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アングル:長引く戦争、IT人材大国ウクライナの技術者が苦境に

発行済 2022-04-02 11:06
更新済 2022-04-02 11:10
© Reuters.  3月31日、米国のあるフィンテック企業と、解雇されたウクライナのソフトウエア技術者の間で生じている対立は、長引く戦争がウクライナの大規模なIT産業と、そこで働く約30万

[31日 トムソン・ロイター財団] - 米国のあるフィンテック企業と、解雇されたウクライナのソフトウエア技術者の間で生じている対立は、長引く戦争がウクライナの大規模なIT産業と、そこで働く約30万人の労働者にもたらす苦境を浮き彫りにしている。

ソフトウエア技術者のアレックス・ザイチェンコさんによれば、ロシアの侵攻開始から3週間後、彼の所属する品質保証チームの8人のメンバーは契約先のITアウトソーシング会社から通告を受けたという。発注元であるアルケミー・テクノロジーズは、もうサービスを必要としていない、と。

ザイチェンコさんは2月下旬、自家用車に荷物を積んで、砲撃を受けるキーウを逃れ、西部の都市リビウに移動していた。米カリフォルニア州を本拠とする同社が、この困難な時期にウクライナの労働者たちを無収入の状態に突き落とすことに腹を立てている、と言う。

ザイチェンコさんはトムソン・ロイター財団の取材に対し、「こんなことは誰もすべきではない」と語る。彼のチームが解散させられた際には、「現在の国際情勢」に基づく決定だと伝えられたという。

アルケミー・テクノロジーズのティモシー・リー最高経営責任者(CEO)にコメントを求めたところ、同CEOはメールで、このチームの解雇は「時局とは無関係」であり、「企業方針への違反事例」があったためだと述べた。

「当初の調査で判明した証拠に基づき、チームの該当部分と縁を切ることに決めた」とリーCEOは述べたが、それ以上詳細な説明は避けた。

ザイチェンコさんと、やはり解雇された別の品質保証技術者は、そのような調査についてまったく知らされていなかったと話す。

2月24日にロシアによる侵攻が始まって以来、海外のIT企業の多くは、苦境に陥っているウクライナ労働者たちを支援する取り組みを発表しており、リーCEOも、同社がウクライナ国内の他の従業員のために支援金を送っていると語った。

米国を本拠とする3Dソースの創業者スコット・スタージェス氏は、従業員50人とその家族を、西部の山岳リゾート地に移動させたと語った。同氏はまた、ウクライナ政府に対して、IT労働者に例外的な徴兵猶予を認めるよう要請している。

「彼らはウクライナ経済において非常に重要な存在だ」とスタージェス氏は語り、長期的には、IT産業の育成を支援するため、ウクライナ西部にIT特区を設定するよう協議していると言葉を添えた。

<紛争が長引けば支援も困難に>

だが、こうした支援の動きがある一方で、業界の専門家によれば、紛争が長引けば、多国籍IT企業がウクライナからの撤退を検討する可能性は高いという。

市場調査会社ガートナーでバイスプレジデントを務めるデイビッド・グルームブリッジ氏は、「IT企業は短期的にはスタッフ支援に熱心だが、それを3カ月、6カ月、1年と続けられるだろうか。答えはノーだ」と語る。

そうなれば、ウクライナのIT労働者と同国経済にとって深刻な打撃になるだろう。ウクライナでは、各国にクライアントを抱えるITアウトソーシング企業がオフィスを設け、外国企業も高度な技術を持つ比較的安価な人材に惹かれて拠点を築いている。

業界団体であるウクライナ情報技術協会が2019年に発表した報告書では、前年のITセクターの評価額を約68億ドル(約8330億円)と試算している。ウクライナの輸出総額の10%以上に相当し、アップルやグーグルといったグローバル企業もウクライナの開発技術者を活用している。

だが、キーウを本拠とする労働者権利擁護団体レイバー・イニシアチブの弁護士であるジョージ・サンドゥル氏は、ウクライナのほとんどのIT労働者は個人事業主と見なされており、契約解消をめぐって争うことは困難になっていると指摘する。

正社員として雇用されていても、紛争の長期化につれて困難な状況に直面しかねない。

サンドゥル氏によれば、ウクライナでは今月、戒厳令が施行されている期間中、企業による労働者の解雇・休職を容易にする新法が可決された。同氏は、むしろ「銃後で働く」ウクライナ国民に対する保護を強化すべきだと訴えている。

<生活は完全に混乱>

アウトソーシング企業にとって、何であれ、通常業務の混乱を招く要因はクライアントとの契約を失いかねない大きな悩みの種である。

ペンシルベニア州に本社を置くアウトソーシング大手のEPAMシステムズの従業員が匿名を条件に語ったところでは、彼が担当していた米国のクライアント企業は、ウクライナを拠点とするチームを自社の案件から外し、ベラルーシに鞍替えしたという。

EPAMシステムズは、一部のウクライナ人スタッフを業務から外したことを認めたが、給与の支払いは続けていると述べた。また、ウクライナ国内の同社従業員1万4000人を支援するために1億ドルの支出を約束した。

「当社にとっての重要な優先課題は、引き続き、ウクライナ地域での状況に影響を受けたスタッフを保護しつつ、グローバルな顧客に遅滞なくサービスを提供することだ」とEPAMの広報担当者は述べた。

ロシアがウクライナの非武装化に向けた「特殊軍事作戦」と称する今回の戦争により、すでに技術者たちの仕事ぶりはめちゃくちゃになっている。インターネット接続が不安定になることから始まり、戦火による疲弊、さらに身を守るために移転を強いられる場合もある。

米国を拠点とする技術系ウェブサイト「デジタル・トレンズ」でエンジニアリング担当副社長を務めるマーク・ビアー氏は、「彼らの生活は完全に混乱している。自宅を離れざるをえず、できるだけ西へと避難している」と話す。

同氏が率いる9人編成のチームは、契約先のアウトソーシング企業ソースエンジェルが借り上げたスロベニア国境近くの家屋へと移動した。

一部のIT労働者は、とうてい不可能な状況にもかかわらず、契約先から仕事をするようプレッシャーを受けたと感じたと話している。

激しい空爆を受けた東部の都市ハリコフ近郊のNIXソリューションズから業務を受託している技術者のエフゲニーさんは、「可能であれば、理想を言えばフルタイムで働かなければならない。とはいえ、インターネット接続も不安定だし、それ以外の問題もあって難しい」と語る。

NIXソリューションズの創業者であるイゴール・ブラギンスキー氏は、先月送信したスタッフ宛てのメールの中で、「当社は、実際に働く人とだけ仕事をする」と延べ、結果を出せなかった人には、その翌週にでも「おさらばする」と付け加えた。

ブラギンスキー氏は、従業員の一部にはこのメールを誤解したとして、もし勤務が不可能になったら上司に報告するよう従業員に促す趣旨だったと述べた。

「仕事ができない状況なら仕方がないので、知らせてほしい。そうすれば代役を立てる」と同氏は語り、ウクライナ国内の従業員2500人以上を支援するため、すでに私費で寄付を行っているし、誰も解雇していないと続けた。

ガートナーのグルームブリッジ氏は、世界的にIT人材への需要は堅調であり、長期的にはウクライナの開発技術者も仕事探しに悩むことはないだろうと語る。

人によっては、働くことが戦争を忘れるための気分転換になっている。

アウトソーシング企業ソフトサーブの技術者として、米国企業のためにプログラムを書いているマクシム・ラフシン氏は、「今はコーディングに集中することが特に難しい」と言う。

「でも自分は兵士ではない。コーディングは、自分ができることだ」

(翻訳:エァクレーレン)

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