[台北 27日 ロイター] - 台湾の複数の当局者はロイターに対し、中国が台湾に新型コロナウイルスワクチンを提供する用意があると表明しているが、誠実な申し出ではないとし、政治的な理由で台湾のワクチン調達を妨害しているとの認識を示した。
台湾は、ドイツのバイオ医薬会社ビオンテックから新型コロナワクチンを購入するのを中国が妨害していると主張。中国は、ビオンテックと販売契約を結んでいる中国の上海復星医薬を通じてワクチンを提供する用意があると表明している。
ただ、台湾は上海復星医薬を通じたワクチンの調達を拒否。透明性が不足しており、中国が関連情報の提供を拒んでいることを理由に挙げている。
台湾のある高官はロイターに対し、中国がワクチン提供を巡って、既存の情報交換ルートを利用していないと指摘。中国は台湾を「分離・弱体化」させるため「政治戦」を仕掛けており、ワクチンを提供する意思はないとの見方を示した。
同高官は「台湾がワクチンを輸入するには一定の手続きが必要で、彼らに(ワクチンを提供する)意思が本当にあるのなら、何をしなければならないか分かっているはずだ」と述べた。
台湾当局は、ビオンテックのワクチン調達に中国が介入していることを数カ月間にわたって公表していなかったが、同高官は公表が必要だと感じるようになったと発言。
「ワクチンは政治ではない。だが、ワクチンの政治化を世界で一番よく知っているのは中国本土だ」と述べた。
台湾の治安当局関係者もロイターに、中国は台湾のワクチン調達を妨害するため「多数の措置を講じている」と指摘。「(資金力を背景に対外進出を図る)ドル外交に似ている。ドルがワクチンに変わっただけだ」と述べた。
中国国務院の台湾事務弁公室はロイターに対し、中国がビオンテックとの契約を妨害しているとの台湾の主張は「ナンセンス」だと反論。上海復星医薬を迂回したワクチン調達を目指す台湾は、商業原理に反していると述べた。
台湾事務弁公室は、ワクチン提供の申し出は誠実なもので、台湾は政治的な障壁を築くべきではないと繰り返し主張している。
台湾の中央流行疫情指揮センターは、上海復星医薬を通じたワクチン提供に関する中国国営メディアの報道について、情報が不足しており、ワクチンが台湾の基準を満たすか知るすべがないとロイターに述べた。
上海復星医薬のコメントは取れていない。
一方、台湾の最大野党・国民党は、上海復星医薬を通じてワクチンを調達すべきだと主張。同党幹部は会見で、同社のワクチンは「100%」ビオンテックのワクチンであり、なぜ与党が購入を拒否するのか分からないと述べている。