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アングル:インド「デジタル主権」確立へ、14億人監視社会の恐れ

発行済 2023-02-12 09:04
更新済 2023-02-12 09:10
© Reuters.  専門家や人権団体などは、そうしたデジタル主権の追求が14億人のインド国民に及ぼす影響は計り知れないほど大きいと警告する。写真は携帯電話で話す男性。マハラシュトラ州サング

[6日 トムソン・ロイター財団] - ナイジェリア政府が2021年、大統領の投稿を削除した米ツイッターを国内で利用禁止とした直後、インドの交流サイト(SNS)「Koo」にナイジェリア政府の認証済みアカウントが登場した。

これはまだ海外ではほぼ無名だったKooにとって、ツイッターがコンテンツのモデレーション(適正管理)を巡って各国当局との角逐を強める間隙を突き、存在感を示したという意味で画期的な出来事だった。Kooはインドの言語でのやり取りを重視し、政府寄りという特徴を持つ。

インド政府の側から見ても、Kooは自分たちの正当性を主張する場として利用価値が大きく、実際に多くの高官が投稿している。

同国では、国内スマートフォンの基本ソフト(OS)市場を牛耳っているグーグルの「アンドロイド」の対抗馬として自国製のモバイルOS「BharOS」への期待も高い。プラダン技能開発・起業促進相は、今後BharOSが広く普及する可能性に触れて「長い道のりだが、それが実現すれば誰かによる独占は消えてなくなる」と述べた。

モディ首相がずっと推進し続けているのは、特にハイテクを中心に工業からワクチン開発まで全てを自国で賄える体制だ。同時にモディ氏は、データ移管制限などの法令で国際的な巨大IT企業の力を抑え、中国製アプリ利用を禁止し、オンラインコンテンツの取り締まりを活発化させてインドの「デジタル主権」を確立することを目指している。

だが専門家や人権団体などは、そうしたデジタル主権の追求が14億人のインド国民に及ぼす影響は計り知れないほど大きいと警告する。国家による監視が強化され、オンライン空間の自由が狭まる恐れが出てくるからだ。

デジタル上の権利を提唱する団体インターネット・フリーダム・ファウンデーションの政策ディレクター、プラティーク・ワグレ氏は「デジタル主権にはその目的からして統制をもたらし、ナショナリズムとつながる。データは価値があるので経済的な要素もある」と指摘する。

その上で、インド政府が自国企業に対して行使できる影響力はより大きくなると主張。自国企業は命令に従わないという道は選べないかもしれず、そうなると監視要求に抵抗できないとの懸念が浮上するためと説明した。最近でも政府に逆らった地元メディアが訴訟に直面しているケースが幾つかあるという。

<デジタル植民地化の恐怖>

インドはスマートフォン市場が世界第2位、ソーシャルメディアプラットフォーム利用者数は世界で最も多い。

ただ政府は巨大IT企業に厳しい目を向けつつある。先月にはツイッターに対して、2002年にグジャラート州で起きた暴動に関するモディ氏の指導力に疑問を投げかけたBBCのドキュメンタリーの動画にリンクしている50件のツイートを削除するよう命令。グーグル傘下のユーチューブにもこの動画のアップロードを阻止するよう指示した。

地政学アナリストのアビシュル・プラカシュ氏は、巨大IT企業に対するインド政府の当たりがどんどん強くなってきたのは、これらの企業がインドの社会と経済の支配権を外国勢力に譲り渡すと信じられているためだと解説する。

シンクタンク、ザ・センター・フォー・イノベーティング・ザ・フューチャーの共同創設者でもあるプラカシュ氏は「国家が自前のハイテク技術を持とうとする理由の1つは、デジタル植民地化への懸念にある。西側が中国のTikTok(ティックトック)や華為技術(ファーウェイ)をそういう目で見ているように、特定国家からの技術への不信感も増してきている」とトムソン・ロイター財団に語った。

モディ氏は、国産のアプリを使う方が安全性は高まると主張している。

しかし専門家の話では、自国の技術を利用してデータを国内に保管するとしても、特にOSが政府によってアクセス可能な状態にあるとすれば、適切な保全の仕組みや強力なデータ保護法によって承認対象以外によるアクセスや利用を防ぐことができないなら、決してより安全とは言えない。

BharOSの開発元は、「厳しいプライバシーとセキュリティーの要求基準」を満たすことを条件に提供していると強調している。

ワグレ氏は、昨年ウクライナに侵攻したロシアから、その後多くの国際的な巨大IT企業が事業を引き揚げたことがインドを含む多くの国にとって警鐘になったと話す。

「これは明日にもわれわれの身にも起こり得るのではないか、そしてわれわれはどのように自らを守れば良いのか、という疑問が生まれた。国際的な巨大IT企業を向こうに回して独自のエコシステムを創出しつつある中国にはむしろ羨望のまなざしが注がれ、多くの国は似たような仕組みをつくろうとしている。ロシアのウクライナ侵攻はそうした動きに拍車をかけた」という。

(Rina Chandran記者)

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