[東京 26日 ロイター] - 野村ホールディングスが26日に発表した2023年1─3月期の連結決算(米国会計基準)では、純利益が74億円(前年同期比76%減、前四半期比89%減)だった。インベストメントバンキング部門で案件が先送りになるなど、ホールセール部門が2期連続赤字と苦戦した。
主要3部門はいずれも前四半期から減収、減益となった。前四半期に計上した野村総合研究所株式の売却益がなくなり営業目的で保有する投資持分証券の売却益が減少したことも、利益減の要因となった。
北村巧・財務統括責任者(CFO)は会見で「厳しい決算だった」と振り返った。
最も苦戦したホールセール部門は、年初、フィクスト・インカムは好調だったものの3月のボラティリティー急上昇局面で減速。エクイティー、インベストメント・バンキングも前四半期比で減収となった。
一方で、コストは四半期ごとに増加。前四半期の22年10―12月期は1909億円、今1―3月期は1931億円に膨らんだ。円安とインフレによる固定費増が影響しているという。23年3月期通期でも経費率は96%(前期は89%)と非常に高くなっている。
コスト削減策について、北村CFOは「システム基盤は手を付けざるを得ない。ここ数年間、明確なビジョンがないままIT基盤を作っていたため、乱立している」と述べ、だぶりのあるシステムやほとんど使っていないシステムを減らしていく方針を示した。
24年3月期の業績予想は開示していない。IBESがまとめたアナリスト7人による連結純利益の予想平均値は1784億円となっている。 同時に発表した23年3月期の連結純利益は、前期比35%減の928億円だった。
今後について、北村CFOは、インフレや金利環境の見通しが明らかになってくれば、世界的に止まっていたディールも動き出すとの見通しを示したうえで「マクロ環境や市場の動きを注視しつつ、こうした収益機会をしっかりと捉えて行きたい」と述べた。
今年度は、日銀の金融政策変更可能性も取り沙汰されている。今年1月に国債取引が活性化したこともあり「我々に強みのある日本のフィクスト・インカムビジネスにオポチュニティがあるのかなと考えている」と、期待感を示した。
<配当性向引き上げ>
同社は、これまで30%としていた連結配当性向を40%以上に引き上げた。自己株式取得による株主還元分を含めた総還元性向50%以上は変更していない。
26日には、3500万株(発行済み株式の1.1%)・取得総額200億円を上限とする自社株買いを決議したと発表した。期間は5月16日から2024年3月29日まで。発行済株式の約2%にあたる7000万株の消却を行うことも決めた。予定日は6月1日。
スイス金融大手クレディ・スイスが発行した劣後債「AT1債」については、個人向けには販売しておらず、法人向けは「ゼロではない。大した金額ではない」という。北村CFOは「全損条項が付いており、相対的にリスクが高い商品。各国の規制、顧客の適合性を精査しており、この商品はリテールに販売しないことを決めた。商品企画部含めたガバナンスがしっかり機能していた」と述べた。