[東京 10日 ロイター] - トヨタ自動車は10日、2024年3月期の連結営業利益(国際会計基準)が前年比10.1%増の3兆円になる見通しと発表した。達成すれば日本企業として初めて3兆円台に乗せ、2年ぶりに最高益を更新する。半導体の需給改善に伴う販売増加や採算の良い車種の販売比率の高まりを見込むほか、原価低減も寄与する。
3兆円は、IBESがまとめたアナリスト23人の予想平均3兆0220億円とほぼ同水準。
売上高は同2.3%増の38兆円、純利益は同5.2%増の2兆5800億円を予想する。4月の就任後、初めて決算会見に臨んだ佐藤恒治社長は「魅力度の高い車をつくるという基本的な経営をしっかりしていくことで為替変動や資材高騰への耐性を強める」と強調。「どこか特定の地域に特化するのではなく、グローバルに収益を安定確保できるような事業基盤をつくる」と語った。
新設した専任組織による次世代の電気自動車(EV)開発を加速し、今秋開催する東京モビリティーショーでコンセプト車を展示する方針も明らかにした。
<半導体リスク抑制、30年までのEV向け投資5兆円に>
日野自動車とダイハツ工業を含むグループ全体の世界小売販売計画は7.8%増の1138万台で、過去最高だった19年3月期の約1060万台を5年ぶりに更新する。トヨタ単体(トヨタ車とレクサス車のみ)の世界生産計画は10.6%増の1010万台で、これまでの最高だった前年度の913万台から100万台近く上積みする。
佐藤社長は、販売と生産の制約要因だった半導体供給問題に「改善の兆しが見えている」と説明。会見に同席した宮崎洋一副社長によると、半導体不足によるリスクを顕在化し、代替品で対応できるよう設計変更するなど危機管理能力を高めたという。
業績予想の前提となる為替レートは1ドル=125円(前期は135円)、1ユーロ=135円(同141円)と円高方向に設定、前年度から営業利益を8750億円押し下げる。資材高騰も5100億円の圧迫要因だが、増産効果と採算改善が8650億円、値上げが5250億円、原価低減が3600億円それぞれ営業利益を押し上げる。
最大市場の中国でEVへの移行が加速し、品ぞろえが不足する日本メーカーは劣勢を強いられているが、宮崎副社長はハイブリッド車などにも需要はあるとし、「シェアは確実に伸ばしてきている」と語った。同時に電池の原価低減も進め、EVの収益力を確保するとした。同社が掲げる30年に世界で350万台のEVを販売するという目標の達成に必要な投資額は「今の環境下でアップデートすると約5兆円」と述べた。21年12月には4兆円と公表していた。
佐藤社長は、子会社のダイハツで起きた衝突試験の不正問題についても説明。「不正が起きてしまう環境を変えることが大切で、真因の調査を進める」などと述べた。その上で、独立した第三者機関による再試験で安全性に問題がないことを確認できたとして、トヨタブランドのマレーシア、メキシコ、エクアドル向け車両は出荷を再開したことを明らかにした。
(白木真紀 編集:久保信博)