*14:34JST CaSy Research Memo(4):CtoBtoCモデルで安価で身近な家事代行サービスを提供(2)
■CaSy (TYO:9215)の事業概要
3. 競合優位性と強み
家事代行サービス会社は、事業形態ではスタッフ雇用型とマッチング・プラットフォーム型に大別できる。
スタッフ雇用型では、イオン (TYO:8267)の「KAJITAKU」、パソナグループ (TYO:2168)の「クラシニティ」、ダスキン (TYO:4665)の「メリーメイド」など大手企業からの参入も多く、老舗ではベアーズなどがある。
マッチング・プラットフォーム型では(株)タスカジの「タスカジ」や(株)エニタイムズの「ANYTIMES」がある。
同社は、スタッフ雇用型とマッチング・プラットフォーム型の両輪の技術やノウハウを高めていくハイブリッド型であり、スタッフ(キャスト)体制の品質向上や独自開発マッチング・プラットフォームによるIT化により他社との差別化を図る。
(1) 最適なUI※/UXを追求する独自開発のマッチング・プラットフォーム
依頼を受けた顧客宅にキャスト(その他暮らしのサービスの場合は、委託先の専門業者)が訪問し家事代行サービスを行う。
サービスの依頼から支払いまですべてのやり取りは、営業担当との電話や訪問等のコミュニケーションではなく、スマートフォンアプリ「CaSy」もしくは同社の専用サイトで行う。
※UI(User Interface)とはユーザーとサービスの接点であり、両者の間で情報をやり取りするための仕組みのこと。
a) 独自のマッチングアルゴリズム
一般的な家事代行は、コールセンターなどで電話スタッフが受付を行い、その後、コーディネーターと言われる営業が顧客との打ち合わせを行い、見積書を提出し、家事代行スタッフと顧客との調整を行う。
そのうえで、家事代行のトライアル業務を行い、本格的な業務を行う。
それに対し、同社の家事代行は、アプリ「CaSy」や同社サービスサイトからの受付により、同社独自のマッチングシステムで同社の家事代行スタッフである「キャスト」を選び出し、サービスを実施するため、スピーディーに対応できる。
スポット利用の約7割が3時間以内にマッチングする高いUXを実現しつつ、低コスト構造を保っており、顧客の基本的な利用の流れはスポット利用から定期利用で、スポット利用での利用経験が良いことで定期利用の利用につなげている。
b) 蓄積された実績データの活用
サービスの利用が増加するなかで蓄積された実績データを活用し、需要と供給のバランスを予測し、さらに需給バランスに合わせて最適価格を決定する「ダイナミックプライシング」を導入するなど、必要なときに納得の価格でサービスを使用できるマッチング率100%の実現を目指す。
従来は担当者に属人化していたデータをデジタル化・一元化することで、品質改善や利便性の向上に活用し、蓄積したサービスデータを競争優位に直結させる。
c) 他社のサービスとAPI連携
同社は、デジタルキープラットフォームのビットキーとAPI※連携し、使用可能な時間を指定したデジタルの自宅カギ(デジタルキー)をオンラインでキャストへ発行することを可能にした。
アプリで顧客宅を解錠することができるため、鍵の受け渡しの手間を省略することで「不在宅中の家事代行サービス」の利用拡大を図る。
※API(Application Programming Interface)とは、ソフトウェアからOSの機能を利用するための仕様または2つの異なる機器やシステム、ソフトウェア間で情報のやり取りがなされる際、その間をつなぐ規格や機能の総称のこと。
他にも同社は、顧客及びキャストの互いの安心安全を守るため、TRUSTDOCKとAPI連携し、オンラインでも事前に本人確認を行うことが可能な「eKYC」を導入している。
TRUSTDOCKは、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下、犯収法)に基づいた「eKYC」が可能なデジタル身分証アプリと、あらゆる業法に対応するKYCのAPI基盤サービスを提供している。
「eKYC」とは「electronic Know Your Customer」の略で、直訳すると「電子的にあなたの顧客を知る」になるが、言わば「アプリやAPIを利用した本人確認サービス」のことである。
犯収法は、マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与を防止するため、金融機関、ファイナンスリース事業者、クレジットカード事業者などの特定事業者が取引する際の本人確認等について定められたもので、2018年の改正により、このeKYCによるオンライン上の本人確認方法も認められている。
同社は、TRUSTDOCKからの本人確認サービスとして、「個人身元確認API」「補助書類確認API」「反社チェックAPI」の提供を受けており、キャストへの性的被害を未然に防止する施策としても利用している。
(2) 辞めない環境づくりと品質管理体制の強化を推進するスタッフ雇用体制
家事代行サービスの業界全体の課題は、「働き手の確保」と顧客からの継続した依頼を受けるための「信頼」である。
その課題解決に、同社では、人事戦略を重視して、取締役CHRO(Chief Human Resource Officer:最高人事責任者)を配置したうえで、「キャストエンゲージメント(キャストとの絆づくり)」に注力し、キャストが辞めない環境づくりと品質管理体制の強化を推進している。
「エンゲージメント」とは、「愛着心や深い関わり合い」の意味で、同社は「キャストが同社だから働き続けたい」と思ってもらえる状態を実現するための体系づくりが必要であると考えている。
高いエンゲージメントを維持するために、1)高報酬の実現、2)キャストの身の安全を守る、3)所属欲求を満たす、4)感謝祭(キャストセッション)を開催する、5)キャストの業務日報へ社長以下本部のメンバー全員で返信する、6)自己実現を満たす要項として「TEAM BLACKS(チームブラックス)」というトップキャストを選抜するなどの独自の施策を行っている。
また同社がサービスを行ううえでの考え方や行動の基準とした「キャストクレド※」により、サービス時の判断や目指すべきあり方を示している。
※企業全体の従業員が心掛ける信条や行動指針のこと。
(3) 定着性の高い顧客基盤
家事代行サービスは、顧客の定期利用により高頻度・長期間にわたって継続的に蓄積されるストック型のビジネスモデルとなり、信頼関係の構築により定着性の高い顧客基盤を構築することができる。
家事代行サービスは、サービス単価や報酬単価が固定であり、対応できるキャスト数が限られるため、サービス利用者数の増加も限定的となる。
定期サービスの売上が約8割を占める同社にとって、定期UU数(定期サービスを契約しているユニークユーザー数)を伸ばすことが利益成長に最も影響を与えるため、定期UU数を最も重要視する指標としている。
2022年11月期末時点の定期UU数は、前年同期比1,005人増の6,452人(同18.5%増)と増加傾向にあり、今後も順調に定期UU数が増加していけば、顧客基盤がさらに安定すると見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)
3. 競合優位性と強み
家事代行サービス会社は、事業形態ではスタッフ雇用型とマッチング・プラットフォーム型に大別できる。
スタッフ雇用型では、イオン (TYO:8267)の「KAJITAKU」、パソナグループ (TYO:2168)の「クラシニティ」、ダスキン (TYO:4665)の「メリーメイド」など大手企業からの参入も多く、老舗ではベアーズなどがある。
マッチング・プラットフォーム型では(株)タスカジの「タスカジ」や(株)エニタイムズの「ANYTIMES」がある。
同社は、スタッフ雇用型とマッチング・プラットフォーム型の両輪の技術やノウハウを高めていくハイブリッド型であり、スタッフ(キャスト)体制の品質向上や独自開発マッチング・プラットフォームによるIT化により他社との差別化を図る。
(1) 最適なUI※/UXを追求する独自開発のマッチング・プラットフォーム
依頼を受けた顧客宅にキャスト(その他暮らしのサービスの場合は、委託先の専門業者)が訪問し家事代行サービスを行う。
サービスの依頼から支払いまですべてのやり取りは、営業担当との電話や訪問等のコミュニケーションではなく、スマートフォンアプリ「CaSy」もしくは同社の専用サイトで行う。
※UI(User Interface)とはユーザーとサービスの接点であり、両者の間で情報をやり取りするための仕組みのこと。
a) 独自のマッチングアルゴリズム
一般的な家事代行は、コールセンターなどで電話スタッフが受付を行い、その後、コーディネーターと言われる営業が顧客との打ち合わせを行い、見積書を提出し、家事代行スタッフと顧客との調整を行う。
そのうえで、家事代行のトライアル業務を行い、本格的な業務を行う。
それに対し、同社の家事代行は、アプリ「CaSy」や同社サービスサイトからの受付により、同社独自のマッチングシステムで同社の家事代行スタッフである「キャスト」を選び出し、サービスを実施するため、スピーディーに対応できる。
スポット利用の約7割が3時間以内にマッチングする高いUXを実現しつつ、低コスト構造を保っており、顧客の基本的な利用の流れはスポット利用から定期利用で、スポット利用での利用経験が良いことで定期利用の利用につなげている。
b) 蓄積された実績データの活用
サービスの利用が増加するなかで蓄積された実績データを活用し、需要と供給のバランスを予測し、さらに需給バランスに合わせて最適価格を決定する「ダイナミックプライシング」を導入するなど、必要なときに納得の価格でサービスを使用できるマッチング率100%の実現を目指す。
従来は担当者に属人化していたデータをデジタル化・一元化することで、品質改善や利便性の向上に活用し、蓄積したサービスデータを競争優位に直結させる。
c) 他社のサービスとAPI連携
同社は、デジタルキープラットフォームのビットキーとAPI※連携し、使用可能な時間を指定したデジタルの自宅カギ(デジタルキー)をオンラインでキャストへ発行することを可能にした。
アプリで顧客宅を解錠することができるため、鍵の受け渡しの手間を省略することで「不在宅中の家事代行サービス」の利用拡大を図る。
※API(Application Programming Interface)とは、ソフトウェアからOSの機能を利用するための仕様または2つの異なる機器やシステム、ソフトウェア間で情報のやり取りがなされる際、その間をつなぐ規格や機能の総称のこと。
他にも同社は、顧客及びキャストの互いの安心安全を守るため、TRUSTDOCKとAPI連携し、オンラインでも事前に本人確認を行うことが可能な「eKYC」を導入している。
TRUSTDOCKは、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下、犯収法)に基づいた「eKYC」が可能なデジタル身分証アプリと、あらゆる業法に対応するKYCのAPI基盤サービスを提供している。
「eKYC」とは「electronic Know Your Customer」の略で、直訳すると「電子的にあなたの顧客を知る」になるが、言わば「アプリやAPIを利用した本人確認サービス」のことである。
犯収法は、マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与を防止するため、金融機関、ファイナンスリース事業者、クレジットカード事業者などの特定事業者が取引する際の本人確認等について定められたもので、2018年の改正により、このeKYCによるオンライン上の本人確認方法も認められている。
同社は、TRUSTDOCKからの本人確認サービスとして、「個人身元確認API」「補助書類確認API」「反社チェックAPI」の提供を受けており、キャストへの性的被害を未然に防止する施策としても利用している。
(2) 辞めない環境づくりと品質管理体制の強化を推進するスタッフ雇用体制
家事代行サービスの業界全体の課題は、「働き手の確保」と顧客からの継続した依頼を受けるための「信頼」である。
その課題解決に、同社では、人事戦略を重視して、取締役CHRO(Chief Human Resource Officer:最高人事責任者)を配置したうえで、「キャストエンゲージメント(キャストとの絆づくり)」に注力し、キャストが辞めない環境づくりと品質管理体制の強化を推進している。
「エンゲージメント」とは、「愛着心や深い関わり合い」の意味で、同社は「キャストが同社だから働き続けたい」と思ってもらえる状態を実現するための体系づくりが必要であると考えている。
高いエンゲージメントを維持するために、1)高報酬の実現、2)キャストの身の安全を守る、3)所属欲求を満たす、4)感謝祭(キャストセッション)を開催する、5)キャストの業務日報へ社長以下本部のメンバー全員で返信する、6)自己実現を満たす要項として「TEAM BLACKS(チームブラックス)」というトップキャストを選抜するなどの独自の施策を行っている。
また同社がサービスを行ううえでの考え方や行動の基準とした「キャストクレド※」により、サービス時の判断や目指すべきあり方を示している。
※企業全体の従業員が心掛ける信条や行動指針のこと。
(3) 定着性の高い顧客基盤
家事代行サービスは、顧客の定期利用により高頻度・長期間にわたって継続的に蓄積されるストック型のビジネスモデルとなり、信頼関係の構築により定着性の高い顧客基盤を構築することができる。
家事代行サービスは、サービス単価や報酬単価が固定であり、対応できるキャスト数が限られるため、サービス利用者数の増加も限定的となる。
定期サービスの売上が約8割を占める同社にとって、定期UU数(定期サービスを契約しているユニークユーザー数)を伸ばすことが利益成長に最も影響を与えるため、定期UU数を最も重要視する指標としている。
2022年11月期末時点の定期UU数は、前年同期比1,005人増の6,452人(同18.5%増)と増加傾向にあり、今後も順調に定期UU数が増加していけば、顧客基盤がさらに安定すると見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)