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焦点:豪大学でチャットGPT規制、障害者の受講支援に課題も

発行済 2023-01-30 18:45
更新済 2023-01-30 18:55
© Reuters.  1月24日、豪メルボルン大学に通う学生のアダム・ホワイトヘッドさん(30)は、視覚障害があり、授業で使う資料を読む時や試験を受ける際、コンピューターや補助技術に長年頼っ

By Seb Starcevic

[メルボルン 24日 トムソン・ロイター財団] - オーストラリアのメルボルン大学に通う学生のアダム・ホワイトヘッドさん(30)は、視覚障害があり、授業で使う資料を読む時や試験を受ける際、コンピューターや補助技術に長年頼ってきた。

ホワイトヘッドさんはいま、豪州などの大学が不正利用の懸念から「チャットGPT」の規制に動いていることに不安を抱いている。チャットGPTとは、米サンフランシスコの企業オープンAIが作成した、幅広い質問に即座かつ自動で回答を作成する無料プログラムだ。

こうしたチャットボットの登場で、教育分野でのテクノロジーや人工知能(AI)の利用を巡る議論が加熱する中、障害のある学生や教育関係者からは、規制を急ぐあまりテクノロジーの利点を見逃さないよう求める声が上がっている。

哲学を専攻するホワイトヘッドさんは、スクリーンに表示されたテキストを読み上げるソフトウエアを利用している。

「誰もが教育にアクセスしやすい環境を整える用途と、AIに答えを考えさせる用途は、非常に慎重に区別することが必要だ」

レポートや試験で不正利用される可能性もあるチャットGPTの対策として、豪州の八大学連合(Go8)は今月初旬、加盟校で手書きの筆記試験による評価を増やすと発表。

Go8のマシュー・ブラウン副代表はトムソン・ロイター財団に対し、「AIの発展に先手を打って対応していくためには、評価制度の再設計が不可欠だ」と述べた。

また、加盟大学では、オンラインやコンピューターで試験を受ける学生に対し、試験監督による巡視やテクノロジーを用いた監視を付ける予定だとしている。

「AI排除」の動きが障害のある学生に与える影響に懸念が出ていることについてGo8にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

Go8の加盟校、メルボルン大学の広報によれば、「提出された課題は、学生の認知と同意に基づき、より進化した技術を用いて精査されている」という。

一部の教授や学生からは、大学がより注目すべきはAI技術の潜在的な活用法だ、との声も上がる。

「カンニングは言うまでもなく問題だ。ただ、AIの一部の側面が懸念されるからといって、全てを否定してしまうべきではない」と指摘するのは、シドニー大学のアンナ・ブーシェ准教授だ。ブーシェ氏は長時間話し続けることが困難なため、授業の際にはAIによる音声生成プログラムを使用している。

<障害者へのサポートも>

チャットGPTは昨年11月30日に公開され、誰でも無料で試すことができる。

これまでの報道によると、既に米国ではニューヨークとシアトルの複数の学校で使用が禁止されている。大学は授業外の課題を減らし、手書きのレポートや口述試験を増やす対応を取っているという。

ハーバード大学やイェール大学などでは現在、6000人以上の教員が「GPTゼロ」の利用登録を行っている。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)がGPTゼロの作成者エドワード・ティアン氏に取材したところによれば、同ソフトはAIが作成した文章を判別することができるという。

大学側が新たな技術にふさわしい教育・評価体系を再考すべきだ、とする視点でのアプローチも行われている。

エディンバラ・ネピア大学のサム・イリングワース准教授は、学術系ニュースサイト「ザ・カンバセーション」に掲載された記事の中で、学生たちに地域の展覧会でキュレーション(展示企画)をさせるといった、より実践的な課題を設けるべきだと提言している。

シドニー工科大学で教育テクノロジーを研究するレスリー・ローブル教授は、障害のある学生たちがAIを使用する利点は否定できない、と話す。

「障害者の学生がこうしたツールをうまく使うことで、より効果的に勉強に取り組めるという確固たる証拠がある」

豪州の州法や連邦法では、障害のある学生は教室内で「適切な調整」を受ける権利があるとされている。

だが、豪州政府のデータによると、学士以上を取得している障害者は17%と、健常者の35%に比べて少ない。

こうした格差の原因の一端には、障害のある学生へのアクセシビリティやサポートの欠如があるのではないかと指摘する声もある。

<「エドテック」の可能性>

AI技術が至るところで使われるようになる中、「エドテック(教育とテクノロジーを掛け合わせた造語)」の分野も数十億ドル規模の産業に発展している。

ローブル教授は、教育テクノロジーが「きちんと設計され、適正に使われ、厳しく管理されること」が肝心だと言う。

「技術が悪いと早合点すべきではない。教育者や学生のためのしっかりとしたポリシーや保護制度を迅速に整備することが必要だ」

チャットボット以外にも、AIに対して反発する動きは広がっている。声優や俳優といったパフォーミング・アーティストたちは、自身の姿や声の著作権保護を要求。別の芸術家団体は今月、作品が無断で使われたとして、画像生成AIソフトウェア「ステーブル・ディフュージョン」に対する集団訴訟を起こした。

メルボルン大学でバイオテクノロジーを専攻するベティ・ジャンさんは、障害のある学生や職員にとって、AI技術は画期的なものになり得ると話す。ジャンさんは大学の障害者支援団体に所属している。

「AIは、ばく大な可能性を秘めている。教育にアクセスしやすい環境を整備するうえでは、特に力を発揮するだろう。大学がこの技術を取り入れていくことは、とても理にかなっていると思う」

ジャンさんは、紙とペンを使った教育に戻ることについて「時代から少し逆行しているように思う」と続ける。

「効果的なAIの使用で恩恵を得られるのは、障害のある学生だけではない。教育に手が届きやすくなれば、誰もが容易に学習に取り組めるようになる」

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