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アングル:水巡る「格差」に怒り広がる、干ばつ深刻化のメキシコ

発行済 2022-06-19 08:06
更新済 2022-06-19 08:10
© Reuters.  メキシコの60%近くに影響を及ぼしている干ばつは、モンテレイにも深刻な打撃を与えている。家庭での水道利用も制限されていることで水利権を巡る怒りが高まっており、飲料メーカ

[モンテレイ(メキシコ) 13日 トムソン・ロイター財団] - ハイメ・ノヨラさん(57)は、メキシコ工業の中心地であるモンテレイに近い質素な住宅で暮らしている。屋内は息苦しいほどの暑さだが、キッチンの蛇口からグラスに水を注いで渇きを癒やすことはできない。このあたりでは、1日12時間も断水しているからだ。

メキシコの60%近くに影響を及ぼしている干ばつは、モンテレイにも深刻な打撃を与えている。家庭での水道利用も制限されていることで水利権を巡る怒りが高まっており、飲料メーカーを含む企業には、ほとんど無制限の供給が認められているとの批判もある。

「以前なら、いつでも水道の水を飲んでいた。だが今は企業の言いなりになって、彼らが販売する水を買う以外に選択肢がない」とノヨラさんは言う。活動家のノヨラさんは4月、ヌエボレオン州の人権委員会に、州当局が住民に対する水の供給を怠っていると告発する申し立てを行った。

「私たちの水を守らなければならない。自分自身の命が掛かっているのだから」とノヨラさんはトムソン・ロイター財団に語った。

ノヨラさんは、自宅に近い井戸から水を採取している有力飲料メーカーから水を買わなければならないというのは皮肉な話だ、と語る。今年初めに時限断水が始まって以来、ノヨラさんはボトリング工場での数多くの抗議行動に参加してきた。

メキシコ北部に位置するヌエボレオン州の水道当局は2月、同州に飲料水を供給している3つの貯水池の水位が低すぎて春・夏の期間を乗り切れないため、毎日朝6時から夕方6時まで家庭への給水を停止する時限断水に至ったと説明した。

干ばつが長引く中で、低所得層が暮らすモンテレイ市外縁部の丘陵地帯を中心に、市内の一部地域の住民は、断水が何日も続くことがあると証言している。

今月初め、家内労働者のマリア・フアレスさんは、「先週はまったく水道が使えなかった。一滴も水が出ない」と語った。自宅の裏庭に立つフアレスさんの周りにはプラスチック製のバケツが並んでおり、機会があればいつでも水を汲みにいくという。

<「危機的状況」>

気候変動により、世界各地で干ばつの深刻さ、頻度が増している。水不足に悩むメキシコも例外ではなく、首都メキシコ市の貧困地域を含め、多くの地域では清浄な飲料水の不足は長年の課題だ。

また、メキシコ国内の水資源の利用を誰に認めるべきかという点についても対立が激化している。

2020年、米国のアルコール飲料メーカー、コンステレーション・ブランズは、メキシコ北部国境に近いメキシカリ市に総工費10億ドル(約1343億円)の工場を建設する計画を撤回せざるをえなくなった。地元での住民投票により、計画が拒絶されたためだ。

3月には、メキシコ中東部プエブラ州にある仏ダノン所有の水ボトリング工場を抗議活動参加者が占拠し、強制排除を試みる警察とのあいだで暴力的衝突が発生した。

モンテレイ市から車で30分離れたラ・ボカ貯水池の水位は非常に低く、行方不明者の親族や警察官らが、軟弱な土をさらって遺体が見つからないかと探している。この州では犯罪が頻発しており、現時点では6000人以上が行方不明者として認定されている。

電話での取材に応じたヌエボレオン州上下水道研究所のフアン・イグナシオ・バラガン所長は、「2カ所のダムは危機的な状況にある。事実上、ほんの数日で枯渇してしまう」と語った。

「シウダダノス・デスコノシドス(無名市民)」と称する団体が独自に提出した権利侵害に関する申し立てには、サムエル・ガルシア州知事と並んで、バラガン所長の名も挙げられている。

現在の干ばつは、「ラニーニャ」と呼ばれる気候現象に関連したものとされている。バラガン所長によれば、気候変動に伴いラニーニャ現象は以前よりも顕著になっており、2015年以降、降水量がますます不安定になっているのもそれが原因だという。同所長は権利侵害の申し立てについては承知していないとも語った。

バラガン所長は時限断水に対する住民の怒りを認めつつ、州政府が深井戸など新たな水源を模索するだけでなく、上水道網の拡張や、漏水・違法利用を防ぐためのインフラ改善に取り組んでいると説明した。

同所長によれば、これまでの政権は、貯水池が枯渇した場合でさえインフラ改善への投資を怠ってきたという。

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は先月、ヌエボレオン州におけるダム新設に向けた1億1000万ドルの投資を発表した。完成は2023年末を予定している。左派のロペス・オブラドール大統領は、水利権に関する企業優遇を批判してきたが、これまでのところ、その点に関する改革案は示していない。

<水利権の問題>

州当局を相手取った権利侵害の申し立てがある一方で、住民の怒りの大半は、大企業、そして大企業への供給を割り当てている水利権に向けられている。

「(こうした企業に与えられている水利権の)量と、家庭の利用者向けに割り当てられている政策を比べてみると、大きな格差がある」と語るのは、メキシコ国立自治大学で水を巡る格差を研究しているゴンサロ・ハッチ・クリ教授(地理学)。

水利権は、連邦機関である国家水委員会(CONAGUA)により与えられており、バラガン所長によれば、1世紀も前にさかのぼるものもあるという。

ヌエボレオン州では、CONAGUAが発行した水利権により、工業部門向けには州内の水資源全体の4%を採取することが認められており、これは家庭向けの割り当て分の約100倍に相当する。それ以外の大半は、農業及び公共部門への割り当てである。

トムソン・ロイター財団が水利権登記簿のデータを分析したところ、ハイネケンやコカ・コーラを含む炭酸飲料・ビール大手5社だけで、ヌエボレオン州の工業部門に割り当てられた水の16%を採取している。

コメントを求めたところ、CONAGUAとコカコーラからは今のところ回答が得られていない。ハイネケンは声明の中で、ヌエボレオン州で同社が掘削した井戸のうち28カ所を家庭用として寄付しており、州内での深井戸の新規掘削のために2000万ドルを投資しているとした。

ハイネケンは州内の産業団体であるCAINTRAに所属しており、CAINTRAは、加盟企業は渇水危機の緩和に向けてできる限りの努力をしていると説明している。

CAINTRAのロドリゴ・フェルナンデス総裁によれば、州内の企業は市内15カ所で井戸の再生に協力しており、自社の井戸から採取した水の25%を家庭向けに提供しているという。

フェルナンデス総裁は最近行われた記者会見で、「(こうした活動による)貢献は、年間2000万立方メートル前後になると推定している」と述べ、6万世帯に1年間供給するのに十分な量であると説明した。

(Diana Baptista記者、翻訳:エァクレーレン)

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