■主要パイプラインの開発状況
アンジェス MGの主要開発パイプラインは、自社開発品であるHGF遺伝子治療薬、NF-κBデコイオリゴ、高血圧DNAワクチンのほか、他社導入開発品となるCIN治療ワクチンなどがあり、開発状況は以下のとおりとなっている
(1) HGF遺伝子治療薬
○重症虚血肢
HGF遺伝子の血管新生作用の効果を活用して、重症虚血肢とリンパ浮腫向けの開発を進めているなかでも最も注目されているのが、重症虚血肢向けのプロジェクトとなる重症虚血肢の患者数は米国だけで推定50万人とみられており、このうち血管内治療や外科的バイパス手術など既存の治療法の適応とならない、またはリスクの高い患者に対して有効な治療法が開発された場合に創出される市場規模は約50億ドルと推計されているためだ
重症虚血肢とは重症の末梢性血管疾患を指し、血管が閉塞することによって血流が止まり、下肢切断を余儀なくされることもある重篤な状態を指すHGF遺伝子治療薬を血管が詰まっている部分周辺に注射投与することによって新たな血管を作り出し、血管新生による血流回復によって症状の改善を図る効果が期待されている
国内では大阪大学医学部附属病院が主導となり、先進医療B制度を活用した医師主導型臨床研究が実施されており(2014年10月に1例目、2016年3月に2例目、同年8月に3例目の投与開始)、6例のデータを持って条件及び期限付承認制度を活用した承認申請を行うことを目標としている現在の進捗の状況から承認申請の時期は来年の1月以降となる見込みである治験デザインとしては1ヶ月ごとに2回投与し、2ヶ月の観察期間を設けている主要評価項目としては「痛み、潰瘍の改善」を挙げている承認申請時期は臨床研究の進捗次第で、現在は残り3症例の実施に向けて6ヶ所の医療施設で被験者のスクリーニングを進めている段階にある観察期間を終えて結果が良好であれば、承認申請を行うまでの時間は通常よりも短期間で済むと考えられるただ、スクリーニングの条件に合致する被験者が見つかりにくいことから、すべてのデータがそろう時期が伸びる可能性もある
一方、海外では第3相のグローバル臨床試験を2014年10月から実施してきたが、2016年6月に開発戦略の変更を発表した開発にかかる期間と費用を削減し、できるだけ早くHGF遺伝子治療薬の実用化を進めることが目的で、現在のグローバル臨床試験を終了し、治験プロトコルを見直したうえで、米国にて第3相臨床試験を実施していくこととしたグローバル臨床試験では約500例の重症虚血肢患者を対象にプラセボとの比較試験を行い、主要評価項目を「下肢の切断・死亡に至るまでの期間」とし、観察期間を1年半としていたただ、重症患者においてプラセボとの比較試験を行うことや、観察期間が長期にわたることから、被験者が集まりにくくなっており、臨床試験開始から1年半余りの間で被験者数は約50症例にとどまるなど、500症例を完了するまでには相当の時間を要するものと判断し、開発戦略を変更することを決断した
新しい治験デザインでは主要評価項目については国内と同じく「痛み、潰瘍の改善」とし、観察期間の短縮や、症例数についても減らす方向で検討している今後の開発スケジュールとしては、2016年中にFDAと治験計画に関する協議を開始し、2017年に米国で第3相臨床試験の開始を目指している
○原発性リンパ浮腫
原発性リンパ浮腫向けに関してもHGF遺伝子治療薬の投与により、「リンパ管の新生」作用が動物実験において確認されたことから、2013年10月よりPOC※の確認を目的に第1/2相の臨床試験を開始している症例数は約20症例で、観察期間は投与開始から1年間となり、浮腫の体積変化やQOL(生活の質)等を経時的に評価する2016年4月までに最後の症例登録が完了しており、2017年4月には臨床試験が終了する臨床試験の結果からPOCが確認されれば、次の開発ステージ(更なる臨床試験の実施やライセンス契約等)に移行することになるなお、リンパ浮腫の遺伝子治療薬としては世界初の臨床試験となり、開発意義の高さから費用の一部はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の補助金が充てられた
※POC(Proof of Concept):基礎的な発見が実際の臨床試験でも起こることを検討し、治療コンセプトの正しさを確認すること
リンパ浮腫とは、リンパ管の障害によりリンパ流が停滞することで手足等が高度に腫れる疾患のことで、日本における推定潜在患者数は原発性リンパ浮腫で約3,000人、二次性リンパ浮腫で10万人以上とみられる二次性リンパ浮腫に関しては、子宮がんや乳がん術後の発生率が高く、最近では加齢によるリンパ浮腫も増える傾向にある治療法は理学療法(弾性着衣、リンパマッサージ等)、薬物治療、手術などがあるが根治療法はいまだなく、HGF遺伝子治療薬がその候補として期待されている
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
アンジェス MGの主要開発パイプラインは、自社開発品であるHGF遺伝子治療薬、NF-κBデコイオリゴ、高血圧DNAワクチンのほか、他社導入開発品となるCIN治療ワクチンなどがあり、開発状況は以下のとおりとなっている
(1) HGF遺伝子治療薬
○重症虚血肢
HGF遺伝子の血管新生作用の効果を活用して、重症虚血肢とリンパ浮腫向けの開発を進めているなかでも最も注目されているのが、重症虚血肢向けのプロジェクトとなる重症虚血肢の患者数は米国だけで推定50万人とみられており、このうち血管内治療や外科的バイパス手術など既存の治療法の適応とならない、またはリスクの高い患者に対して有効な治療法が開発された場合に創出される市場規模は約50億ドルと推計されているためだ
重症虚血肢とは重症の末梢性血管疾患を指し、血管が閉塞することによって血流が止まり、下肢切断を余儀なくされることもある重篤な状態を指すHGF遺伝子治療薬を血管が詰まっている部分周辺に注射投与することによって新たな血管を作り出し、血管新生による血流回復によって症状の改善を図る効果が期待されている
国内では大阪大学医学部附属病院が主導となり、先進医療B制度を活用した医師主導型臨床研究が実施されており(2014年10月に1例目、2016年3月に2例目、同年8月に3例目の投与開始)、6例のデータを持って条件及び期限付承認制度を活用した承認申請を行うことを目標としている現在の進捗の状況から承認申請の時期は来年の1月以降となる見込みである治験デザインとしては1ヶ月ごとに2回投与し、2ヶ月の観察期間を設けている主要評価項目としては「痛み、潰瘍の改善」を挙げている承認申請時期は臨床研究の進捗次第で、現在は残り3症例の実施に向けて6ヶ所の医療施設で被験者のスクリーニングを進めている段階にある観察期間を終えて結果が良好であれば、承認申請を行うまでの時間は通常よりも短期間で済むと考えられるただ、スクリーニングの条件に合致する被験者が見つかりにくいことから、すべてのデータがそろう時期が伸びる可能性もある
一方、海外では第3相のグローバル臨床試験を2014年10月から実施してきたが、2016年6月に開発戦略の変更を発表した開発にかかる期間と費用を削減し、できるだけ早くHGF遺伝子治療薬の実用化を進めることが目的で、現在のグローバル臨床試験を終了し、治験プロトコルを見直したうえで、米国にて第3相臨床試験を実施していくこととしたグローバル臨床試験では約500例の重症虚血肢患者を対象にプラセボとの比較試験を行い、主要評価項目を「下肢の切断・死亡に至るまでの期間」とし、観察期間を1年半としていたただ、重症患者においてプラセボとの比較試験を行うことや、観察期間が長期にわたることから、被験者が集まりにくくなっており、臨床試験開始から1年半余りの間で被験者数は約50症例にとどまるなど、500症例を完了するまでには相当の時間を要するものと判断し、開発戦略を変更することを決断した
新しい治験デザインでは主要評価項目については国内と同じく「痛み、潰瘍の改善」とし、観察期間の短縮や、症例数についても減らす方向で検討している今後の開発スケジュールとしては、2016年中にFDAと治験計画に関する協議を開始し、2017年に米国で第3相臨床試験の開始を目指している
○原発性リンパ浮腫
原発性リンパ浮腫向けに関してもHGF遺伝子治療薬の投与により、「リンパ管の新生」作用が動物実験において確認されたことから、2013年10月よりPOC※の確認を目的に第1/2相の臨床試験を開始している症例数は約20症例で、観察期間は投与開始から1年間となり、浮腫の体積変化やQOL(生活の質)等を経時的に評価する2016年4月までに最後の症例登録が完了しており、2017年4月には臨床試験が終了する臨床試験の結果からPOCが確認されれば、次の開発ステージ(更なる臨床試験の実施やライセンス契約等)に移行することになるなお、リンパ浮腫の遺伝子治療薬としては世界初の臨床試験となり、開発意義の高さから費用の一部はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の補助金が充てられた
※POC(Proof of Concept):基礎的な発見が実際の臨床試験でも起こることを検討し、治療コンセプトの正しさを確認すること
リンパ浮腫とは、リンパ管の障害によりリンパ流が停滞することで手足等が高度に腫れる疾患のことで、日本における推定潜在患者数は原発性リンパ浮腫で約3,000人、二次性リンパ浮腫で10万人以上とみられる二次性リンパ浮腫に関しては、子宮がんや乳がん術後の発生率が高く、最近では加齢によるリンパ浮腫も増える傾向にある治療法は理学療法(弾性着衣、リンパマッサージ等)、薬物治療、手術などがあるが根治療法はいまだなく、HGF遺伝子治療薬がその候補として期待されている
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)