Yoshifumi Takemoto Leika Kihara
[東京 4日 ロイター] - 元財務官の渡辺博史・国際通貨研究所理事長は4日、ロイターのインタビューで、日米金利差などから円高に反転する可能性は低いとする一方、円買い介入については、前回2022年当時と比べドル高/円安の速度が緩やかなため155円程度までは実施されないとの見方を示した。円安の背景として、当面は日銀の利上げはないと市場が解釈していることも要因に挙げた。ドルは当面145─155円のレンジで推移するとみている。
<円安要因は日米金利・技術格差>
渡辺氏は日米金利差とドル/円の相関について、金利差が3%ポイント開いている状態であれば為替市場は安定すると説明。金利差が2%ポイント以下なら円高方向、4%ポイント以上で円安方向に動くとし、現状は約4%ポイントであるため「米国が多少利下げし、日銀が利上げしても急激な円高にはならない」との見方を示した。
円安の要因として、3月の金融政策決定会合でマイナス金利解除や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)撤回に踏み切った際、「経済状況に応じて金利を上げ下げする普通の政策に戻ったと説明したつもりだが、マーケットは『当面追加利上げはない』と解釈した」ことを挙げた。
また、日本の企業や政府によるクラウドを含む米国ITサービスの使用料支払いという「日米技術格差もある」と指摘。これらのサービスはドル建てでの支払いとなるためドル買い/円売りの要因にもなり、渡辺氏は「新NISA(少額投資非課税制度による国内個人投資家の海外投資要因より大きい」と述べた。
政府・日銀による円買い介入については「22年ほど急激に円安が進んでいないため」足元の水準では行われないと予想する。一部で報じられている152円が防衛線ということはなく、「きりがよい155円などに急激に円安が進む場合でないと介入しないだろう」とし、「最終的には神田(真人)財務官次第」とも付け加えた。
<日銀の政策修正、「ぎりぎりセーフ」>
日銀の金融政策については「マイナス効果の方が大きいマイナス金利解除は、去年のうちに(市場の)金利動向にかかわらず実施すべきだった」と指摘。「金利(引き上げ)をどうするかは別に(判断)すればいいと思っていたが、(マイナス金利解除が)遅れたため今回まとめて(緩和修正を)したのだろう。ぎりぎりセーフかなという感じだ」と評した。
追加利上げの可能性については「マーケットでは、年内7月か10月にあるだろうとの見方が多い」と述べるにとどめた。
世界経済は欧州、中国が減速基調にあり、先行き不透明感が増している。渡辺氏は「(リーマンショックのあった)08─09年ほど急激な経済ショックは起きないだろう」としつつ、米中対立やインドの覇権志向などにより世界経済悪化に対する国際連携で「対応力は今回のほうが落ちている」と懸念を示した。
岸田文雄政権が進める賃上げ方針については「物価上昇の効果を相殺するために賃上げが必要だが、将来の日本経済を考えると付加価値が上がることが重要」とも指摘した。