執筆:Noreen Burke
Investing.com -- 欧州中央銀行はポルトガルで年次総会を開催し、ラガルド総裁は、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長、イングランド銀行のベイリー総裁とともに水曜日にパネル・ディスカッションに登場する予定である。今年の市場は例外的に乱高下したが、年前半が終わり、投資家は次の6ヶ月で落ち着きを取り戻すのか、それともさらに波乱となるのか、方向感が掴めていない。今週発表を控える経済指標の中には、FRBが注目するインフレ指標であるPCE価格指数のほか、ユーロ圏の最新インフレ・データ、中国のPMIなどがある。週明けに必要な情報は以下の通りだ。
-
シントラでのフォーラム
ここ数十年で最も高いインフレ率に歯止めをかけようとする中央銀行の動きが、世界経済を後退させるのではないかとの懸念が燻る中、ポルトガルのシントラで3日間にわたって開催されるECBフォーラムが月曜日にスタートする。
このフォーラムでは、「急速に変化する世界における金融政策の課題」に焦点が当てられる予定だ。
投資家は、ラガルド総裁、パウエル議長、ベイリー総裁による水曜日のパネル・ディスカッションを注視し、中央銀行のトップがインフレ抑制と世界経済の軟着陸の両立をどのように考えているのかを見極めることになるだろう。
計画されている分断化回避措置の詳細についてのECB当局者のコメントも、注視されることになる。
-
激動の上半期の終了
過去数十年で最も早い利上げサイクル、市場の混乱、インフレに拍車をかけたロシア・ウクライナ戦争と話題が盛りだくさんだった2022年上半期が今週終わり、投資家は下半期はどのような市場環境になるか思案しているところだろう。
S&P500は年初来で約18%下落しており、債券はこれより少しましという程度の状況である。米国債券市場は、バンガード・トータル・ボンド・マーケット・インデックス・ファンド(NASDAQ:BND)は、年初来で10.8%の低下している。
投資家の期待は、高インフレの継続とタカ的なFRBが打ち出す金融引締による景気後退の間で揺れ動いており、市場の変動がすぐに収まることは想像できない。
Principal Global Investorsのチーフ・ストラテジスト、Seema Shah氏はロイターに対し、「インフレ率はまだ上昇しており、それによってFRBは利上げを更に続け、より急速な金融引き締め策が、経済への下押し圧力となり、景気減速入りするのではないかという懸念を強めている」と指摘した。
「経済成長の減速が予想より早く来るという兆候も強まっている。」
-
米国における経済指標
米国では今週、FRBの積極的な利上げサイクルの中で経済がどのように推移しているかを示す、多数の経済指標が発表される。
投資家は木曜日に発表される5月の個人消費支出価格指数のデータを、インフレが冷え込んでいるかどうかを占うものとして注意深く見守ることになる。
エコノミストは、耐久財受注が減速し、消費者信頼感がさらに悪化し、製造業PMIがさらに弱まり、経済の見通しに対する懸念が増すと予測している。
住宅販売保留件数とケースシラー住宅価格指数によって、住宅ローン金利上昇が住宅部門にどの程度打撃を与えているかが分かるだろう。
また、今週はニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁、サンフランシスコのデイリー総裁、クリーブランド連銀のメスター総裁、セントルイス連銀のブラード総裁など複数のFRB当局者が公の場に姿を見せる予定になっている。
先週金曜日、一般的にハト派であるデイリー総裁は、7月のFOMC会合で75bps(0.75%)の利上げを指示すると発言している。
-
ユーロ圏におけるインフレ動向
ユーロ圏は金曜日に6月の消費者物価指数を発表するが、エネルギーと食品コストの高騰が続いているため、前年比で8.3%と過去最高を更新する見込みだ。
ユーロ圏のインフレ率は5月に過去最高の8.1%を記録し、ECBの年間目標値2%の4倍以上となった。
このインフレ・データは、ECBが10年以上ぶりの政策引き締めとなる7月の25bps(0.25%)の利上げを決定した後、より大規模な利上げを行うべきかどうかという議論に拍車をかけることになりそうだ。
水曜日には、スペインとドイツの国内インフレ率が発表される予定である。
一方、インフレ率の上昇とロシア・ウクライナ戦争による経済的影響への懸念が続く中で、同日発表予定のユーロ圏における消費者信頼感指数は引き続き落ち込むと予想されている。
-
中国における経済指標
中国は月曜日に工業利益に関するデータを発表し、その後PMIデータを木曜日と金曜日にそれぞれ発表する予定である。
ポジティブな数値は、落ち込んだ金融市場に希望を与える可能性がある。
ゼロ・コロナ政策に基づくロックダウンと世界経済の減速により、中国では成長の象徴である銅価格が2週間で約10%下落した。
しかし、ロックダウンは緩和され、もし発表される経済指標が成長トレンドへの兆候を示すものとなれば、それは経済と、中国株を欧米を支配するスタグフレーションの恐怖からの避難先とみなす人々にとって歓迎すべきシグナルとなるだろう。
--ロイターの報道をもとに当記事を執筆