[東京 28日 ロイター] - 日銀副総裁候補の内田真一日銀理事は28日、参議院議院運営委員会の所信聴取で、金融緩和を継続して日本経済を支える必要があると表明した。副作用を理由に緩和を見直すのでなく、工夫によっていかに継続するかが課題だと語った。黒田東彦総裁の下で実施してきた「異次元緩和」の点検を実施する場合は、1年から1年半かけて行った海外中銀の事例が参考になるとした。
<出口戦略は「金庫にしまってあるわけではない」、これまでの経験生かす>
内田氏は毎回の金融政策決定会合で行う経済・物価情勢の点検とは別に、大規模緩和政策の点検実施の有無を問われ、他の政策委員会メンバーと議論する必要があるとしつつ、仮に行う場合は米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)の事例が「1つの参考になる」と語った。いずれも1年から1年半かけており、「広い角度で、時間をかけて幅広い点検をしていくほうが新体制には合っている」と述べた。
内田氏は、任期の5年間で2%の物価目標を達成したいと述べた。出口戦略を論じるのは「時期尚早」とし、金利やバランスシートの調整が課題になるが「どういう順番でどういうタイミングでやるかはその時の金融・経済の状況に依存する」と述べた。「何か出口戦略の紙があって、それが日銀の金庫にしまってあるようなイメージで語られることが多いが、そんなことではない」と語った。
内田氏は、今後の政策展開をめぐり技術的なことよりも「難しいのは情勢判断」と指摘し、「必要な情報をタイムリーに政策委員会に伝えたい」と述べた。「実務的に実現可能な政策オプションに努めたい」とも語った。
<12月の変動幅拡大、緩和効果へのマイナス小さい>
内田氏は金融緩和の副作用に言及しつつ、政策を見直せば緩和効果がなくなり日本経済にマイナスの影響が及ぶと説明。緩和の効果と副作用のバランスが重要との見解を繰り返した。
内田氏は長期金利目標の変動幅を拡大すれば事実上の利上げになると話したことがあり、日銀が昨年末の決定会合で変動幅を広げた際に整合性が問われた経緯がある。その点について内田氏は、緩和効果へのマイナス面が昨年春に比べると小さくなっていると説明した。
内田氏は「金利目標の変動幅拡大は、それだけ取り出すと緩和効果が低下する」と指摘しつつ、「昨年1年で(企業と家計の物価見通しである)インフレ予想が上昇しており、同じ名目金利でも緩和効果が上昇している」と述べ、変動幅の拡大でも緩和効果はそがれていないとした。1月に導入した5年物の共通担保オペによって「中期までの金利は昨年12月会合時点以降あまり変化しない状況をキープできている」と強調した。
日銀は現行の金融政策運営で、政策枠組みである「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」、マネタリーベースの拡大方針、政策金利の3つについてそれぞれの継続期間をフォワードガイダンス(先行き指針)で示してきた。内田氏はフォワードガイダンスについて、経済・物価の不確実性がある中で「強いコミットメントをすれば、政策の柔軟性が失われる」と指摘。ただ、現在はいずれも有効に機能していると述べた。
<日銀法、現行規定でも「雇用最大化」読み込める>
内田氏は、物価2%目標を見直すことは考えていないと表明。2013年に策定した政府・日銀の共同声明も直ちに見直す必要はないと述べた。
日本維新の会は日銀法の改正案で、雇用の最大化や名目経済成長率の持続的上昇を日銀の目標に追加するよう求めている。内田氏は法案自体へのコメントは控えるとしたが、現行法でも、物価安定を目指す中で雇用最大化や経済成長が実現していく姿を想定していると述べた。
(和田崇彦、杉山健太郎、竹本能文編集:青山敦子石田仁志)