。景気減速が騒がれる中、経済成長(PMI)や消費者需要が原油需要の高止まりを示唆しており、OPECの増産が十分かどうか、あるいは完全に実現するかどうかさえも疑問視されている。
今後1週間は、人権問題が懸念される中、バイデン米大統領がサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子との会談に踏み切るかどうかに注目が集まっている。夏の旅行シーズンに入ると、週次原油在庫とガソリン在庫が注目され、ミシガン州の消費者信頼感指数に対応しそうだ。同指数は2008-09年の最低値に近づいている(最低値は2011年の債務上限問題でもみられ、この調査が他の何よりも政治感情を反映できることを思い起こすものだ)。
4. 2022年第1四半期の決算発表は大詰め
第1四半期決算発表シーズンの大半は終了したが、今週はいくつかの大企業の発表を控え、様々な投資テーマについて読み解くことができるだろう。
DocuSign Inc (NASDAQ:DOCU) は、木曜日の市場取引終了後に決算発表を行う。サービスとしてのソフトウェア(SaaS)としてもてはやされた同社だが、活動の鈍化が警戒される会社の一つとなっている。しかし、投資家はZoom Video Communications Inc (NASDAQ:ZM)やOkta (NASDAQ:OKTA)などでみられた最近の復活に加わることを願っても良いかもしれない。Smartsheet (NYSE:SMAR) (火曜日) と Coupa Software Inc (NASDAQ:COUP) (月曜日)も今週四半期報告を行うソフトウェア企業だ。
JMスマッカー・カンパニー (NYSE:SJM) とキャンベル・スープ (NYSE:CPB) はともに今週の四半期報告で、消費者向け製品のインフレの影響について何らかの洞察を与える可能性がある。同様に、ケーシーズ・ジェネラル・ストアーズ (NASDAQ:CASY) 、ファイブ・ボトム (NASDAQ:FIVE) 、シグネット・ジュエラーズ Ltd (NYSE:SIG)など小売セクターの企業も発表を行い、個人消費と購買意欲に関する別の示唆を与える可能性がある。
このような状況下において、「NIO」(NYSE:NIO)は、中国の電気自動車メーカーが中国でのコロナウイルス関連のロックダウンに苦しみ、52週安値付近で収益を報告することになった。
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5. 大手企業の経済見通し
先週は、JPモルガンのCEOであるジェイミー・ダイモン氏の経済予測(ハリケーン到来を警戒)、イーロン・マスク氏がテスラ社の従業員の10%削減を示唆するメール、コインベース (NASDAQ:COIN) による 採用活動の停止および一部の内定の取り消し発表など、大物の意見や企業発表で盛り上がった。今週はいくつかの投資家会議があり、ダイモン氏が主張したように経済が瀬戸際に立たされているのか、それともゴールドマン・サックス(NYSE:GS)の元CEOロイド・ブランクファイン氏が主張したように「まだ軟着陸できる」か、企業幹部からの意見を聞く機会がたくさんあるだろう。
一方ではさらなる解雇のニュース、他方では金曜日のブリストル・マイヤーズ (NYSE:BMY)スクイブの買収報道のようなM&A関連のニュースというコントラストも、投資家にとって良い材料になるかもしれない。
市場を予想するのは非常に難しい。決して今に始まったことではないが。