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富士ソフト Research Memo(1):攻めの経営姿勢を貫く1970年設立の独立系大手ITソリューションベンダー

発行済 2022-04-04 15:11
更新済 2022-04-04 15:15
© Reuters.
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■要約

1. 会社概要と事業内容
富士ソフト (T:9749)は、1970年5月設立の独立系大手ITソリューションベンダーである。
そのルーツは、現在の同社取締役相談役である野澤宏(のざわひろし)氏が自宅で自身に加え2名の社員とともに開業した株式会社富士ソフトウエア研究所であり、設立50周年を超えた今、連結子会社31社、持分法適用非連結子会社2社、持分法適用関連会社1社で構成される連結従業員数1万5千人規模(2021年12月末現在)のグループにまで発展している。


報告セグメントは、SI事業(システム構築とプロダクト・サービス)、ファシリティ事業、その他の3つから成る。
主力のSI事業では組込系/制御系及び業務系ソフトウェア開発を軸に多彩なソリューションメニューを提供、ファシリティ事業はオフィスビルの賃貸、その他はBPOサービスやコンタクトセンター、再生医療等を行っている。


また、2017年12月期から「AIS-CRM(アイスクリーム)」領域での取り組みを推進している。
これは、AI、IoT、Security、Cloud computing、Robot、Mobile&AutoMotiveの頭文字を並べた同社の造語であり、中長期的に成長が期待される領域を網羅している。


2. コアコンピタンスは「技術力と提案力」
同社は、自社が顧客から選ばれる理由を「日々進化し続ける高い技術力と提案力にある」としている。
自動車や半導体製造装置など極めて高い精度が要求される組込系/制御系ソフトウェアの開発を通じて得た先進技術ノウハウと幅広い業種向けへのソリューション提供で培われたシステム構築力、独立系ならではの柔軟なプロダクト提供力などに裏打ちされた「技術力と提案力」を自社のコアコンピタンスとすることへの納得度は高い。


3. 柔軟な経営戦略のもとリーマン・ショック以降、財務体質強化と成長ポテンシャル増強をバランス良く両立
同社は、リーマン・ショック前のピーク売上高(2006年3月期)を2017年12月期に更新、ピーク売上高更新まで実に10年余り要したわけだが、その間にフロー利益の回復だけでなく、柔軟な経営戦略のもと財務体質強化と成長ポテンシャル増強をバランス良く両立したことは高く評価できる。


具体的には、自己資本比率が2006年3月期末47.3%→2017年12月期末59.9%、流動比率が同96.4%→同184.9%、純有利子負債(有利子負債-現金及び預金)が同21,295百万円→同6,204百万円のキャッシュ超過など、代表的な財務指標の健全化を実現しつつ、2015年12月期以降は新卒中心の大量採用を継続することで成長ポテンシャルを積み上げている。
人材面を見ると、連結従業員数は2006年3月期末の9,415人から2021年12月期末現在14,956人と1.6倍弱にまで拡大、単体ベースの認定技術者比率(同社制度に基づく認定スペシャリストと認定プロジェクトマネージャーの合計数が全従業員数に占める比率)も2014年12月期末22.8%→2021年12月期末32.3%と上昇しており、人的リソースが質・量ともに拡充されていることが読み取れる。


こうした結果、2021年12月期にかけて5期連続で増収かつ2ケタ経常増益を達成、2021年12月期末の財務指標は自己資本比率が54.6%(前期末比3.9ポイント上昇)、流動比率が163.4%(同10.1ポイント上昇)、純有利子負債は11,523百万円のキャッシュ超過(前期末比17,864百万円減少、キャッシュ超過に転換)となっており、健全な財務体質を維持している。


4. 2022年12月期の連結業績予想は、前期比3.0%増収・同2.7%営業増益を見込む
同社による2022年12月期の連結業績予想は、売上高が前期比3.0%増の265,500百万円、営業利益が同2.7%増の17,300百万円、経常利益が同2.9%増の18,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同6.2%増の9,700百万円と、2013年に12月期決算へ移行してから実質的に9期連続での増収・営業増益を見込んでいる。


配当予想は、2021年12月期実績の年間52円/株(第2四半期末に26円/株、期末に26円/株)から年間109円(第2四半期末に54円/株、期末に55円/株)へと大幅に引き上げられ、8期連続増配となる見通しである。
今回の大幅増配からは中長期的な企業価値向上をコミットする企業として、これまで以上に株主還元を含む資本政策を活用しようとする経営意識が表れている。


5. 新中期経営計画で最も注目したいのは「戦略の基本となる自社の立ち位置が明確化されている」こと
2022年2月、同社は新たな中期経営計画を公表した。
そこで掲げられた各種数値目標(2024年12月期に売上高3,000億円以上、営業利益200億円以上、ROIC8.0%以上、ROE9.0%以上、EBITDAマージン9.0%以上、配当性向35.0%以上)は、過去の中期経営計画に比べ水準的にも内容的にも一歩踏み込んだものとなっている。


他方、定性面で注目したいのは新たな中期経営計画を策定する第一段階として、事業戦略や財務戦略の基本となる市場における自社の立ち位置が「理念や文化、スキルやリソース、実績と方向性」等を踏まえてしっかりと明確化されていることである。
将来予測が困難なVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)時代を生き抜くために、「先ずは己を知り、次に負けない戦略を練る」という経営姿勢が貫かれた上で今回の数値目標が設定されていることを素直に評価したい。


■Key Points
・1970年設立の独立系大手ITソリューションベンダー。
積極的な人財投資と補完的M&A戦略が奏功し、売上高2,000億円の壁を大きく突破、2021年12月末の連結従業員数は1万5千人規模を擁する
・コアコンピタンスは豊富な実績と企業理念に裏打ちされた「技術力と提案力」。
リーマン・ショック後の業績低迷期を経て、財務体質の強化と成長ポテンシャルの増強を実現している
・2021年12月期業績は6期連続で増収かつすべての利益段階で増益を実現した。
2022年12月期会社計画は3.0%増収、2.7%営業増益を見込む
・2022年12月期の配当予想は、年間109円/株と2021年12月期の同52円/株から大幅に引上げられ、8期連続増配となる見通し
・新たな中期経営計画が策定され、一歩踏み込んだ数値目標が掲げられた。
自社の立ち位置を明確化した上で戦略及び目標を設定する経営姿勢は評価に値する

(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)


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