■業績の動向
1. 2018年3月期決算の概要
三井化学 (T:4183)の2018年3月期決算は、売上高1,328,526百万円(前期比9.6%増)、営業利益103,491百万円(同1.3%増)、経常利益110,205百万円(同13.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益71,585百万円(同10.4%増)と、増収増益で着地した。
同社は四半期決算毎に通期見通しを上方修正したが、第3四半期時点での修正予想に対しては、売上高と営業利益が若干未達となったものの、経常利益は上回った。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失により未達幅が拡大したが、前期比では増益を確保した。
売上高についてはモビリティ以下の成長3領域において、全般に需要が堅調に推移し、3領域共に前期比増収を確保した。
また基盤素材セグメントも、国内の堅調な需要や一部の低迷していた化学品の海外市況回復などにより増収となった。
利益面では、営業利益が前期比14億円の増益となったが、これを数量差、交易条件、固定費他の3要因に分解すると、数量差が91億円の増益要因、交易条件が20億円の増益要因、固定費他が97億円の減益要因という内訳となる。
数量差については、各セグメントにおいて全般に需要が好調だったことが寄与した。
交易条件については、原料(原油、ナフサ等)価格上昇や為替レートの円安進行という環境のなか、それに対する利益変動性によってセグメント間で明暗が分かれたものの、全社ベースではプラス影響となった。
固定費他については、積極的な研究開発費の投入やプラントの大規模定修の費用により、マイナス影響となった。
経常利益の増益率が営業利益のそれを上回ったのは、営業外収益において持分法投資利益が2017年3月期の208百万円から2018年3月期は7,063百万円に大きく改善したことが大きな要因を占めている。
また、金融収支の改善や受取保険金なども営業外収益を押し上げた。
特別損益においては、第4四半期に約150億円の減損損失を特別損失に計上した。
このうち約143億円は、2014年3月期に実施した歯科材料事業を担うKulzerの買収にかかるのれん等の無形資産だ。
こうした一時的要因をこなして、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比10.4%増と2ケタ増益を確保した。
各セグメントとも堅調な需要により販売数量を順調に拡大。
その一方で、成長投資も着実に実施
2. セグメント別動向
(1) モビリティ
モビリティは売上高3,310億円(前期比377億円増)、営業利益423億円(同16億円増)と増収増益で着地した。
売上高増収の内訳は、数量差が228億円、価格差が149億円だった。
エラストマーや海外PPコンパウンド、機能性コンパウンドは、自動車生産がグローバルで堅調だったことで販売を伸ばした。
機能性ポリマーはICT(情報通信技術)関連用途を中心に販売が伸長した。
利益面では、増収を反映して数量差がプラスとなったほか、為替が前期比円安で推移したことで交易条件もプラス寄与となった。
固定費他については研究開発費の積極的な投入により、マイナス寄与となり、セグメントの営業利益は前期比16億円の増益となった。
同社は2018年1月にアークを子会社化した。
アークは自動車向けを中心に開発支援サービス(デザイン、設計・解析、試作・評価等をトータルでサポート)を提供する国内最大手企業であることに鑑み、同社の事業をソリューション事業としてモビリティの中に取り込んだ。
アークの連結は第4四半期途中からであり、2018年3月期は若干のプラス寄与となった。
(2) ヘルスケア
ヘルスケアは売上高1,391億円(前期比49億円増)、営業利益108億円(同7億円増)と、増収増益で着地した。
増収の内訳は数量差が43億円、価格差が6億円となった。
これはヘルスケアの製品は川下に近い製品が多いことを反映している。
製品分野別では、ビジョンケア材料は世界トップシェアを有することもあり、堅調に推移した。
不織布はプレミアム紙おむつの需要増大を背景に売上げを伸ばした。
歯科材料は主としてドイツで販売が減少した。
利益面では、ビジョンケア材料と不織布の販売増で数量差がプラスとなった。
交易条件は、不織布で原料価格上昇の影響があったものの、ビジョンケア材料や歯科材料は堅調に推移し、トータルではプラス影響となった。
固定費他は研究開発費などによりマイナス影響となった。
これらの結果、営業利益は7億円の増益となった。
(3) フード&パッケージング
フード&パッケージングは売上高1,958億円(前期比133億円増)、営業利益199億円(同7億円減)と、増収減益となった。
増収の内訳は数量差が78億円、価格差が55億円だった。
コーティング・機能材は様々な工業用途向けに販売を伸ばした。
機能性フィルム・シートは、包装用フィルムが食品用高機能分野に、産業用フィルム・シートが電子材料用などに堅調に伸びた。
農薬は海外を中心に販売が堅調に推移した。
利益面では、全般に販売数量を伸ばしたことを反映して数量差はプラス寄与となった。
しかしながら、コーティング・機能材や機能性フィルム・シートが原料価格上昇の影響を受け、交易条件はマイナス寄与となった。
固定費他は研究開発費の投入でマイナス寄与となった。
これらの結果、営業利益は前期比7億円の減益となった。
(4) 基盤素材
基盤素材は、売上高6,377億円(前期比721億円増)、営業利益389億円(同4億円増)と、増収増益となった。
増収の内訳は数量差134億円、価格差587億円となった。
価格差が拡大したのは、原料ナフサの上昇により一部製品が値上がりしたことや、一部化学品の海外市況上昇による。
同社は国内の石化プラントで生産する製品の約80%を国内で消費・販売しているが、堅調な国内需要を背景に主力製品のポリエチレンやポリプリピレンが販売を伸ばした。
この結果、ナフサクラッカーの稼働率も前期並みの高水準を維持した。
利益面では、数量差は大規模定修によりマイナス寄与となったが、交易条件は市況の改善により大幅なプラス寄与となった。
固定費他は市原工場の大規模定修の費用増によりマイナス寄与となった。
製品別では、主力化学品の1つであるフェノールが、海外市況の上昇と事業構造改革の効果で損益が好転した。
これらの結果、営業利益は前期比4億円の増益となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
1. 2018年3月期決算の概要
三井化学 (T:4183)の2018年3月期決算は、売上高1,328,526百万円(前期比9.6%増)、営業利益103,491百万円(同1.3%増)、経常利益110,205百万円(同13.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益71,585百万円(同10.4%増)と、増収増益で着地した。
同社は四半期決算毎に通期見通しを上方修正したが、第3四半期時点での修正予想に対しては、売上高と営業利益が若干未達となったものの、経常利益は上回った。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失により未達幅が拡大したが、前期比では増益を確保した。
売上高についてはモビリティ以下の成長3領域において、全般に需要が堅調に推移し、3領域共に前期比増収を確保した。
また基盤素材セグメントも、国内の堅調な需要や一部の低迷していた化学品の海外市況回復などにより増収となった。
利益面では、営業利益が前期比14億円の増益となったが、これを数量差、交易条件、固定費他の3要因に分解すると、数量差が91億円の増益要因、交易条件が20億円の増益要因、固定費他が97億円の減益要因という内訳となる。
数量差については、各セグメントにおいて全般に需要が好調だったことが寄与した。
交易条件については、原料(原油、ナフサ等)価格上昇や為替レートの円安進行という環境のなか、それに対する利益変動性によってセグメント間で明暗が分かれたものの、全社ベースではプラス影響となった。
固定費他については、積極的な研究開発費の投入やプラントの大規模定修の費用により、マイナス影響となった。
経常利益の増益率が営業利益のそれを上回ったのは、営業外収益において持分法投資利益が2017年3月期の208百万円から2018年3月期は7,063百万円に大きく改善したことが大きな要因を占めている。
また、金融収支の改善や受取保険金なども営業外収益を押し上げた。
特別損益においては、第4四半期に約150億円の減損損失を特別損失に計上した。
このうち約143億円は、2014年3月期に実施した歯科材料事業を担うKulzerの買収にかかるのれん等の無形資産だ。
こうした一時的要因をこなして、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比10.4%増と2ケタ増益を確保した。
各セグメントとも堅調な需要により販売数量を順調に拡大。
その一方で、成長投資も着実に実施
2. セグメント別動向
(1) モビリティ
モビリティは売上高3,310億円(前期比377億円増)、営業利益423億円(同16億円増)と増収増益で着地した。
売上高増収の内訳は、数量差が228億円、価格差が149億円だった。
エラストマーや海外PPコンパウンド、機能性コンパウンドは、自動車生産がグローバルで堅調だったことで販売を伸ばした。
機能性ポリマーはICT(情報通信技術)関連用途を中心に販売が伸長した。
利益面では、増収を反映して数量差がプラスとなったほか、為替が前期比円安で推移したことで交易条件もプラス寄与となった。
固定費他については研究開発費の積極的な投入により、マイナス寄与となり、セグメントの営業利益は前期比16億円の増益となった。
同社は2018年1月にアークを子会社化した。
アークは自動車向けを中心に開発支援サービス(デザイン、設計・解析、試作・評価等をトータルでサポート)を提供する国内最大手企業であることに鑑み、同社の事業をソリューション事業としてモビリティの中に取り込んだ。
アークの連結は第4四半期途中からであり、2018年3月期は若干のプラス寄与となった。
(2) ヘルスケア
ヘルスケアは売上高1,391億円(前期比49億円増)、営業利益108億円(同7億円増)と、増収増益で着地した。
増収の内訳は数量差が43億円、価格差が6億円となった。
これはヘルスケアの製品は川下に近い製品が多いことを反映している。
製品分野別では、ビジョンケア材料は世界トップシェアを有することもあり、堅調に推移した。
不織布はプレミアム紙おむつの需要増大を背景に売上げを伸ばした。
歯科材料は主としてドイツで販売が減少した。
利益面では、ビジョンケア材料と不織布の販売増で数量差がプラスとなった。
交易条件は、不織布で原料価格上昇の影響があったものの、ビジョンケア材料や歯科材料は堅調に推移し、トータルではプラス影響となった。
固定費他は研究開発費などによりマイナス影響となった。
これらの結果、営業利益は7億円の増益となった。
(3) フード&パッケージング
フード&パッケージングは売上高1,958億円(前期比133億円増)、営業利益199億円(同7億円減)と、増収減益となった。
増収の内訳は数量差が78億円、価格差が55億円だった。
コーティング・機能材は様々な工業用途向けに販売を伸ばした。
機能性フィルム・シートは、包装用フィルムが食品用高機能分野に、産業用フィルム・シートが電子材料用などに堅調に伸びた。
農薬は海外を中心に販売が堅調に推移した。
利益面では、全般に販売数量を伸ばしたことを反映して数量差はプラス寄与となった。
しかしながら、コーティング・機能材や機能性フィルム・シートが原料価格上昇の影響を受け、交易条件はマイナス寄与となった。
固定費他は研究開発費の投入でマイナス寄与となった。
これらの結果、営業利益は前期比7億円の減益となった。
(4) 基盤素材
基盤素材は、売上高6,377億円(前期比721億円増)、営業利益389億円(同4億円増)と、増収増益となった。
増収の内訳は数量差134億円、価格差587億円となった。
価格差が拡大したのは、原料ナフサの上昇により一部製品が値上がりしたことや、一部化学品の海外市況上昇による。
同社は国内の石化プラントで生産する製品の約80%を国内で消費・販売しているが、堅調な国内需要を背景に主力製品のポリエチレンやポリプリピレンが販売を伸ばした。
この結果、ナフサクラッカーの稼働率も前期並みの高水準を維持した。
利益面では、数量差は大規模定修によりマイナス寄与となったが、交易条件は市況の改善により大幅なプラス寄与となった。
固定費他は市原工場の大規模定修の費用増によりマイナス寄与となった。
製品別では、主力化学品の1つであるフェノールが、海外市況の上昇と事業構造改革の効果で損益が好転した。
これらの結果、営業利益は前期比4億円の増益となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)