「下は大火事、上は大水、なーんだ?」と聞く謎々は、昭和世代のシニアにはお馴染みだろう。答えの「お風呂」も、たちまち口に出るはずだ。下の風呂釜で薪を燃やし上の風呂桶に張った水を沸かす五右衛門風呂スタイルである。しかし今時の「お風呂」は、ほとんどがガス釜の外置き型で浴槽と横並びとなっているから、若年世代が、五右衛門風呂をほとんど目にすることもなく見当が付きにくく答も間違いとなる。そこで兜町流に頭をフル回転させて謎解きした結果、正解の一つに導き出されたのが、欧米同時株安である。
米国、EU(欧州連合)で資源価格の高騰やサプライチェーンの混乱で消費者物価が急上昇し、インフレ抑制のための金融引き締め策が加速し、リセンション(景気後退)懸念を強め、下も上も揃って株価が急落しているからだ。EUは、今年9月に政策金利を引き上げ、米国では、今週14日~15日開催のFOMC(公開市場委員会)での引き上げ幅が、0.75%に拡大するとの観測まで出て、前週末10日にダウ工業株30種平均(NYダウ)が、880ドル安と大幅続落した。
日本でも値上げラッシュが続き消費者物価、企業物価とも上昇中で、物価問題が参議院選挙の争点として政治問題化しそうである。日本銀行は、欧米の中央銀行と異なり独り異次元金融緩和を続けており、その黒田東彦総裁が、値上げラッシュに対して講演会で「家計の値上げ許容度は高まっている」と口走り、慌てて取り消し、謝罪した。黒田総裁流にいえば、週明けの東京市場は、欧米株安への許容度が高まっているのかが問われることになる。そこで今週の当特集では、株安許容度を高めている、あるいは許容度を高めざるを得ない銘柄にアプローチしてみることにした。浮上するのは、今年4月に実施された東証の市場区分再編の関連銘柄である。
この市場再編銘柄が、浮上するキッカケとなったのはメルカリ<4385>(東証プライム)である。同社株は、5月31日に東証グロース市場から東証プライム市場への上場が承認され、株価は、窓を開けて200円超高し、その後の6月7日の上場日を挟み高値波乱となっているが、TOPIX(東証株価指数)に組み入れられる今年7月末までになお一山も二山もの需給相場があるとの見方が有力である。マーケットでは、すでに大手証券がスクリーニングした候補銘柄を中心に「第2のメルカリ」探しも始まった。昨年7月以来、第一次判定でメルカリのグロース市場上場が決まり、市場再編関連株への熱気が急速に消失したのとは様変わりである。
ところが注目したいのは、この「第2のメルカリ」ではない。今年1月11日に東証が、上場基準には不適合だが、適合計画書を作成・提出して経過措置としてプライム市場の上場が承認した296社である。このいわば仮免許のプライム市場銘柄は、その後、適合計画書の進捗状況を公表している。
当初の計画書と同様に上場基準に不適合のままの会社が多い一方、例えば四電工<1939>(東証プライム)は、株式分割や増配、さらに金融機関の保有株の市場放出を実現、不適合となっていた1日平均売買代金を適合させた。またスタンダード銘柄だが、流通株式比率が16.7%と上場基準の25%に不適合だった近鉄百貨店<8244>(東証スタンダード)のように、政策保有株売却を働き掛け、合意した一部株式売却による需給悪化回避の一時的な受け皿となる株式需給緩衝信託を設定したケースもある。
仮免銘柄は、株式公開買い付け(TOB)で上場廃止となったソウルドアウトと、目下TOB中の日水製薬<4550>(東証プライム)を除外すると294社となる。そのなかでターゲットとして絞りたいのは、足元の5月、6月に年初来高値を更新した割安20銘柄である。上場基準のクリアに向けてさらなる株高モチベーションも働くと期待され順張り余地が想定されるからで、順張りに一考余地がある。一方、これと別に年初来高値水準にあってPER水準が割高で「やや難あり」、「少々キズあり」の銘柄のうち、「水準より変化率」の意外株発掘の投資アノマリーにマッチする外食4銘柄は、同じ順張り対応ながら番外銘柄としてマークしてみたい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)