[ワシントン 23日 ロイター] - ドナルド・コーン元米連邦準備理事会(FRB)副議長らは23日に発表した調査論文で、FRBが2020年に採用した雇用重視の新たな金融政策戦略について、インフレ対応の遅れにつながり、「解決した問題よりも生み出した問題の方が多かったかもしれない」と批判的な見解を示した。
論文は、現在ブルッキングス研究所に所属するコーン氏がブラウン大学の経済学教授ガウティ・エガートソン氏と共同執筆。2020年の新戦略は、新型コロナウイルスのパンデミック前の年月に生じた問題に対処するよう「うまく設計された」部分が多かったと評価しながらも、ちょうど物価が上昇し始めていたタイミングで「インフレバイアス」を生んだと結論付けた。
パウエルFRB議長は、コロナ禍によって大量の失業が発生した同年に新戦略を発表。最大雇用水準からの「逸脱」ではなく、最大雇用水準に比べた雇用の「不足」を政策行動の指針とした点が、従来の枠組みからの重要な変更の1つだった。
論文は、インフレ抑制よりも最大雇用の限界を試すこうした「非対称」アプローチにより、難解な複雑性やバイアスが数多く生み出されたと指摘した。
FRBは結局、急スピードの連続利上げによってインフレに対応することになった。論文は、FRBがインフレを「もっと早く認識し対応して」いれば、より緩やかな政策調整が可能になり、「金融安定に恩恵をもたらした可能性がある」と論じた。