[シドニー 9日 ロイター] - 香港のキャセイ・パシフィック航空 (HK:0293)は9日、新型コロナウイルスの流行で大打撃を受けた経営の立て直しに向け、香港政府主導の390億香港ドル(50億3000万米ドル)規模の資本増強計画を発表した。
キャセイは政府向けに195億香港ドル相当の優先株、19億5000万香港ドルのワラントを発行する。
香港政府は優先株の引き受けでキャセイを6%保有し、取締役会にオブザーバー2人を派遣する権利を持つ。78億香港ドルのつなぎ融資も提供する。
また、スワイヤ・パシフィック (HK:0019)と中国国際航空 (HK:0753) (SS:601111)、カタール航空などの既存株主に対し117億香港ドル規模の株主割当増資も実施する。増資引き受けにより、持ち株比率はスワイヤが45%から42%に、中国国際航空が30%から28%に、カタール航空は10%から9.4%に低下する見通し。
<国際ハブの地位維持へ大規模支援>
新型コロナを受けた航空業界危機に、各国政府が救済に乗り出している。
すでに政府系ファンドから101億ドルに上る救済を受けているシンガポール航空 (SI:SIAL)と同様、キャセイは国際路線運休の打撃を穴埋めできるような国内市場を持たない。現在は北京やロサンゼルス、シドニー、東京といった主要路線で貨物機や旅客機を使った荷物輸送の運航にとどまっている。
独立系航空アナリストのブレンダン・ソビー氏は、巨額を投じた国際空港拡張や、域内のライバルであるシンガポールの動きを踏まえ、香港が国際ハブとしての地位を守る必要があると指摘する。
BOCOM国際のアナリスト、ルヤ・ユー氏は、今回の支援パッケージはキャセイの年内の事業継続に必要な資金をカバーして余りある規模で、長期的見通しが明るくなると指摘し「潤沢な流動性を持つ大手航空会社はコロナ後に直ちに大きな市場シェアを獲得できる」と述べた。
キャセイは9日、旅客収入が前年の1%にまで落ち込み、2月以降、現金は月25億─30億香港ドルのペースで減少していると説明。幹部報酬のさらなる削減や第2次の希望退職募集を実施する方針を示した。
キャセイのパトリック・ヒーリー会長は声明で「きょう発表した新たな資本注入は、われわれが安心できるという意味ではない。われわれは、競争力を高めるためビジネス転換の取り組みを強化しなければならないことを意味する」と述べた。
香港政府の陳茂波(ポール・チャン)財政官は、キャセイ救済は、国際空港ハブとしての香港の位置を維持するのが目的だと説明。キャセイ株を長期にわたり保有するつもりはなく、経営に関与する計画もないと述べた。
*内容を追加しました。
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