インテリジェントウェイブ<4847>(東証プライム)はシステムソリューションを展開している。クレジットカード決済のフロント業務関連システム分野に強みを持ち、さらに新製品・サービスの強化やクラウドサービスを中心としたストックビジネスへの転換を推進している。22年6月期はクラウドサービスの新規大型案件や損益改善も寄与して2桁増益予想としている。さらに23年6月期はクラウドサービス事業が本格化する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は急動意の展開となって年初来高値圏だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。
■金融システムや情報セキュリティ分野のソリューションが主力
大日本印刷<7912>(DNP)の連結子会社でシステムソリューションを展開している。
高度な専門性が要求されるクレジットカード決済のフロント業務関連システム分野に強みを持ち、クレジットカード会社、ネット銀行、証券会社など金融関連のシステム開発受託・ハードウェア販売・保守サービスを収益柱としている。さらにクレジット決済システムの開発会社にとどまらず、決済・金融・セキュリティ分野を含む企業のビジネスリライアビリティを支えるITサービス会社を目指している。
21年6月期のカテゴリ別売上高構成比は、システム開発47%、保守12%、当社製品3%、クラウドサービス8%、ハードウェア15%、他社製品5%、セキュリティ対策製品10%だった。顧客別売上高上位はDNP、カード会社、システム開発会社である。金融業界のシステム投資や案件ごとの採算性が影響し、下期の構成比が高い特性もある。
■24年6月期営業利益率15%目指す
中期事業計画(22年5月期~24年6月期)では、目標値に24年6月期売上高150億円(うちストック売上高が41億80百万円、新規事業が15億円)、営業利益22億50百万円、営業利益率15.0%を掲げている。主要製品・サービスの年平均成長率はシステム開発・ハードウェア・当社製品などが6.5%、クラウドサービスが38.5%、セキュリティ対策製品が9.9%としている。
急速に変化する市場に対して、決済市場のハイブリッド(オンプレミス+クラウドサービス)IT基盤、決済・金融・セキュリティ分野以外の新分野(放送業界向けソリューションEoMなど)への領域拡大、DNPグループシナジー戦略を推進する。特にクラウドサービスを中心としたサブスクリプション(ストックビジネス)への転換を推進し、クラウドサービスの24年6月期売上高25億円を目指す。
21年3月には、社会の持続可能な発展に貢献しつつ、事業活動の持続可能性を高めていくことを前提として、具体的な施策を通じて全社的な取り組みを進めるためにサステナビリティ委員会を設置した。また21年5月にはサステナビリティ委員会が「健康経営宣言」を策定した。
21年12月にはコーポレート・ガバナンスの充実に向けて、支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引や行為について審議・検討を行う機関として、特別委員会(独立社外取締役と独立社外監査役で構成)を発足した。
22年1月には環境保全に係る取り組みの一環として、不要機器の廃棄処理を通じて子どもたちの教育支援を行うピープルポートの「こども支援プロジェクト」に参加した。22年3月には経済産業省の健康経営優良法人認定制度により、健康経営優良法人2022(大規模法人部門)に認定された。
さらに22年5月には、一般社団法人日本経済団体連合会会長、日本商工会議所会頭、日本労働組合総連合会会長、および関係大臣(内閣府、経済産業省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省)をメンバーとする「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」の趣旨に賛同し、「パートナーシップ構築宣言」を公表した。
■クラウドサービスを強化
クラウドサービスでは、加盟店契約(アクワイアリング)業務をサポートするIOASIS、自社製品ACEPlusのクラウド版となるクレジット決済不正検知システムのIFINDS、自社製品NET+1のクラウド版となる国内外各種決済ネットワーク24時間365日接続システムのIGATESが順調に拡大している。またポイントシステムのIPRETSを20年10月から本格稼働した。
22年6月期第2四半期末時点の導入社数はIOASISが6社、IFINDSが3社、IGATESが4社、IPRETSが1社となった。なお22年6月期末の導入社数の計画はIOASISが前期末比4社増加の9社、IFINDSが3社、IGATESが1社増加の5社、IPRETSが1社としている。
AI関連の新規開発案件では、SMBC日興証券「AI株価見守りサービス」に、CEP(Complex Event Processing)エンジンであるFES(Fast Event Streamer)が採用されている。また新規事業としては、放送分野でIPフロー監視ソリューション「EoM」の拡販、放送マスターシステム全体のネットワーク監視や制御を行う「SmartOrchestrator(仮称)」の開発も推進している。
■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書
22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。
中期事業計画の達成、株主還元の強化、コーポレート・ガバナンスの充実、ESG課題への対応などを通じた継続的な取り組みによって、企業価値の向上(時価総額の増大)に努め、24年6月末を目途にプライム市場上場維持基準適合を目指すとしている。
■22年6月期2桁増益予想、23年6月期も収益拡大基調
22年6月期業績(非連結、収益認識会計基準適用だが損益への影響軽微)予想は売上高が21年6月期比7.3%増の120億円、営業利益が16.8%増の13億20百万円、経常利益が16.1%増の13億60百万円、当期純利益が11.8%増の9億40百万円としている。配当予想は21年6月期比1円増配の14円(期末一括)としている。
カテゴリ別売上高計画はシステム開発が11.0%増の58億50百万円、保守が6.1%増の14億40百万円、当社製品が19.4%増の4億円、クラウドサービスが20.0%増の11億30百万円、ハードウェアが5.6%増の17億30百万円、他社製品が50.9%減の2億50百万円、セキュリティ対策製品が6.1%増の12億円としている。クラウドサービスはIOASISの新規大型案件が下期から売上寄与する見込みだ。
第3四半期累計は、売上高が前年同期比2.9%減の78億34百万円、営業利益が39.1%増の9億43百万円、経常利益が38.5%増の9億64百万円、四半期純利益が40.0%増の6億58百万円だった。収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が3億10百万円増加、売上原価が1億31百万円増加、売上総利益、営業利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ1億78百万円増加している。
ハードウェアの大型案件が減少したため全体としても減収だったが、主力のシステム開発や保守が堅調に推移し、クラウドサービス事業の収益性向上や全体としての品質向上への取り組み効果なども寄与して大幅増益と順調だった。
カテゴリ別の売上高は、主力のシステム開発が4.0%増の38億59百万円、保守が12.0%増の11億11百万円、当社製品が19.5%増の3億19百万円、クラウドサービスが13.0%増の7億93百万円、ハードウェアが38.1%減の8億29百万円、他社製品が45.0%減の2億37百万円、セキュリティ対策製品が9.8%増の6億83百万円だった。ストック/フロー別売上比率はフロー売上が52.0%、ストック売上が48.0%だった。
クラウドサービス事業は、受注高が31億50百万円(第1四半期が10億円、第2四半期が18億76百万円、第3四半期が2億73百万円)で、受注残高は42億10百万円となった。これらの受注が売上に寄与するのは23年6月期以降(23年6月期の売上高20億円、24年6月期の売上高25億円の計画)としている。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が22億51百万円で営業利益が1億26百万円、第2四半期は売上高が26億36百万円で営業利益が3億52百万円、第3四半期は売上高が29億47百万円で営業利益が4億65百万円だった。
通期予想は据え置いている。前提として下期からの事業環境好転を見込み、クラウドサービスの新規大型案件なども寄与して増収・2桁増益予想としている。第3四半期累計の進捗率は売上高65.3%、営業利益71.4%、経常利益70.9%、当期純利益70.0%である。やや低水準の形だが期初時点で下期偏重の計画であり、第4四半期にハードウェアの大型案件の売上計上を予定している。さらに23年6月期はクラウドサービス事業が本格化する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
株価は急動意の展開となって年初来高値圏だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。6月28日の終値は787円、今期予想PER(会社予想のEPS35円76銭で算出)は約22倍、今期予想配当利回り(会社予想の14円で算出)は約1.8%、前期実績PBR(前期実績のBPS287円85銭で算出)は約2.7倍、そして時価総額は約207億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)