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焦点:久しぶりに不透明なECBの次の一手、経済軟化とインフレ高止まりで

発行済 2023-09-01 10:07
更新済 2023-09-01 10:09
© Reuters.  ECBは9月14日の次回理事会で果たして利上げに動くのか――。過去1年余り、ECBの連続的な利上げを自信たっぷりに織り込んできた市場参加者は今回久しぶりに、ECBの金融

Yoruk Bahceli

[31日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は9月14日の次回理事会で果たして利上げに動くのか――。過去1年余り、ECBの連続的な利上げを自信たっぷりに織り込んできた市場参加者は今回久しぶりに、ECBの金融政策を巡る予想で頭を悩ませることになる。インフレが高止まりしている一方、経済の足取りはおぼつかなくなってきたからだ。

31日に発表されたユーロ圏の8月消費者物価指数(CPI)前年比上昇率は5.3%で、7月から横ばい。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIの上昇率は5.3%と、予想以上に鈍化したものの、ECBが目標とする2%よりはずっと高い。

1週間前に出た企業活動に関する指標はユーロ圏経済の先行きに立ち込める暗雲を示唆しただけに、インフレのしぶとさを物語る8月CPIによって、ECBの次の一手はますます読みにくくなった。

短期金融市場が31日時点で想定する9月14日の25ベーシスポイント(bp)利上げ確率は約30%で、一時60%まで切り上がった先週から低下。トレーダーの見方が揺れ動いている様子がうかがえる。

ダンスケ・バンクのチーフアナリスト、ピエト・クリスチャンセン氏は、経済成長と物価の見通しが相反する動きになっていることが、トレーダーの「優柔不断」の背景にあると解説した。

実際先週の購買担当者景気指数(PMI)で投資家の想定はECBの利上げ休止に傾いたものの、8月CPIによって物価上昇圧力が引き続きユーロ圏で問題になっていることが確認されたのだ。

クリスチャンセン氏は「市場でこのようにバランスを取ろうとする動きが起きている」と述べた。ただ自身は、ECBに課せられた物価安定維持の使命を踏まえ、引き続き次回理事会で25bp利上げがあると見込んでいる。

ECB理事会でタカ派メンバーの1人と目されるシュナーベル専務理事でさえ、31日は確固とした見解を披露するのを控え、経済の弱まりが自動的に追加利上げの妥当性を打ち消すわけではないとだけ指摘した。

別のタカ派メンバー、オーストリア中央銀行のホルツマン総裁は、ECBはあと1回か2回の利上げができると発言している。

<複雑なシナリオ>

利上げ休止を予想する人々から見れば、これまで1年超で実施してきた計425bpに上る利上げの効果が時差を伴ってより顕現化しつつある。

7月の企業向け融資は一段と減速し、ECBの急激な利上げが信用創造と成長を抑制しているという新たな証拠になった。

ユーロ圏の広義の通貨供給量は7月に2010年以降で初めて減少し、いかに金融環境が引き締まっているかを物語る。

ゼネラリ・インベストメンツの債券責任者マウロ・バレ氏は「ECBはインフレを理由に利上げを続けるというシナリオから、金融政策の効果、特にその効果が顕現化する時期をECBが判断するのがより難しくなるという複雑性が高いシナリオにわれわれは移行した」と述べた。

バレ氏によると、景気後退(リセッション)を避けつつ、物価上昇率を押し下げるために金融政策運営の釣り合いを保つことがECBにとって今や一層困難になっているという。

<ラガルド総裁発言が重要>

9月の理事会での政策決定に関して投資家の意見が割れているが、ECBの利上げが近く打ち止めになるというコンセンサスは形成されている。

ピクテ・ウエルス・マネジメントのマクロ経済調査責任者フレデリック・デュクロゼ氏は「新たな利上げが正当化されるとしても、それは『今が最後のチャンスでもう後はない』というケースだ」と話した。

市場にとって9月の理事会は、政策金利動向以上にラガルド総裁の発するメッセージが重要になる。

アビバ・インベスターズの金利責任者エドワード・ハッチングス氏は「利上げサイクルの終わりが間近に迫ってくるのに伴って、(ラガルド氏の)発言内容が(政策金利よりも)はるかに大事な意味を持つ」と強調した。

より長期的な視点に立つと、市場はECBが来年第2・四半期までに利下げを開始するとみている。

ピクテのデュクロゼ氏は「ラガルド氏にとっては、政策金利のピークにおいてタカ派バイアスを維持しながら、市場が拙速に利下げを織り込むのを防ぐという作業が厄介になる」と述べた。

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