[上海/デトロイト 5日 ロイター] - 米自動車大手フォード・モーター (N:F)は、昨年6月に発表していた中国での販売網の統合計画を断念した。現地の合弁相手企業からの、さらには合弁企業間の相互の不信を招き、中国での販売台数の急減をもたらしたためだ。
計画は重慶長安汽車 (SZ:000625)と提携して生産した車と、江鈴汽車(JMC) (SZ:000550)と提携して生産した車の販売網を統合しようというもので、一見すると理にかなっていた。赤字の中国事業の操業効率を改善すると期待されたし、大概のほかの市場では一般的なやり方だ。
だが計画は実情を無視していた。往々にして外国の自動車メーカーと折半出資になる中国側は販売の決定権を失いたがらず、相互に信頼しようとすることもめったにない。地域の経済成長や税収を求めて血眼になる地元政府に対して忠誠心を持っている。
フォードの中国法人(フォード・チャイナ)のアニング・チェン社長兼最高経営責任者(CEO)は上海でインタビューに応じ、「中国での関係づくりに深い理解が欠けていた」と述べた。
中国でトラブル続きのフォードだが、こうした計画撤回を明らかにしたのは初めてだ。
中国で大手外国自動車メーカーは通常、2─3社と提携し、それぞれに異なるマーケティングや販売の戦略を構築することが多い。主流の車の販売網統合を試みたのはフォード1社だけだ。
合弁事業の厄介な関係が浮き彫りになったのは、フォードの小型スポーツ多目的車(SUV)「テリトリー」の販売を巡る問題だ。JMCと共同開発したが、JMCフォードの販売網だけでなく、重慶フォードを通しても販売された。
フォード幹部の話では、これが重慶長安を怒らせた。なぜ自分たちは開発パートナーではないのかと不審がった。JMCのような地場企業よりも大きな国有企業として、自分たちの方がはるかに高い序列にあると考えてもいる。
一方でJMCは、開発商品が重慶長安に共有されることに気を悪くしたという。
フォードは以前、この販売方法は成功と豪語していた。だがチェン氏は今はもっと控えめで、ディーラー事業に矛盾が生じるため類似の合意はもはや考えにくいと述べた。
チェン氏は「販売網は異なる市場と顧客ごとに、確実に直接向かい合うようにしたい。混ぜ合わせたくない」と語った。