アメリカの連邦準備理事会(FRB)の追加利下げは、ほぼ織り込まれたようです。
足元の経済指標に低調な内容が目立ち、予防的な緩和措置は避けられないとの見方が広がっているためです。
政策決定を受け、ドル売り基調はさらに強まるでしょうか。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が算出するFEDウォッチによると、FRBが10月29-30日に開催する連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げに踏み切る可能性は90%に達しています。
ブラックアウト期間に入る前のタイミングですでに織り込まれたもようで、3会合連続の政策金利引き下げを確実視。
今年最後となる12月10-11日の会合でも緩和の継続が見込まれています。
10月に入ってからの経済指標をみると、4日の雇用統計は底堅さが目立ちました。
9月非農業部門雇用者数と同平均時給が市場の想定を下回った半面、失業率が1969年以来50年ぶりの水準に低下したことを市場は好感。
パウエルFRB議長がその後の講演などで米経済を良好としたほか、それほどハト派寄りでない見解を示したため、大幅利下げ観測の後退でドルは値を戻す場面もありました。
しかし、16日の小売売上高が打撃となりました。
7カ月ぶりのマイナスとなり、個人消費の弱さが露呈したためです。
雇用統計前に発表されたサプライマネジメント協会(ISM)の製造業・非製造業景気指数の下振れも想起され、大幅利下げへの思惑が再び広がりました。
米中貿易協議や英国の欧州連合(EU)離脱などへの懸念が弱まったことで円売りがドルを押し上げていますが、利下げ観測が重石となっています。
FOMCメンバー内には強気な見方もあるため引き下げ幅50bpは想定しにくいものの、10月の政策決定を経ないうちに12月の会合での4会合連続利下げの観測が広がり始めています。
FEDウォッチでは、25bpの引き下げ予想はすでに7割へ到達。
当局者が主張しているように、今後発表される経済指標の内容次第で変わる可能性はありますが、それにしても織り込みが早いとの印象を受けます。
その背景にあるのは、FOMCによる財務省短期証券(TB)の買い入れ増額です。
2017年から縮小してきたバランスシートを再び拡大する方針を、FOMCは今月に入り全会一致で決めました。
それについて、当局者は長期金利の水準への影響は限定的なので金融緩和ではないとみているようです。
が、マネー供給の点では緩和的なスタンスに転じたと市場に受け取られても仕方はありません。
ところで、10月30-31日の日銀金融政策決定会合も、今回は比較的関心が集まっています。
9月の会合で追加緩和に前向きな姿勢を示し、マイナス金利の深掘りなどへの思惑が広がったためです。
ただ、政策手段が限られるなか、8月から9月にかけてみられた円高は収束しており、日銀は現行の金融政策を据え置く公算です。
それにより、長期金利の上昇・円高が見込まれます。
以上の点を踏まえると、10月末から11月にかけてのドル・円はクロス円の上昇にサポートされる可能性はあるものの、ある程度のドル安・円高は避けられないでしょう。
(吉池 威)※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。