40%引きでご購読
新規!💥 ProPicksを手に入れ、S&P 500を1,183%を超える投資成績を実現した、戦略をご覧ください40%割引で開始

焦点:「エッジケース」で思考停止も、完全自動運転は結局無理か

発行済 2022-09-18 08:20
更新済 2022-09-18 08:27
© Reuters.  9月12日、人間が一切操作しない「真の」自動運転車(AV)の開発を約束し、スタートアップ企業はこれまで投資家から何百億ドルもの資金を調達してきた。写真は無人車をオフィス

[ミルトンキーンズ(英イングランド) 12日 ロイター] - 人間が一切操作しない「真の」自動運転車(AV)の開発を約束し、スタートアップ企業はこれまで投資家から何百億ドルもの資金を調達してきた。しかし、業界関係者らは現在、AVがトラブルに直面するケースに備え、人間の管制官が遠隔地から見守ることが永久に必要になるのではないか、との見方を強めている。

コンピューターと人工知能(AI)を使えば、人のミスによる事故を劇的に減らせるというのが、AV開発の前提となっている。

ところが、落とし穴があった。人より安全に運転できるAVを製造するのは極めて困難なのだ。その理由は単純で、自動運転ソフトウエアには、人間のように迅速にリスクを評価する能力が欠如しているということだ。とりわけ「エッジケース」と呼ばれる想定外の出来事に遭遇した際に思考停止してしまう。

ゼネラル・モーターズ(GM)傘下の自動運転車開発・クルーズのカイル・フォークト最高経営責任者(CEO)は「必要とあればいつでも人が助けてくれると分かっていると、顧客は心の平安を得られる」とし、人間の遠隔管制官を廃止する「理由が分からない」と言い切った。

人間の遠隔管制官が長期的に必要になることをクルーズが認めたのは、初めてだ。

遠隔管制官は航空交通管制官のように数千マイルも離れた場所に待機し、複数のAVから送られてくる動画をモニターする。AVがトラブルに見舞われると、時にはハンドルを握って介入し、再始動できるよう手助けする。AVは判断に迷うと決まって停止してしまう。

完全なAVの導入は、ほんの数年前に示された楽観的なスケジュールに比べて、大幅に遅れている。

GMは2018年、ハンドルもブレーキもアクセルペダルも無いAV「クルーズ・オリジン」を19年に配車サービスで実用化したいとして、米政府に承認を求めた。だが、フォークトCEOは現在、生産開始が23年春になると予想している。

米テスラのイーロン・マスクCEOは2019年に「来年には確実に」ロボタクシーを数百万台導入すると約束したが、「完全な自動運転」車とは名ばかりで人間が乗車しないと運転できず、緊急時には手動操作が必要になるとして批判を浴びた。

マスク氏は今年6月のインタビューで、自動運転車の開発は「これまでのところ、当初考えたよりずっと難しい」と発言。ただ、今後のスケジュールについて問われると「今年」製造できるかもしれないと述べた。

テスラにコメントを要請したが、回答はなかった。

各社の約束が破られたことで、AV産業そのものの将来が問われている。

AV企業にリスク管理などについて助言するエッジ・ケース・リサーチのマイク・ワグナーCEOは「これらの企業が2年以内に(完全なAVの開発に)成功しなければ、もはや存在できなくなるだろう」と手厳しい。「行動で示せ、さもなければ黙っていろ、ということだ」と言い切った。

<数十年後も無理か>

多くのAVスタートアップは現在、人間の遠隔管制官を置くと同時に、運転席に「セーフティードライバー」を乗せている。

遠隔管制官には追加経費がかかるが、エッジケースへの対処に役立つ。例えば、道路工事に伴う車線閉鎖や、通行人や人間の運転手による想定外の行動といったケースだ。

クルーズのフォークトCEOによると、サンフランシスコの公道を走っている同社のAVが現在、人力に頼るのは1%未満のケースに過ぎない。しかし、AVの数が数千台、数百万台と増えていけば、立ち往生して路上で人間の指示を待つAVも相当数に上るだろう。

英国の都市・ミルトンキーンズでAVの配車事業を行うインペリアム・ドライブのクーシャ・カビーCEOは、AVは人間よりも予想可能な動きをするため、その台数が増えればエッジケースも減るだろうが「ゼロにはならない」と予想。「数十年たっても100%の真性AVにはたどり着かないだろう」と語った。

投資家の間でも、AV事業はいつ黒字化するのだろうかとの疑念が広がってきた。投資家ウェブサイトのピッチブックによると、次世代モビリティ関連スタートアップ全般への投資が減速している中で、特にAV専門企業への投資は大きく減少。第2・四半期は9億5800万ドルと、ベンチャー投資全体の10%に満たなかった。

ほんの2年前にはAV投資ブームが起こり、米アルファベット傘下のウェイモが30億ドルを、中国配車アプリ最大手の滴滴出行(ディディ)のAV部門が5億ドルを調達するなどしていた。

トラックや近所の配送サービス、低速車線に絞ったシンプルなAVの方が早く黒字化しそうだが、それさえ何年間も要しそうだ。

<ボールが転がると>

自動運転システムが人間に劣るのは「感知・予想アルゴリズムが、人間の頭脳による処理・判断ほど優秀ではない」からだと、独立系コンサルタントのクリス・ボロニバード氏は言う。同氏は以前、GMとウェイモで最先端車両計画を主導していた。

例えば、人間なら車道にボールが転がってきた場合、それ自体は無害でも続いて子どもが飛び出してくる可能性を想定し、AVよりもずっと素早くブレーキを踏むという。

「人が操作する車両よりも安全であることを証明しないまま、AV企業が市場に殺到するのではないかと心配だ」とボロニバード氏は話した。

(Nick Carey記者、 Paul Lienert記者)

最新のコメント

当社アプリをインストール
リスク開示書: 金融商品や仮想通貨の取引は投資金額を失う高いリスクがあります。仮想通貨の価格は非常にボラティリティーが高く、金融、規制、政治など、外的な要因に影響を受けることがあります。また信用取引はリスクが高いことを十分に理解してください。
金融商品または仮想通貨の取引をする前に、金融市場での取引に関わるリスクやコストについて十分に理解し、専門家の助言を求めたり、ご自身の投資目的や経験値、リスク選好等を注意深く検討することを推奨いたします。
Fusion Media によるこのウェブサイトのデータが、必ずしもリアルタイムおよび正確ではないということをご了承ください。またデータや価格が、必ずしも市場や取引所からではなく、マーケットメーカーにより提供されている場合があります。その為、価格は気配値であり、実際の市場価格とは異なる可能性があります。Fusion Media および当ウェブサイトへのデータの提供者は、当ウェブサイトに含まれる情報を利用したすべての損失に対して一切の責任を負わないものとします。
Fusion Media およびデータ提供者による事前の書面の許可なしに、当ウェブサイト上のデータを使用、保存、複製、表示、変更、送信、配信することを禁じます。すべての知的財産権は当ウェブサイト上のデータの提供者、または取引所が有します。
Fusion Media は当ウェブサイトに表示される広告により報酬を得ることがあります。
上記内容は英語版を翻訳したものであり、英語版と日本語版の間に不一致がある時は英語版が優先されます。
© 2007-2024 - Fusion Media Limited. 無断複写・転載を禁じます