■システムインテグレータ (T:3826)の業績動向
2. 事業セグメント別動向
(1) Object Browser事業
Object Browser事業の売上高は前期比1.4%増の628百万円、営業利益は同5.1%減の376百万円となった。
売上高は過去最高を更新している。
ソフトウェア開発の生産性向上ツールとなる「SI Object Browser」シリーズについては既に業界デファクトスタンダードとして幅広く利用されていることもあり、前期比で横ばい水準にとどまったものの、プロジェクト統合管理ツールとなる「OBPM」の導入社数が前期末の140社超から150社超と着実に伸びたことが増収要因となった。
前期末より投入した「ライト版」や製造業向けの「エンジニアリング版」等も数件程度の新規契約を獲得しており、順調な立ち上がりを見せた。
アプリケーション設計ツールの「OBDZ」については機能改善を図りながら徐々に販売実績が積み上がっており、導入社数で20社超となっている。
利益面では、前期に抑制していたネット広告などのマーケティング費用や人件費の増加により若干の減益となったが、引き続き60%の利益率を維持しており、同社の安定収益基盤となっている。
(2) EC・オムニチャネル事業
EC・オムニチャネル事業の売上高は前期比16.5%増の699百万円、営業利益は同189.4%増の190百万円となった。
国内EC市場の拡大が続くなかで参入ベンダーが増加し、競争激化により減収傾向が続いてきたが、4期ぶりの増収に転じた。
大型開発案件を複数受注できたことが増収要因となった。
いずれも他社システムからのリプレイス案件で、ECサイトの大規模化、多機能化を進めるなかで、ECサイト構築事業を20年以上続けてきた実績や開発力の高さが評価されたものと考えられる。
利益面では、受注段階から開発要件を選別し、高付加価値を実現する方針にシフトしたことで、プロジェクトの粗利益率が向上したこと、また、オムニチャネル対応の統合管理分析クラウドサービス「SOCS」から撤退したことなどにより、開発費を主とした減価償却費が前期比で71百万円減少したことが増益要因となった。
(3) ERP事業
ERP事業の売上高は前期比24.6%増の2,438百万円、営業利益は同187.0%増の433百万円となった。
売上高、利益ともに2期ぶりに過去最高を更新した。
売上高については前期に不採算プロジェクト発生の影響で一時的に落ち込んでいた反動もあるが、企業のIT投資意欲が引き続き旺盛だったことも追い風となった。
主に自社開発品である「生産管理アドオンモジュール」の受注販売が製造業向けに拡大したほか、「OBPM」との組み合わせによるIT関連企業向けの「ITテンプレート」も増加した。
また、カスタマイズ要求が増え、1件当たりの受注単価が上昇傾向にあることも特徴となっている。
クラウドベースの「GRANDIT on AWS」についても、数社の稼働事例がでるなど、着実に実績が出始めている。
利益面では、前期のような不採算プロジェクトに関する受注損失引当金の計上がなかったことが増益要因となった。
(4) その他
2018年2月期より新規事業をその他として開示しており、売上高は1百万円、営業損失は40百万円となった。
新規事業としては以下の2つの事業を開始している。
a) AIサービス「AISI∀」
2018年2月期より専門チームを構成して本格的にAI事業を開始した。
サービス名は「AISI∀(アイシア)」とし、第1弾として2017年10月に「AISI∀-DR(DesignRecognition)」を発表した。
同サービスは、画面からデザインを認識して設計書を逆生成するサービスとなる。
実物から設計図を逆生成するリバースエンジニアリングのソフトウェア版となる。
ソフトウェア業界では初めての試みで、特許も申請中だ。
2018年3月から販売を開始しており、トライアルで導入した企業からの評価も良好で、画像認識率も実用レベルの水準になっているようだ。
同社では「OBDZ」と連携して使うことで、「画面から設計情報を逆生成し、メンテナンスはOBDZで効率的に行う」という理想的な使い方が実現できると見ている。
2019年2月期より3年間で約300百万円を販売目標としている。
また、第2弾として、撮影した花の名前を画像認識技術によって判別するサービス「AISI∀ FlowerName」を開発し、自社のホームページ上で公開した。
同サービスは、同社のAI技術の認知度を高めるための宣伝的な位置付けで、無料となっている。
b) プログラミングスキル判定サービス「TOPSIC」
プログラミングスキル判定サービス「TOPSIC」は、2018年1月よりサービスを開始している。
TOEIC®により英語能力が数値化されたように、「TOPSIC」を使ってプログラミングスキルの可視化を実現するサービスとなる。
企業がシステムエンジニアを採用する際、あるいは外注パートナーを選別する際に、同サービスを使うことで実際の実力が把握できるため、所望の人材の採用あるいはパートナー先の選定を低いコストで実現できることになる。
英語にも対応しているため、外国人のシステムエンジニア採用時にも利用できるほか、社内での人材育成用途としての利用も想定される。
さらには、学校の教育用途での需要の広がりが期待される。
2020年度から小学校でもプログラミング教育が必修化されるなど、プログラミング教育への関心が今後高まることが予想されるためだ。
実際、都内某私立中学校・高等学校でも既に利用が始まっている。
教育分野でもTOEIC®のように一定の市場シェアを獲得できれば、将来的に収益柱の1つに育つ可能性もある。
料金体系は年間基本料金で30万円、これに試験の回数ごとに課金する従量課金制(1回8千円)、または1人当たりの定額制料金を組み合わせる格好となる。
同社では2019年2月期以降3年間で約400百万円の販売を目標としている。
なお、スキル判定用のコンテンツに関しては業務提携先であるAtCoder(株)から提供を受けている。
無借金経営で財務内容は健全
3. 財務状況と経営指標
2018年2月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比20百万円減少の3,189百万円となった。
このうち流動資産は同27百万円増加の2,789百万円となった。
現金及び預金が192百万円増加した一方で、仕掛品が107百万円、繰延税金資産が84百万円減少した。
また、固定資産は48百万円減少の399百万円となった。
主にソフトウェアが37百万円減少したことによる。
負債合計は前期末比339百万円減少の1,619百万円となった。
主に受注損失引当金が273百万円減少したほか、未払法人税等が94百万円減少した。
受注損失引当金982百万円は2015年2月期に発生した特定顧客向けの大規模開発案件に関するものがほとんどで、2019年2月期中にはなくなるものと見られる。
また、純資産は当期純利益の計上345百万円と配当金の支払い44百万円などにより、前期末比で318百万円増加の1,570百万円となった。
経営指標を見ると、自己資本比率は49.2%と前期末比で10.2ポイント上昇した。
受注損失引当金がまだ982百万円残っており、これを除けば70%を超える水準となっている。
また、有利子負債もないことから財務の健全性は維持されていると判断される。
収益性について見れば、ROEで24.5%、営業利益率で13.1%といずれも前期の水準からは大きく回復した。
2017年2月期の収益悪化要因であった不採算プロジェクトについては既に検収を終えており、また、不採算プロジェクト発生に対する防止対策も強化されたことから、今後は安定して高い収益性が続くものと見込まれる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
2. 事業セグメント別動向
(1) Object Browser事業
Object Browser事業の売上高は前期比1.4%増の628百万円、営業利益は同5.1%減の376百万円となった。
売上高は過去最高を更新している。
ソフトウェア開発の生産性向上ツールとなる「SI Object Browser」シリーズについては既に業界デファクトスタンダードとして幅広く利用されていることもあり、前期比で横ばい水準にとどまったものの、プロジェクト統合管理ツールとなる「OBPM」の導入社数が前期末の140社超から150社超と着実に伸びたことが増収要因となった。
前期末より投入した「ライト版」や製造業向けの「エンジニアリング版」等も数件程度の新規契約を獲得しており、順調な立ち上がりを見せた。
アプリケーション設計ツールの「OBDZ」については機能改善を図りながら徐々に販売実績が積み上がっており、導入社数で20社超となっている。
利益面では、前期に抑制していたネット広告などのマーケティング費用や人件費の増加により若干の減益となったが、引き続き60%の利益率を維持しており、同社の安定収益基盤となっている。
(2) EC・オムニチャネル事業
EC・オムニチャネル事業の売上高は前期比16.5%増の699百万円、営業利益は同189.4%増の190百万円となった。
国内EC市場の拡大が続くなかで参入ベンダーが増加し、競争激化により減収傾向が続いてきたが、4期ぶりの増収に転じた。
大型開発案件を複数受注できたことが増収要因となった。
いずれも他社システムからのリプレイス案件で、ECサイトの大規模化、多機能化を進めるなかで、ECサイト構築事業を20年以上続けてきた実績や開発力の高さが評価されたものと考えられる。
利益面では、受注段階から開発要件を選別し、高付加価値を実現する方針にシフトしたことで、プロジェクトの粗利益率が向上したこと、また、オムニチャネル対応の統合管理分析クラウドサービス「SOCS」から撤退したことなどにより、開発費を主とした減価償却費が前期比で71百万円減少したことが増益要因となった。
(3) ERP事業
ERP事業の売上高は前期比24.6%増の2,438百万円、営業利益は同187.0%増の433百万円となった。
売上高、利益ともに2期ぶりに過去最高を更新した。
売上高については前期に不採算プロジェクト発生の影響で一時的に落ち込んでいた反動もあるが、企業のIT投資意欲が引き続き旺盛だったことも追い風となった。
主に自社開発品である「生産管理アドオンモジュール」の受注販売が製造業向けに拡大したほか、「OBPM」との組み合わせによるIT関連企業向けの「ITテンプレート」も増加した。
また、カスタマイズ要求が増え、1件当たりの受注単価が上昇傾向にあることも特徴となっている。
クラウドベースの「GRANDIT on AWS」についても、数社の稼働事例がでるなど、着実に実績が出始めている。
利益面では、前期のような不採算プロジェクトに関する受注損失引当金の計上がなかったことが増益要因となった。
(4) その他
2018年2月期より新規事業をその他として開示しており、売上高は1百万円、営業損失は40百万円となった。
新規事業としては以下の2つの事業を開始している。
a) AIサービス「AISI∀」
2018年2月期より専門チームを構成して本格的にAI事業を開始した。
サービス名は「AISI∀(アイシア)」とし、第1弾として2017年10月に「AISI∀-DR(DesignRecognition)」を発表した。
同サービスは、画面からデザインを認識して設計書を逆生成するサービスとなる。
実物から設計図を逆生成するリバースエンジニアリングのソフトウェア版となる。
ソフトウェア業界では初めての試みで、特許も申請中だ。
2018年3月から販売を開始しており、トライアルで導入した企業からの評価も良好で、画像認識率も実用レベルの水準になっているようだ。
同社では「OBDZ」と連携して使うことで、「画面から設計情報を逆生成し、メンテナンスはOBDZで効率的に行う」という理想的な使い方が実現できると見ている。
2019年2月期より3年間で約300百万円を販売目標としている。
また、第2弾として、撮影した花の名前を画像認識技術によって判別するサービス「AISI∀ FlowerName」を開発し、自社のホームページ上で公開した。
同サービスは、同社のAI技術の認知度を高めるための宣伝的な位置付けで、無料となっている。
b) プログラミングスキル判定サービス「TOPSIC」
プログラミングスキル判定サービス「TOPSIC」は、2018年1月よりサービスを開始している。
TOEIC®により英語能力が数値化されたように、「TOPSIC」を使ってプログラミングスキルの可視化を実現するサービスとなる。
企業がシステムエンジニアを採用する際、あるいは外注パートナーを選別する際に、同サービスを使うことで実際の実力が把握できるため、所望の人材の採用あるいはパートナー先の選定を低いコストで実現できることになる。
英語にも対応しているため、外国人のシステムエンジニア採用時にも利用できるほか、社内での人材育成用途としての利用も想定される。
さらには、学校の教育用途での需要の広がりが期待される。
2020年度から小学校でもプログラミング教育が必修化されるなど、プログラミング教育への関心が今後高まることが予想されるためだ。
実際、都内某私立中学校・高等学校でも既に利用が始まっている。
教育分野でもTOEIC®のように一定の市場シェアを獲得できれば、将来的に収益柱の1つに育つ可能性もある。
料金体系は年間基本料金で30万円、これに試験の回数ごとに課金する従量課金制(1回8千円)、または1人当たりの定額制料金を組み合わせる格好となる。
同社では2019年2月期以降3年間で約400百万円の販売を目標としている。
なお、スキル判定用のコンテンツに関しては業務提携先であるAtCoder(株)から提供を受けている。
無借金経営で財務内容は健全
3. 財務状況と経営指標
2018年2月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比20百万円減少の3,189百万円となった。
このうち流動資産は同27百万円増加の2,789百万円となった。
現金及び預金が192百万円増加した一方で、仕掛品が107百万円、繰延税金資産が84百万円減少した。
また、固定資産は48百万円減少の399百万円となった。
主にソフトウェアが37百万円減少したことによる。
負債合計は前期末比339百万円減少の1,619百万円となった。
主に受注損失引当金が273百万円減少したほか、未払法人税等が94百万円減少した。
受注損失引当金982百万円は2015年2月期に発生した特定顧客向けの大規模開発案件に関するものがほとんどで、2019年2月期中にはなくなるものと見られる。
また、純資産は当期純利益の計上345百万円と配当金の支払い44百万円などにより、前期末比で318百万円増加の1,570百万円となった。
経営指標を見ると、自己資本比率は49.2%と前期末比で10.2ポイント上昇した。
受注損失引当金がまだ982百万円残っており、これを除けば70%を超える水準となっている。
また、有利子負債もないことから財務の健全性は維持されていると判断される。
収益性について見れば、ROEで24.5%、営業利益率で13.1%といずれも前期の水準からは大きく回復した。
2017年2月期の収益悪化要因であった不採算プロジェクトについては既に検収を終えており、また、不採算プロジェクト発生に対する防止対策も強化されたことから、今後は安定して高い収益性が続くものと見込まれる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)