Tom Westbrook
[シンガポール 3日 ロイター] - 海外銀行がシンガポールドル建ての債券発行を増やしている。魅力的な為替スワップや潤沢な資金を保有する投資家の存在が背景だ。関係者は今後も発行増加が続くと予想している。
LSEG(ロンドン証券取引所グループ)のデータによると、今年シンガポールドル建てで販売された銀行のティア2(補完的自己資本)債は24億ドル。過去最高だった昨年の26億ドルに迫っており、2年連続で過去最高を記録する勢いだ。
発行体にとって魅力的なのは、ドルよりも低い基準金利と、調達した資金をドルに転換すればさらに有利な条件が得られる為替フォワード・スワップだ。
DBS銀行のマネジングディレクター、クリフォード・リー氏は「この市場は(現時点で条件が良く)理にかなっている。海外の発行体から問い合わせが増えている」と指摘した。
投資家にとっても、シンガポールドル建て預金金利やシンガポール国債利回りをはるかに上回る5%を超える利回りは魅力的だ。
HSBCは先月、ポンド建てで期間8年、表面利率6.8%の債券を発行し、10億ポンド(12億ドル)を調達したが、シンガポールでは期間10年半、表面利率5.3%で6億7500万シンガポールドル(4億9000万ドル)を調達できた。
みずほ銀行(シンガポール)の経済担当トップ、ビシュヌ・バラサン氏は「シンガポールには利回りを求める流動性が大量にあるようだ。このため、供給にも弾みがつく可能性がある」と述べた。
クレディ・アグリコルとロイズも先月、シンガポールで債券を発行し、総額8億5000万シンガポールドルを調達。
保険のAIAも先月、シンガポールで初めて公募債を起債し、5億5000万シンガポールドルを調達した。
海外の債券市場では売りが膨らんでいるが、この3社の債券は全て堅調に推移しており、見通しが良好であることを示唆している。