Gram Slattery Nathan Layne
[ワシントン 4日 ロイター] - トランプ前米大統領が「反白人感情」と対決すると誓ったことを受け、同氏が大統領に返り咲いた場合の政策案づくりを進めている側近の間では、人種差別撤廃や多様性推進に向けて政府や企業に設けられたさまざまなプログラムを撤廃しようとする動きが加速しそうだ。
一部の有力な側近は、教室や職場、慈善団体などにおいて有色人種を保護するための各種政策は、白人の権利も守られるよう再目的化されるべきだと公言している。
トランプ氏は米誌タイムが4月30日に公表したインタビューで「この国には確固とした反白人感情が存在すると思う。その解決が非常に難しいとは考えていないが、現時点で法律は非常に不公平になっている」と語った。
このインタビューでトランプ氏は、具体的にどのような反白人の偏見や政策があるのかは明らかにしていない。ただ、同氏の陣営のウェブサイトには複数の反白人感情対策が提示され、何人かの側近は「2期目のトランプ政権」時に打ち出す政策の詳細を提言した。
その1つとして提案されているのは、連邦政府機関に対して有色人種や性的少数者LGBTQ、農村地域住民など行政サービスが行き届いていないコミュニティーが十分に公的プログラムを利用できているかの検証を義務づけたバイデン大統領の命令の撤回だ。
選挙戦でトランプ氏は、米国の諸制度に人種的偏見が浸透しているとの前提に立って人種問題を教えている学校への予算配分を取り消すことも誓っている。
トランプ氏陣営アドバイザーのリン・パットン氏は保守系ジャーナリストに、トランプ氏が返り咲けば、多様性・公平性・包摂性(ダイバーシティー・エクイティ・インクルージョン=DEI)の理念に基づいた人員採用を行っている学校や企業への連邦予算提供を拒絶することになると明らかにした。
またトランプ氏側近のジーン・ハミルトン氏はロイターに、職場での多様性推進のために企業が導入しているプログラム自体が差別的にならないよう、司法省市民権局がしっかりと道筋をつけなければならないと主張した。
ハミルトン氏がその根拠として持ち出したのは、人種や宗教、性別などを含めた包括的な雇用差別の禁止を規定している1964年公民権法の「セクション7」だ。
トランプ前政権時代に司法省に勤務していたハミルトン氏は、セクション7は白人もまた保護対象になるべきで、職場に有色人種を増やすための採用プログラムにおいても白人からの応募を除外してはならないと訴えている。
トランプ氏寄りのシンクタンク連合「プロジェクト2025」が出版した政策案の文書に自身の考えを記しているハミルトン氏は「人種や性別だけを理由として米国民に与えられる恩恵や雇用を否定する政策やプログラムは、米国を成り立たせてきた基本的な思想を侵害するものだ」と述べた。
<支持者の半分以上が被差別意識>
この政策案策定作業にトランプ氏の陣営本体が直接参加しているわけでないが、多数の側近は関与している。
一方、職場における反白人的な差別を受けたという公式の申し立ては非常に少ないように見える。例えば実際に独立政府機関の雇用機会均等委員会に寄せられる苦情のうち、白人からの提出件数の比率は極めて小さい。
それでもトランプ氏支持者の半分以上が、米国の白人は差別を受けていると信じている。3月に公表したロイター/イプソス調査でも、トランプ氏支持者の約53%が、白人は肌の色を理由に差別されているとの見方を示した。バイデン氏支持者のうちそうした回答をしたのは14%に過ぎない。
保守的なエコノミストでトランプ氏のアドバイザーを務めるスティーブン・ムーア氏が共同策定者となっているプロジェクト2025の政策案の一つには、DEIプログラムに積極的に参加する従業員の解雇を財務省が求めるべきだとの考えもある。
ただアドバイザーのパットン氏は「トランプ氏は2期目において、人種や宗教にかかわらず全ての米国民(の地位)を向上させるだろう」と強調した。
これに対してバイデン氏の陣営は、「反白人感情との対決」に言及したトランプ氏の政策によって、有色人種のコミュニティーの生活はより厳しくなると警告。広報担当者は「トランプ氏は、11月の大統領選に勝利すれば、人種差別主義者の履歴を公式な政策に反映させ、有色人種のコミュニティーにチャンスを与えるプログラムを骨抜きにしようとする姿勢を明確にしている」と批判した。