[東京 26日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は26日、日本経済に関する審査(対日4条協議)の終了にあたって声明を公表し、日銀の緩和的な金融政策スタンスは「引き続き適切」としつつ、2%物価目標の持続的な達成に向け、生産性と実質賃金を改善する諸政策を実行する必要があるとの見解を示した。
昨年12月に日銀がイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の運用を見直したが、IMFの声明では、物価見通しに上振れ・下振れ双方向リスクがあることを踏まえると「長期金利の一層の柔軟化は将来の急激な政策変更を回避するのに役立つ」と指摘。「長期化する金融融緩和の副作用に対処することにも資する」とした。
声明は、日銀が長期金利のさらなる柔軟性と上昇を許容するために、長期金利の変動幅拡大や目標水準の引き上げ、金利目標の年限の短期化、金利目標から量的目標への移行といった選択肢を検討し得るとし、その際、各戦略のメリット・デメリットを慎重に見極める必要があるとした。
また、政府・日銀が2022年に実施した為替介入にも言及。一般的に、為替介入の効果は一時的なものにとどまるとの見方を示した上で、実施に踏み切るのは、無秩序な市場環境や、急変動による金融安定化リスクがある時など「特殊な状況下に限定されるべきだ」と意見した。
<日本経済の回復、短期的に続く>
日本経済については、ペントアップ需要やサプライチェーンの改善、水際対策の緩和、各種政策支援に支えられ、回復が短期的に続くとの見方を示した。
見通しについては外的要素の下振れリスクが大きいといい、1)さらなる地経学的分断と地政学的緊張の高まり、2)世界経済の急減速、3)致死率と感染率が高い新型コロナウイルスの変異株の流行、4)長引く供給側の制約、5)自然災害、6)債務の持続可能性、7)サイバー攻撃の脅威──などを上げた。
さらに「現在の金融政策枠組みの突然の変更に伴い生じ得るリスクもある」との見方も示した。経済政策の短期的な課題は、金融安定を維持しつつ、2%の物価目標を大幅にオーバーシュートさせない形で持続的に達成することだと指摘した。
中期的な優先課題には、財政の脆弱性を低減させ、より動的で強靭で包摂的な経済に移行することを上げた。財政余力を再構築し債務の持続可能性を確保するために「財政再建が必要」だと強調。財政枠組みの強化に向け、「補正予算は例外的に大きなマクロ経済ショックが発生した場合にのみに限り、頻繁に編成されてはならない」と釘を刺した。
(杉山健太郎)