■要約
シンバイオ製薬 (T:4582)は、患者数は少ないが医療ニーズの高い「がん、血液、希少疾病」領域をターゲットに、臨床試験段階からの開発を進めるバイオベンチャーである。
主要開発パイプラインには、悪性リンパ腫向け治療薬として適応拡大が進んでいる「トレアキシン(R)」のほか、オンコノバ・セラピューティクス (NASDAQ:ONTX)(以下、オンコノバ)(米)から導入した「リゴセルチブ」、キメリックス (NASDAQ:CMRX)(米)から導入した抗ウイルス薬「ブリンシドフォビル(BCV)」がある。
1. 2021年12月期第3四半期累計の業績動向
2021年12月期第3四半期累計(2021年1月−9月)の売上高は前年同期比138.1%増の5,553百万円、営業利益は424百万円(前年同期は3,142百万円の損失)となった。
売上高は「トレアキシン(R)」の自社販売を2020年12月より開始したことや、2021年3月に再発又は難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(以下、再発・難治性DLBCL)を対象としたリツキシマブとの併用療法(以下、BR療法)、及びリツキシマブ、ポラツズマブ ペドチンとの併用療法(以下、P-BR療法)の製造販売承認を取得し、適応領域が大きく広がったことが増収要因となった。
また、自社販売体制へのシフトに加えて、従来のFD製剤(凍結乾燥注射剤)よりも利益率の高いRTD製剤(液剤タイプ)の販売を2021年1月から開始し、FD製剤からの切り替えを進めてきたことで、売上総利益率が前年同期の29.0%から76.0%と大きく上昇したことが黒字化を達成する要因となった。
2021年12月期の業績は売上高で前期比206.4%増の9,151百万円、営業利益で1,361百万円(前期は4,506百万円の損失)となる見通しと、期初予想を据え置いた。
売上高については市中在庫や新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)による受診控え等の影響があったため、若干未達となる可能性があるものの、研究開発費やその他販管費も計画を下回る見込みで、利益ベースでは計画を達成できる見通しとなっている。
なお、FD製剤からRTD製剤への切り替え率に関しては、第3四半期でやや遅れたものの、第4四半期には約9割と当初計画通りとなる見込みだ。
2. 開発パイプラインの動向
「トレアキシン(R)」については2021年5月にRI製剤(静注にする投与時間が従来の60分から10分に短縮)の販売承認申請を行っており、順調に審査が進めば1年内に承認され、2022年後半には販売が開始される見込みとなっている。
医療従事者だけでなく患者のQOL向上にも大きく寄与することから、同製品の販売開始によってさらなる売上拡大につながるものと期待される。
また、「リゴセルチブ」については、「トレアキシン(R)」を含めた既存薬との併用療法の可能性を探るため、アカデミアと共同研究に取り組んでおり、2022年には適応対象を含めた新たな開発戦略を決定する方針となっている。
また、「BCV」(注射剤)は、造血幹細胞移植後に発症するアデノウイルス感染症(小児向け)を対象とした国際共同第2相臨床試験を2021年12月期第3四半期より開始しており、順調に進めば2023年にも第3相臨床試験に進む可能性がある。
さらに、2022年には臓器移植後のウイルス感染症を対象とした国際共同臨床試験も開始する意向となっているほか、海外の大学や医療機関でがん疾患領域における研究も開始されるなど、「BCV」の開発領域が広がる動きも出てきている。
同社では海外での開発を積極化していくため、臨床試験のノウハウと経験を持つマネジメント人材を2021年10月に米国子会社に副社長として招聘し、本格稼働を開始している。
3. 中期経営計画
同社は中期経営計画の業績目標として、2023年12月期に売上高12,369百万円、営業利益2,099百万円、1株当たり利益46.5円を掲げた。
売上高は「トレアキシン(R)」の再発・難治性 DLBCL向けでの浸透と、RI製剤の販売開始により既存の多剤併用療法を実施している医療機関での浸透が一段と進むことで拡大すると見込んでいる。
利益面では、「BCV」の開発費用を中心に研究開発費の増加が見込まれるものの、売上総利益の拡大によって吸収する。
同社は2021年を、グローバル・スペシャリティファーマを目指す“第二の創業”元年と位置付けており、2022年以降は「BCV」の海外での開発を積極的に進めていく方針で、2030年には「BCV」の上市によって海外売上比率を50%に引き上げ、グローバル製薬企業への進化を目指していく。
■Key Points
・「トレアキシン(R)」はRTD製剤の販売開始、並びに再発・難治性DLBCLへの適応拡大により、売上成長ポテンシャルが約2倍に拡大
・「ブリンシドフォビル」は造血幹細胞移植後のアデノウイルス感染症を対象としたグローバル治験を開始、抗腫瘍効果の研究も進む
・2022年以降も「トレアキシン(R)」の売上拡大により営業利益は年率20%超の成長を見込む
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
シンバイオ製薬 (T:4582)は、患者数は少ないが医療ニーズの高い「がん、血液、希少疾病」領域をターゲットに、臨床試験段階からの開発を進めるバイオベンチャーである。
主要開発パイプラインには、悪性リンパ腫向け治療薬として適応拡大が進んでいる「トレアキシン(R)」のほか、オンコノバ・セラピューティクス (NASDAQ:ONTX)(以下、オンコノバ)(米)から導入した「リゴセルチブ」、キメリックス (NASDAQ:CMRX)(米)から導入した抗ウイルス薬「ブリンシドフォビル(BCV)」がある。
1. 2021年12月期第3四半期累計の業績動向
2021年12月期第3四半期累計(2021年1月−9月)の売上高は前年同期比138.1%増の5,553百万円、営業利益は424百万円(前年同期は3,142百万円の損失)となった。
売上高は「トレアキシン(R)」の自社販売を2020年12月より開始したことや、2021年3月に再発又は難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(以下、再発・難治性DLBCL)を対象としたリツキシマブとの併用療法(以下、BR療法)、及びリツキシマブ、ポラツズマブ ペドチンとの併用療法(以下、P-BR療法)の製造販売承認を取得し、適応領域が大きく広がったことが増収要因となった。
また、自社販売体制へのシフトに加えて、従来のFD製剤(凍結乾燥注射剤)よりも利益率の高いRTD製剤(液剤タイプ)の販売を2021年1月から開始し、FD製剤からの切り替えを進めてきたことで、売上総利益率が前年同期の29.0%から76.0%と大きく上昇したことが黒字化を達成する要因となった。
2021年12月期の業績は売上高で前期比206.4%増の9,151百万円、営業利益で1,361百万円(前期は4,506百万円の損失)となる見通しと、期初予想を据え置いた。
売上高については市中在庫や新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)による受診控え等の影響があったため、若干未達となる可能性があるものの、研究開発費やその他販管費も計画を下回る見込みで、利益ベースでは計画を達成できる見通しとなっている。
なお、FD製剤からRTD製剤への切り替え率に関しては、第3四半期でやや遅れたものの、第4四半期には約9割と当初計画通りとなる見込みだ。
2. 開発パイプラインの動向
「トレアキシン(R)」については2021年5月にRI製剤(静注にする投与時間が従来の60分から10分に短縮)の販売承認申請を行っており、順調に審査が進めば1年内に承認され、2022年後半には販売が開始される見込みとなっている。
医療従事者だけでなく患者のQOL向上にも大きく寄与することから、同製品の販売開始によってさらなる売上拡大につながるものと期待される。
また、「リゴセルチブ」については、「トレアキシン(R)」を含めた既存薬との併用療法の可能性を探るため、アカデミアと共同研究に取り組んでおり、2022年には適応対象を含めた新たな開発戦略を決定する方針となっている。
また、「BCV」(注射剤)は、造血幹細胞移植後に発症するアデノウイルス感染症(小児向け)を対象とした国際共同第2相臨床試験を2021年12月期第3四半期より開始しており、順調に進めば2023年にも第3相臨床試験に進む可能性がある。
さらに、2022年には臓器移植後のウイルス感染症を対象とした国際共同臨床試験も開始する意向となっているほか、海外の大学や医療機関でがん疾患領域における研究も開始されるなど、「BCV」の開発領域が広がる動きも出てきている。
同社では海外での開発を積極化していくため、臨床試験のノウハウと経験を持つマネジメント人材を2021年10月に米国子会社に副社長として招聘し、本格稼働を開始している。
3. 中期経営計画
同社は中期経営計画の業績目標として、2023年12月期に売上高12,369百万円、営業利益2,099百万円、1株当たり利益46.5円を掲げた。
売上高は「トレアキシン(R)」の再発・難治性 DLBCL向けでの浸透と、RI製剤の販売開始により既存の多剤併用療法を実施している医療機関での浸透が一段と進むことで拡大すると見込んでいる。
利益面では、「BCV」の開発費用を中心に研究開発費の増加が見込まれるものの、売上総利益の拡大によって吸収する。
同社は2021年を、グローバル・スペシャリティファーマを目指す“第二の創業”元年と位置付けており、2022年以降は「BCV」の海外での開発を積極的に進めていく方針で、2030年には「BCV」の上市によって海外売上比率を50%に引き上げ、グローバル製薬企業への進化を目指していく。
■Key Points
・「トレアキシン(R)」はRTD製剤の販売開始、並びに再発・難治性DLBCLへの適応拡大により、売上成長ポテンシャルが約2倍に拡大
・「ブリンシドフォビル」は造血幹細胞移植後のアデノウイルス感染症を対象としたグローバル治験を開始、抗腫瘍効果の研究も進む
・2022年以降も「トレアキシン(R)」の売上拡大により営業利益は年率20%超の成長を見込む
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)