[東京 21日 ロイター] - 日本製鉄は21日、タイの電炉大手2社を買収すると発表した。債権買い取り価格などを含めた買収総額は最大7.63億ドル(約880億円)で、完全子会社化を目指す。地産地消が進む海外市場に一貫製鉄所を持ち成長市場を取り込むほか、二酸化炭素(CO2)排出が少ない電炉の活用で、脱炭素に対応する。
買収するのは熱延鋼板大手GスチールとGJスチールで、タイで唯一電炉から熱延までの一貫設備を有しており、生産能力は両社で年308万トン。タイ国内において20%弱のシェアとなっている。
日鉄はまず、50%弱と40%強を保有する特別目的会社の株式100%を、債権買い取り価格を含めて4.19億ドル(約480億円)で取得。最大3.44億ドル(約400億円)を投じて、公開買い付けを通じて残りの株式を取得する計画という。一連の手続きは、今年3月上旬には終わる見通し。
森高弘副社長は会見で「伸びている市場を押さえたいが、輸出での捕捉には無理がある」と述べ、現地での生産拠点の必要性を強調。また、同社は、カーボンニュートラルに向けて、水素還元とともに、電炉での高級鋼生産実現に取り組んでおり、こうした計画を推進する拠点になり得る可能性もある。
同社は、グローバルで粗鋼1億トン体制を目標に掲げている。欧州アルセロールミタルとのインドでの合弁会社、AM/NSインディアの拡充などを予定しているが「あと1―2拠点持たなければならない」と述べた。その際、「必ずしも電炉だけを狙うわけではない」とも付け加えた。