[ワシントン/パリ 17日 ロイター] - 19日から広島市で始まる主要7カ国首脳会談(G7サミット)では、中国とロシアという会合に招待されていない2つの国が3日間の議論を支配することになりそうだ。7カ国の首脳は中ロの挑戦に結束を示したい考えだが、両国に対する立場の違いを克服する必要があると、関係者や専門家は指摘する。
7カ国の立場の差が最も大きいのが中国への対応だと、議論に携わる複数の関係者は言う。重要な貿易相手国を完全に排除することなく、世界の供給網(サプライチェーン)や経済安全保障に対する脅威に警鐘を鳴らす方策について、各国は苦慮している。
東京にある政策研究大学院大学(GRIPS)の道下徳成教授は「大国間の競争」にどう対処するかがサミットの重要な課題だと指摘する。経済安全保障や機微技術にどう対応するか、「全ては、米国とロシア、米国と中国の間で起こっている大国間の競争の一部だ」と語る。
<中国をどこまで名指し>
中国を巡るG7内の温度差は、フランスのマクロン大統領が4月に北京を訪問した際、欧州連合(EU)諸国に米国への依存度を下げるよう呼びかけたことで鮮明になった。
米バイデン政権の高官はロイターに対し、サミットで首脳らは中国に対する共通のアプローチで結束していることを示すとの見通しを示した。一方で同高官は、今回の会議で中国が「より複雑な問題の一つ」であることを認めた。
米当局者によると、7カ国の首脳らはとくに中国の「経済的威圧」への懸念を議論する。共同声明の中に中国に特化した項目を設け、具体的な例を列挙する方向で調整している。
しかし、中国をどの程度具体的に名指しできるかは不透明だ。G7メンバー国の中には、対中投資規制に署名することに懐疑的な声もある。
4月に長野県軽井沢町で開いたG7外相会合では、世界的な課題に対して中国と協力する必要性を認め、国際社会の一員として中国に責任ある行動を改めて求めた。一方、札幌市で開いた気候・エネルギー・環境大臣会合と新潟市で開いた財務相・中央銀行総裁会議の共同声明は中国に直接言及しなかった。
米国は中国への投資規制強化を主導するが、貿易上の結びつきが強いドイツは
より抑制的な姿勢を示している。日本も投資規制には慎重な立場にある。
<ウクライナ戦争どう収束>
G7各国の間では、ロシアのウクライナ侵攻に関しても、対立をどう収束させるかで違いがある。
米国は、ウクライナの軍事攻勢の行方を見届けるまでは外交的な道筋について話したくないとの立場だと、当局者は話す。一方、欧州は外交的な解決策を望んでいるという。
「ヨーロッパの視点から見ると、ウクライナのパートナーは彼らの勝利を加速させるためにできる限りのことをしている」とあるヨーロッパの当局者は述べ、さらにアメリカと中国からの挑戦に対するヨーロッパの対応も重要だと付け加えた。
「欧州の観点からすると、ウクライナのパートナーはウクライナの勝利を加速させるためにあらゆることを行う必要がある」と、欧州のある政府関係者は話す。米国と中国からの挑戦に対応することも重要だと指摘する。「われわれは自分たちの利益を守ることも学ばなければならない」。
議長国の日本は、法の支配に基づく国際秩序の重要性について明確なメッセージを発したいと考えている。岸田文雄首相はかねてから「一方的な現状変更は世界のどこであれ許してはならない」と語っており、ウクライナに侵攻したロシアのような動きがアジア、とりわけ台湾海峡に飛び火することを懸念している。