■事業の概要
1. 全体像
三井化学 (T:4183)は東洋高圧工業(株)に始まる石炭化学の流れと、三井石油化学工業に始まる石油化学の流れとを併せ持つ総合化学企業だ。
“化学産業”というのは化学というプロセスに基づいた分類であり、化学プロセスから生み出される製品は川上の合成樹脂から川下の医薬品や化粧品、衣料品原料など極めて広範囲にわたっている。
同社自身も川上から川下まで幅広い製品ラインナップを有している。
同社は時代やユーザーの変化などに対応して事業セグメントを何度か変更してきたが、2017年3月期からは新たに、モビリティ、ヘルスケア、フード&パッケージング、基盤素材の4セグメントで事業を展開している。
このセグメント分類は市場に視点を置いたものとなっている。
市場が同じ、もしくは近縁のものを統括して事業を展開したほうがシナジーの追求につながるとの判断が働いたと思われる。
自動車・ICT関連領域で多様な製品をグローバル展開。
ソリューション提案力の強化に注力中
2. モビリティ
モビリティは自動車を中心にあらゆる移動手段を「モビリティ」と定義し、その領域を対象とする事業・製品の集合体だ。
世界・アジア市場で高シェアを有して高い存在感を示す製品が多いのが特徴だ。
モビリティは、エラストマー、機能性コンパウンド、海外PPコンパウンド、機能性ポリマーの4つで構成されている。
自動車業界への拡販では、開発段階から関与することが非常に重要になってくる。
そのためにはソリューション提案力が不可欠だ。
その具体的アクションとして自動車業界への開発支援で強みを持つアークを2018年1月に子会社化するとともに、実効的に機能させるための新組織として「ソリューション事業管理室」を2018年4月にスタートさせた。
製品群別売上構成比は、海外PP(ポリプロピレン)コンパウンドが最も大きく、エラストマー、機能性コンパウンド、機能性ポリマーと続く。
最大構成比を占める海外PPコンパウンドは、主な用途が自動車のバンパーだ。
“海外”というのは米国を主体に、アジア、欧州など日本以外の市場で、日系メーカー及び海外メーカーに供給していることを表している(日本国内の自動車工場に対しては、国内工場からPPコンパウンドを供給しており、それは基盤素材セグメントに属している)。
売上高の地域別内訳は、北米が40%と最も多くなっているが、日本、中国、アジアを合計したアジア全体で50%を占めている。
機能性コンパウンドやエラストマーは地域的に日米欧アジアの各自動車工場にバランスよく販売されているとみられる。
自動車業界の地理的勢力分布に照らすと、現状は欧州の構成比が相対的に低いが、今後は次第に上昇してくるとみられる。
同社は2018年5月に、オランダ国内に年産3万トンのPPコンパウンド工場の建設を発表した(2020年6月稼働予定)。
これは同社にとっての初の欧州自社工場となるが、これを第1歩として今後も欧州域での事業強化に取り組んで行くと予想される(詳細は後述)。
ビジョンケア材料、不織布、歯科材料の3つの事業ドメインで構成。
高機能・高シェア製品を数多く抱えてグローバルに展開
3. ヘルスケア
同社のヘルスケアは、製品別ではビジョンケア材料、不織布、歯科材料の3つの事業ドメインが中核となっており、これらの3製品群合計でヘルスケア事業セグメント売上高の約90%を占めている。
市場としては、ビジョンケア材料はメガネレンズ市場、不織布は紙おむつ市場、歯科材料は歯科治療市場、という対応関係にある。
ヘルスケアセグメントも高シェアを握る製品が多いことが特徴だ。
ビジョンケア材料はメガネのプラスチックレンズ材料だが、世界シェア45%を占めている。
不織布では同社は日本メーカー製プレミアム紙おむつ向けに的を絞って展開しており、そこでは50%のシェアを有している。
歯科材料では、同社は国内の歯科用接着剤市場で高シェアを獲得してきたが、2013年には米DENTCA(デンカ)と世界第6位の独Heraeus Kulzerを相次いで買収し歯科材料市場に本格進出した。
2017年からはブランドをKulzerに改めグローバルに展開している。
2018年4月にはデジタル化への対応力強化を目的に米国の3DプリンタメーカーB9Creations(以下、B9C)の株式を取得(30.74%)した(詳細は後述)。
売上高の地域別内訳は、日本、アジア、欧米が約3分の1ずつというバランスの取れた構成になっている。
不織布を日本、中国、タイの3ヶ国で生産しているほか、ビジョンケア材料も日本、韓国、中国の3ヶ国で生産してグローバルで販売している。
また、歯科材料はKulzerが北米と欧州を中心に世界6位のシェアを有しており、これをベースとしてアジア市場でのシェア拡大に取り組んでいる。
こうした点が売上高の地域別構成に反映されていると言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
1. 全体像
三井化学 (T:4183)は東洋高圧工業(株)に始まる石炭化学の流れと、三井石油化学工業に始まる石油化学の流れとを併せ持つ総合化学企業だ。
“化学産業”というのは化学というプロセスに基づいた分類であり、化学プロセスから生み出される製品は川上の合成樹脂から川下の医薬品や化粧品、衣料品原料など極めて広範囲にわたっている。
同社自身も川上から川下まで幅広い製品ラインナップを有している。
同社は時代やユーザーの変化などに対応して事業セグメントを何度か変更してきたが、2017年3月期からは新たに、モビリティ、ヘルスケア、フード&パッケージング、基盤素材の4セグメントで事業を展開している。
このセグメント分類は市場に視点を置いたものとなっている。
市場が同じ、もしくは近縁のものを統括して事業を展開したほうがシナジーの追求につながるとの判断が働いたと思われる。
自動車・ICT関連領域で多様な製品をグローバル展開。
ソリューション提案力の強化に注力中
2. モビリティ
モビリティは自動車を中心にあらゆる移動手段を「モビリティ」と定義し、その領域を対象とする事業・製品の集合体だ。
世界・アジア市場で高シェアを有して高い存在感を示す製品が多いのが特徴だ。
モビリティは、エラストマー、機能性コンパウンド、海外PPコンパウンド、機能性ポリマーの4つで構成されている。
自動車業界への拡販では、開発段階から関与することが非常に重要になってくる。
そのためにはソリューション提案力が不可欠だ。
その具体的アクションとして自動車業界への開発支援で強みを持つアークを2018年1月に子会社化するとともに、実効的に機能させるための新組織として「ソリューション事業管理室」を2018年4月にスタートさせた。
製品群別売上構成比は、海外PP(ポリプロピレン)コンパウンドが最も大きく、エラストマー、機能性コンパウンド、機能性ポリマーと続く。
最大構成比を占める海外PPコンパウンドは、主な用途が自動車のバンパーだ。
“海外”というのは米国を主体に、アジア、欧州など日本以外の市場で、日系メーカー及び海外メーカーに供給していることを表している(日本国内の自動車工場に対しては、国内工場からPPコンパウンドを供給しており、それは基盤素材セグメントに属している)。
売上高の地域別内訳は、北米が40%と最も多くなっているが、日本、中国、アジアを合計したアジア全体で50%を占めている。
機能性コンパウンドやエラストマーは地域的に日米欧アジアの各自動車工場にバランスよく販売されているとみられる。
自動車業界の地理的勢力分布に照らすと、現状は欧州の構成比が相対的に低いが、今後は次第に上昇してくるとみられる。
同社は2018年5月に、オランダ国内に年産3万トンのPPコンパウンド工場の建設を発表した(2020年6月稼働予定)。
これは同社にとっての初の欧州自社工場となるが、これを第1歩として今後も欧州域での事業強化に取り組んで行くと予想される(詳細は後述)。
ビジョンケア材料、不織布、歯科材料の3つの事業ドメインで構成。
高機能・高シェア製品を数多く抱えてグローバルに展開
3. ヘルスケア
同社のヘルスケアは、製品別ではビジョンケア材料、不織布、歯科材料の3つの事業ドメインが中核となっており、これらの3製品群合計でヘルスケア事業セグメント売上高の約90%を占めている。
市場としては、ビジョンケア材料はメガネレンズ市場、不織布は紙おむつ市場、歯科材料は歯科治療市場、という対応関係にある。
ヘルスケアセグメントも高シェアを握る製品が多いことが特徴だ。
ビジョンケア材料はメガネのプラスチックレンズ材料だが、世界シェア45%を占めている。
不織布では同社は日本メーカー製プレミアム紙おむつ向けに的を絞って展開しており、そこでは50%のシェアを有している。
歯科材料では、同社は国内の歯科用接着剤市場で高シェアを獲得してきたが、2013年には米DENTCA(デンカ)と世界第6位の独Heraeus Kulzerを相次いで買収し歯科材料市場に本格進出した。
2017年からはブランドをKulzerに改めグローバルに展開している。
2018年4月にはデジタル化への対応力強化を目的に米国の3DプリンタメーカーB9Creations(以下、B9C)の株式を取得(30.74%)した(詳細は後述)。
売上高の地域別内訳は、日本、アジア、欧米が約3分の1ずつというバランスの取れた構成になっている。
不織布を日本、中国、タイの3ヶ国で生産しているほか、ビジョンケア材料も日本、韓国、中国の3ヶ国で生産してグローバルで販売している。
また、歯科材料はKulzerが北米と欧州を中心に世界6位のシェアを有しており、これをベースとしてアジア市場でのシェア拡大に取り組んでいる。
こうした点が売上高の地域別構成に反映されていると言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)