(ブルームバーグ): 東京オリンピック・パラリンピック開幕まで5カ月を切った。新型コロナウイルスの潜伏期間で言い換えれば、6-10サイクルに相当する。主催者側は五輪開催へのリスクはないと主張しているものの、国内での急速な感染拡大は既に五輪開催に影を落としつつある。
政府の感染対策に批判的な人々は、世界中から訪れる観客や選手、コーチらを迎え入れる準備ができているのかどうか疑問視している。国際オリンピック委員会(IOC)と安倍晋三首相は、7月24日に開幕予定の五輪は予定通り実施すると表明しているが、アナリストらは中止または延期となった場合の経済的・政治的影響について予測し始めている。
観光客約200万人の訪日を想定した場合、五輪が中止されれば、2020年7-9月期の国内総生産(GDP)伸び率を約0.2ポイント押し下げる可能性があり、有権者が安倍政権の新型コロナウイルス対策を非難する事態となれば、五輪中止の国内政局への影響は長引くと、シティグループ証券はみている。村嶋帰一、相羽勝彦両エコノミストは、五輪中止の可能性についての顧客からの問い合わせが増加していることを踏まえ調査リポートを発表したという。
両氏は五輪中止につながりかねない感染拡大による経済的影響に関しては、控えめな試算だとしている。オックスフォード・エコノミクスは、国際的な健康被害が世界のGDPを1兆ドル(約110兆円)余り吹き飛ばし得るとみている。
日本の19年10-12月期の実質GDP速報値は前期比年率で6.3%減と、5四半期ぶりにマイナス成長となり、リセッション(景気後退)への懸念は既に高まりつつある。
東京五輪には巨額の資金が投じられており、IOCが同五輪を中止する可能性はなお極めて低い。
トランプ米大統領は26日のホワイトハウスでの会見で、「日本では多くの感染者が出ているが、大変プロフェッショナルな対応が行われていると聞いている」と述べ、「非常にうまく対応してくれると思う」との見方を示した。
IOCのディック・パウンド委員が今週、五輪に関して中止ないし延期されるかどうかの判断を示す期限は5月後半になりそうだとの見解を示したことについて、橋本聖子五輪担当相は「IOCとしての公式見解ではないと説明があった。大会が開催できるように準備に取り組む」と述べた。
一部の専門家は夏期の気温上昇でウイルス感染が抑制されると考えている。ただ、今後数カ月以内に感染拡大が収束したとしても、五輪への影響は残る可能性がある。
現時点では、海外から観客が日本を訪問できるかどうかも分からない。政府と企業による渡航制限でアジア域内の旅行は劇的に減少している。中国は海外団体旅行を禁止し、米国が日本への渡航に関して注意レベルを引き上げたほか、イスラエルは日本への不必要な渡航を取りやめるよう自国民に呼び掛けている。
原題:Virus’s Spread Puts a Question Mark Over Tokyo Olympics (1)(抜粋)
--取材協力:野原良明、Tracy Alloway.
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